アイスランド旅行記 前編
旅行計画や、具体的な手続きのTipsは別の投稿に任せるとして、こちらでは旅行中に書いた日記を、写真付きで紹介してみようと思います。
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はじめに
アイスランドと呼ばれてはいるが、全てが氷河というわけではない、むしろその多くは荒涼とした大地である。
岩と苔の大地、背の高い植物はほとんどない、羊、羊、羊、時々ウマ、果てしなく広大な大地をただただ進む。
アイスランドは、通称リングロードと呼ばれる1,300kmあまりの国道1号線を使って1周することができる。
同じ景色を2度とみることはない1wayの旅、そこにロマンを求めて、アクセルを踏み込む。
はじめは、楽しみ以上に不安が大きかった。
乗り継ぎがうまくいくか、レンタカーはちゃんと借りられるか、そもそも運転できるか、事故が起きたらどうしよう、キャンプ場にちゃんと泊まれるかな、ツアーは予約できてるかな、、、
でもそんなことは杞憂だった。
思っていたよりも世界は優しく、全てなんとかなった。
DAY1 Keflavík~Vik
ケプラヴィーク国際空港に降り立った時、Happy campersのピックアップがいなかったのには焦った。しばらくウロウロしてみても、やはりどこにもいない。オフィスに電話をかけると、1時間に1本のシャトルに乗ってこいとのことで、話と違うじゃん!とは思いながらも、それで向かった。
Happy campersのジャンパーを着た運転手が空港の到着ロビーにやってきたとき、心底ほっとしたのを覚えている。
ただ、レンタカーの受付は想定よりずっとスムーズに進んだ。笑顔のまぶしい女性スタッフが、クリアな英語で淡々と注意点を説明してくれ、サインをしたら、早速鍵を渡された。トラブル対処用の英文集まで作ってのぞんだのは、完全に余計な心配だった。
手続きも終わり、国道1号線に向けて走り出した。ケプラヴィ―クから、国道1号線に入るためには、一度レイキャビクの方向に進む必要がある。
レイキャビクが近づくにつれ、道路は首都高のような複雑さになってくる。
googleマップもよくわからないディレクションをするようになり、全然目的の方向に行けない。助手席からの指示にも熱が入る。先が思いやられた。
都市部から一生出られないかもしれない、という考えもよぎりながら慎重に進み、やっとのことで混み行ったエリアを抜けた。
途中でちょっとした町に立ち寄り、Bonus(スーパーマーケット)でキャンプの買い出しをした。豚さんのマークがとても愛らしいスーパーで、野菜以外の品揃えはとても良かった。
Bonusの隣にあったアイス屋さんで、アイスランドの国民食であるホットドッグを食べた。
柔らかいパンにスモーキーなソーセージ、フライドオニオンと甘めのソースがたっぷりかかっていて、何とも言えないバランスで最高においしい。
隣のコーヒー屋で買ったアメリカンも美味しくて、コーヒーライフも充実の予感。
おなかも満足したところで、さらに先を行く。
しばらくすると、大きな岩が見えてきた。よくよく見ると、その合間から白い筋のようなものが見えていて、「ああそうか、あれは滝か」と気づいた。今日の目的地の一つである、セリャラントスフォスの滝に着いた。
落差のある瀑布は、きめ細やかな水滴となって周囲を濡らしていた。風も強く、しぶきは様々な方向に飛び散っていた。
気温は10度前後だったものの、圧倒的な自然がもたらす非日常に、不思議と寒さは感じなかった。
滝の裏側を抜けて1周しようとしたのだが、風向きが悪く、道の真ん中に滝が落ちる異様な光景となっていた。ほとんどの観光客が、1周することをあきらめて道を引き返す中、夫婦二人でそこを駆け抜けてみた。案の定、ずぶぬれになったが、それはそれでとても楽しかった。
その後は、youtubeでみたアイスランド国内最古のプールに行ってみようということになった。ナビ通り進んでいくと、国道1号線を離れ、穴ぼこだらけの荒れ果てた道に変わった。ナビが示した地点に車を止め、そこから山道を登っていく。
本当にここにあるのか疑問を抱きながら、反対側からタオルを持った人たちがやってくるので、謎の確信を持って、道なき道を登っていく。20分ほど経ってたどり着いたのは、ぬるくて緑の藻がたくさん浮かぶプールだった。
足は全然つかなくて、おそらくかなり深い。深さを確かめてみようと思ったのだが、あまりにも藻が多くて、顔をつけるのが怖くてやめておいた(あとで脱いだ水着を洗っていたら、藻まみれになっていたので正解だった)
一通り楽しんだところで、国道1号線沿いにあるvikのキャンプ場に向かった。
