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大船駅前 夜散歩
大船駅前はなかなかに繁華である。
初めて宿を取って泊まった時の印象はそんなところであった。
少し歩けば、大体のチェーン店が目に入る。
駅から一本入った道には、所狭しと飲食店が並ぶ。
特に宿泊時の「夕食」には困らないだろうと思った。
ところが残酷なもので、滞在時はちょうど緊急事態宣言真っ只中。
いつもの出張のように、仕事の後に街に繰り出してアフターファイブを楽しむことなど、ほとんど許されるような状況ではなかった。
駅前から散歩スタート
時刻は深夜?早朝?の3時半
もちろんまだ電車は動いていない為に駅前に人は居ない。
所々で行われている道路工事や水道工事の夜間作業もそろそろ佳境を迎える時間帯だ。
さすがにこの時間帯では飲食店も静まりかえっている。
そもそも緊急事態宣言を受けて、ほとんどの飲食店は早々に営業を終えているが。
道路を明るく照らすのは、街灯か、コンビニか、それともチェーン牛丼店の明かりくらいだ。
時折走っていく車のライトがカメラを構える私を照らしていく。
夜の商店街を歩く
駅前の通りから一本入ると、昼間は人で溢れる商店街となる。
もちろんこの時間に人影はなく、通っているのはゴミ収集車くらいだ。
店の軒先に置かれたゴミ箱からゴミを回収した収集車が去るのを待って、散歩を再開する。
南方向へ歩いていくと、道を照らすのは商店街チックな街灯だけとなり、寂しさが増す。
隙間なく並んでいる店々は、比較的新しく改装されたようなものから、いつからやっているのか計りかねるほどの風格を纏った古い店までバリエーションは様々だ。
それほど長くないこの通りも、人通りがなく見通しが良いと不思議な奥行き感を感じさせてくれる。
規則正しく整列していない街灯が、またいい味を出している。
突き当たりはバス通りだ。
モノレールの通り道
バス通りに出て、右に曲がると再び駅前のロータリに出る。
大船駅から江ノ島方面へ走る「湘南モノレール」が走る通りだ。
空中を走るモノレールがある街の風景は、地上を走る鉄道のそれとは違う。
特に、吊り下げられるタイプの湘南モノレールは、独特の橋脚を伴う。
車道のどちらに腰を据えることなく、フラフラと上空を彷徨った後に街中へと消えてゆく。
大船駅を出てしばらく走ったモノレールは、横須賀線上を走る。
湘南モノレールが開通した当時、懸垂式のモノレールは珍しく、国鉄上に落下するのではとも言われたとか。
今では当たり前の風景にも、歴史がある。
歌声が響く街
湘南モノレールの軌道から離れ、再び街中を歩く。
ほとんどのお店は閉まっているが、道路上に張り出した看板は煌々と足元を照らす。
薄雲を照らす月と建物を撮っていると、後ろからカラオケで歌う声が聞こえてきた。看板の明かりを落とした店から漏れてくる音だ。
静まりかえった街の中で一際陽気に聞こえた。
そろそろ時刻は午前4時になろうと言うところ。
カメラを構える手も冷たく、辛くなってきたのでホテルへと足をむける。
駅前に車通りが戻り始める。
そろそろ始発も動き始める時間、駅舎へと向かう人の姿も見え始めた。
夜は容赦無く時を刻み、朝へと向かう。
出勤する人を横目に、ホテルへと戻り布団へと潜り込む。
まだ空に、明かりは見えなかった。