吃音の謎解き
今日は他院で小児科外来の診療の仕事でした。
その診療した中のあるケースについて、
両親と2歳代の男の子、1歳未満の女の子で受診され、お兄ちゃんの風邪症状のついでの吃音(どもり)の相談のことをご紹介します。
保育園に在園2年目で、この5月くらいからどもるようになったとのこと。
原因や対処法についての相談をされましたが、吃音は一部ストレスが背景にあることも知られているものの、年齢的にそれを言語化できないため、正直、明らかな原因が特定できないことも多いです。
実際、ご両親に思い当たる節があるか確認するも、当初は手掛かりはありませんでした。
対処についても、発語に心的な緊張を与えない配慮=吃音を指摘しないで楽しくお話しできるように心がける…など一般的なことをお伝えしました。以前のリハビリ病院の言語聴覚士からも吃音を直す訓練は基本的には『ない』と言われてはいたので、そのようにお伝えしました。ご両親は、少しがっかりしたようでしたが、一度は納得されて会計を待つことに。
…すると、しばらくして、再度相談したいとの申し出があり、診察室にてお話を聞きました。
・現在トイレトレーニング中だが、ここ最近、オムツの中にもしないで我慢している。トイレでの定時排泄でも以前なら2−3回/日出るのに、1回しか出ないことが多い。
・最近、よく登園の時に、母から分離する時に泣くようになった。
・昨年度は、年配のベテランの先生たちだったが、今年度から、若い先生や新人の先生が担任になった(親目線では『いい先生』だと思う…と)。
…いかがでしょうか。
想像ですが、若い先生が年度はじめに一生懸命子供たちを相手にしている、でも、ベテランの先生ほどの余裕がないと、時に感情の揺らぎや、表情が険しくなったり、語気が強くなったり…なーんてことはきっとあるのだと思います。子どもは想像以上に敏感ですから、その様子を見て、本来、正しく発信すべきタイミングで発信できない状態になれば、吃音を含め、上記の3つのストーリーが全部リンクすると思いませんか?
医師は、表面上の本人の現象だけにフォーカスして物事を捉えることでは見えてこないことを、多角的な情報から紐解くことも求められています。診察場面ではわからないことは、ご家族に課題意識や気づきの感度がなければ情報も増えないわけで、難しいことも多いのが実情です。
今回は、ご家族が思い直して再度診察室に来ていただいたのでよかったと思いましたが、診察室にこられなくても、医師が投げかけた言葉をご自宅にもどってから改めて振り返って、考えるヒントを与えられれば第一段階としては意味があるのではと思っています。