キャンプ場は、国道1号線沿いということもあり、ものすごく混んでいた。妻も運転で疲れていたため、サクッと受付を済まし、車を停めて夕飯の準備を始めた。18時くらいだったが、日没は20時ごろなので、まだまだ明るい。
寒かったので、夕飯はクリームシチューにした。小麦粉がなかったので、Happy campersのフリースペースから拝借したクスクスを炒めて代用してみたが割とうまくいった。じっくり煮込めば、大体のものはうまくなる。
コインシャワーは300クローナ入れて5分だけ使えるタイプで、アイスランドの旅で唯一、キャッシュオンリーだった。急いで使ったら2分余ったので、次の人にあげた。熱々のお湯はやはり最高だなと思った。
アイスランドで初めての車中泊は、かなり寒くて3回くらい起きてしまった。でもそのおかげで、朝4時ごろ奇跡的にオーロラが出ていることに気づき、急いで外に出て写真に収めた。
DAY2 vik~Jokulsarlon~svinafell
時刻は6時半。
Vikの朝日を浴びに、近くの海岸に向かった。海外の方々は朝日を見る習慣がないのだろうか、海岸は貸し切りだった。朝日の暖かさが、冷えきった身体に沁みた。
車に戻って、朝日を正面から受けながら、昨日の残りのクリームシチューを食べた。最高の朝だ。
片付けを済ませたら、国道1号線を少し戻り、黒砂海岸に向かった。
途中、羊が道路にひょっこりと出てきて一瞬進路が塞がれる、ほっこりタイムがあった。さすが、羊の国アイスランド。羊ファーストな安全運転でいきたい。
黒砂海岸の海は結構荒々しくて、少し怖かった。
ここは奇岩があるところで、映えスポットらしい。大量の写真を収め、車に戻った。
このあとは、ヴァトナヨークトルの氷河を越え、ヨークルスアゥルロゥンという氷河湖を目的地にすることにした。
徐々に風が強まり、そのうち爆風となった、風速は20mくらいあったと思う。ハンドルを取られながらもなんとか進んでいく。
途中、フィヤオラルグフュール渓谷に立ち寄った。
相変わらずの爆風の中、しばらくハイクすると、大地の裂け目のような渓谷が顔を出す。見たことのない雄大な景色ではあったが、風と一緒に谷底に吸い込まれてしまいそうで、崖には近づけなかった。
渓谷を離れ、しばらく進むと、異様な光景が見えてきた。
薄いブルーの巨大な塊が、水面にいくつも浮かんでいる。かつて見たことのない光景に、頭が混乱する。どうやら、あれが氷河湖らしい。
車を降りて氷河湖の周りを歩くと、氷があるせいか、他の場所よりもひんやりとしていた。時折りアザラシも顔を出してくれて、ほっこりした。
非日常すぎる景色の中を散策していると、もっと氷に近づけることがわかった。写真も捗る。余談だが、このあたりから、iphoneのポートレート機能の良さに気づき始め、練習・活用するようになった。絶景の中で、お互いにたくさん写真を取り合った。妻も楽しそうで良かった。
その後は、進んだ道を50kmほど戻り、牧場みたいなキャンプ場で車中泊することにした。ものすごく開けたキャンプ場で、設備も使いやすく、何より昨日のvikよりも人が少ない。最高のキャンプ場だった。老夫婦が二人で経営していて、ほほえましかった。
シャワーは結構混んでいて順番待ちが面倒だったので、狭いシャワーに2人で入ってみたのも、いい思い出だった。
夜はラムステーキとチキンのトマト煮込みにした。
スーパーで買った普通のラムだったが、最高に美味くて驚いた。今まで食べてきたラムはいったい何だったのだろうと、少し悲しくもなった。
目の前には見たことのないほど荘厳な夕焼け、あたたかい食事にビール、最高の夕飯だった。
DAY3 svinafell~Seyðisfjörður
のどかなキャンプ場に、朝が来た。
今朝はなんだかどんよりした空模様だ。
昨日の残りのトマトスープを温め直し、クロックムッシュを作って食べた。
お皿を洗い、出発の準備をした。
今日は9時半から氷河ハイクツアーに参加する予定だ。
昨日までは、妻に運転を任せきりだったので、ひとまず、キャンプ場からツアーの待ち合わせ場所まで自分で運転してみた。命を預かる重みを改めて実感した。
待ち合わせ場所についた。
爆風だったので、ツアーが開催されるか不安だったが、案外普通に開催される空気で驚いた。到着後、おもむろにハーネスとヘルメットを装着され、アイスアックスとアイゼンを手に持たされた時に、これから向かう場所の過酷さを意識した。
20人くらいでバスに乗り込み、15分ほどバスに揺られたら、目的地に着いた。そこは、まさかあそこに登るはずないよね?と車内で冗談混じりに話していたところだった。
バスを降りて、みんなで土の道を歩いていく。
しばらくして、土に氷がまじり始める。目の前に氷河が見えてきた。ここでアイゼンを装着し、氷河に向けて進む。土から氷に、徐々に足元の感触も変わってくる。ついに全てが氷の大地となった。我々はいま、氷河を登り始めた!
アイスランドの氷河にアイゼンの爪痕を刻みながら、ザクザクと進んでいく。空気はキンと冷たい。氷河には、小さな穴が空いていたり、大きな溝があったり、せせらぎがあったり、近くでダイレクトに触れると、意外と様々な表情があることがわかる。
途中、ガイドさんが氷河の水を飲もう!と言い出し、バイキングスタイルの飲み方を教えてくれた。アイスアックスをせせらぎの端から端に渡し、腕立て伏せの要領で水を飲むというものである、これが非常に楽しく、心湧くアクティビティだった、こんな経験はそうできない。我々もこのスタイルで、おいしく氷河水をいただいた。五感で氷河を感じられる最高のツアーだった。
ツアーも終わり、集合場所に戻ってきた。
どうやらここから南側の天気が大荒れになるらしい。警報が出ている。旅程を変えることも考えたのだが、予報を見ると東側はこの後晴れるらしい。信じて予定通り進むことにした。爆風と雨の中、進んでいく。
昨日みた氷河湖は、雨で視界が悪く、氷の色もくすんでいた。しばらく走って、運転を交代した。今日は悪天候の中での300km越えの移動になる。改めて気を引き締めた。ここから最高の(地獄の)フィヨルドドライブが始まる。
ふりしきる雨風の中、フィヨルド特有の、うねうねとした海岸沿いを進んでいく。視界も悪く、風でハンドルも取られるため、かなりの緊張感がある。手汗をぬぐう暇もなかった。
いま、もしもハンドルをうまく切れなければ、崖の下に落ちてしまう!と、常に死を身近に感じながら、いつかは終わる海岸線を進んでいく。
厳しいフィヨルド区間を抜け、妻に運転を交代した。
実のところ、本当の恐怖はここからだった。
今日の宿泊地は、東側のフィヨルドの付け根にある、セイジスフィヨルズルという港町なのだが、ここに向かうには、国道1号線を離れ、山を越えなくてはならない。
麓から山を登ると、中腹から徐々に雪山になってくる。日没間近で空も暗くなり、この先に町なんてあるのだろうかと不安になる。
せめてもと、youtube musicでmellowなプレイリストを流しながら、何とか心の平穏を保った。
雪山を抜けると、気づけば時刻は20時、日没してしまった。
日没後のアイスランドの自然は、飲み込まれそうな恐さがある。ハイビームで照らされた反射板だけを道標に、ゆっくりと進んでいく。
しばらく堪えていると、サイドの景色がゆらゆらと揺らぎ始めた。よく見れば、大きな湖だった。日中にみれば、さぞ綺麗な湖なのだろう。でも、暗闇で見る湖は、巨大でどす黒い、揺れる塊でしかなく、恐怖と緊張感を増幅させた。
いくつかのシビアなカーブが続く。
ガードレールもないため、対向車を確認しながら、ゆっくりと道路の真ん中を進んでいく。2人で励まし合いながら進んだ。
しばらくすると、山の麓に暖色の塊が見えた。
あれは!町だ!!町があるぞ!よかった...!!!!!!
人生で初めて使った言葉だ。
町が存在すること自体に、こんなにもホッとしたことはかつてないだろう。
町に着いた。
今日はホテルを予約していたので、ALDANでチェックインをして、その流れで夕食もいただけることになった。宿の暖かさが骨身に沁みた。
ALDANでの食事は、感動的に美味しかった。
思えば、アイスランドにきて初めてレストランで食事をとった。採れたてのタラのソテーと、トナカイのタルタル(骨髄と一緒に)を、分け分けしながらふたりで食べた。美味しいご飯に、山越えのトラウマが一気に和らいだ。
アルダンの宿は、北欧調でとてもかわいかった。
ただ、ドアのカギが閉まらなかったので、部屋に置いてあった宝箱みたいな重い箱をドアの前に置いて、一応の防犯対策をした。
ここで初めて、「あたたかい洗濯物干し」という大発明に出会った。
これが最高で、濡れた衣類を掛けておけば、一晩で乾いてしまう優れもの。活用しない手はないと、疲れをおして洗濯しまくった。
久方ぶりのあたたかい部屋と、ふかふかのベッドに、それはもう、ぐうぐう眠った。
(つづく)
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