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グローバルから学ぶ不動産流通~サンフランシスコ研修編~

アドキャストでは、コロナ禍以前は毎年1回、優秀なスタッフとともに海外不動産視察を行っていました。

今回は4年ぶりに、不動産テックの聖地であるサンフランシスコに4泊6日で訪問したので、この海外視察勉強会で得た知見を簡単にまとめてみたいと思います。


サンフランシスコ現地での気づき

①気候の快適さ

サンフランシスコの夏は最高でした。
気温は15度程度で湿度もほとんどなく、とても快適です。日中25度程度になる日もありますが、湿度がなく風が爽やかなので過ごしやすいです。

乾季である5月から11月にかけて降水量はほぼゼロとのことで、地球温暖化が懸念される中、注目されるエリアです。
また、冬には氷点下になることはまずないそうです。現地視察をした際も、どの家にもエアコンがありませんでした。
それほど年間を通して快適な気候だということなのでしょう。

②物価の高さ

物価は印象としては日本の約3倍に感じました。噂には聞いていましたが、予想以上の物価の高さです。

特に、訪米時のドル円レートは160円近くで、お財布には厳しい街であると実感しました。サンフランシスコには日本の「くら寿司」があり、ランチに訪れたところ、3人で12,000円、お茶も有料でした。

日本では家族4人でたらふく食べても5,000円にはいかないため、相当な物価高です。現地の人々は「物価は年々上昇するもの」という認識を持っているようでした。

③高い給与水準

地元の警察官や学校の先生でも年収は1,500万円程度と聞きました。
日本と比較すると約2.5倍でしょうか。シリコンバレーのエンジニアなら3,000万円程度は普通のようです。

また、家賃も驚くほど高く、1Kのアパートが25万円程度とのことです。物価も高いが給与も高いという現状です。給与は安いが物価も安い日本の方が良いのかと思う場面もありました。

これは、日本の「東京」と「地方」の違いに似ていると感じました。

④治安の悪さ

高級ホテルがあるユニオンスクエア地区に宿泊しましたが、その隣接地「テンダーロイン」はゴーストタウンのような地区でした。

路上にはホームレスが寝ており、麻薬中毒者が多く、さらに夜中には奇声を上げる人やサイレンの音が絶えないエリアで異様な雰囲気でした。
このような資本主義経済の悲しい現実を目の当たりにし、ショックを受けましたが、これでも1年前に比べればかなり良くなったということで、まるでバイオハザードのようなスラム街でした。

余談ですが、テンダーロイン地区は警察官が誰も担当したくないため、エリア担当には特別手当が支払われており、その特別手当で「美味しいステーキが食べられる」というアメリカンジョークが地区の名前の由来だそうです。

⑤ロボタクシー

サンフランシスコで最も感動したのがロボタクシーです。
いわゆる運転手のいない無人タクシーです。
サンフランシスコ中心街には多くのロボタクシーが普通に走っていました。

自動運転タクシーはGoogleの子会社Waymo社が運営しています。アプリに登録して早速乗車しましたが、驚くほど快適です。
感動のあまり、同行したスタッフを誘って何度も乗車しました。

スタッフと「日本にはいつ上陸するのか?」という議論をしましたが、個人的な見解としては、残念ながら10年以上先になると考えています。

そもそもUberタクシーも上陸できていませんし、今年の4月に導入された「ライドシェア」もエリア制限や規則が多く、普及の見込みは低いです。このロボタクシーを通して、日本基準で考えていてはダメだと痛感しました。

サンフランシスコの不動産流通と現地視察での学び

<物件編>

①高金利でも不動産価格は下落しない

住宅ローン金利は30年固定で7%にもかかわらず、買い手は依然としています。在庫は少ない(最近増えつつありますが)ため、価格は下落基調ではないようです。

賃貸に出した場合の表面利回りは8%から10%と意外に高く、賃料の上昇が不動産価格の上昇をしっかりと支えているようです。

②オフィスおよび店舗の空室率

住宅系は好調ですが、オフィス系はかなり厳しい状態です。

コロナ禍でリモートワークが定着し、オフィス出勤率は半分以下に激減しました影響でオフィス需要は大幅に減少し、空室率は40%程度と驚異的な水準となったからです。東京6区のオフィス空室率が5%前後と比較すると、ファンドの運営が困難な状況です。

また、オフィス出勤が激減したことで飲食業も大打撃を受けています。実際に、良い立地の料理店が閉店しているのを多く目にしました。
ショッピングモールも半分のテナントしかなく、近々に閉鎖が決定しているとのことです。

日本とは異なり、アメリカではコロナ後の世界が大きく変化したようです。

③3億円出さないと住みたい家がない

視察2日目には5件の不動産視察をしましたが、どれも目が飛び出るほど高額な物件(日本人視点では)ばかりでした。
感覚的には、東京の3倍といった感じです。2億円程度の家だと、かなり古びた家しかありませんでした。

所得が高いのは良いことですが、ここまで不動産が高いと本当に何が良いのかわからなくなりました。個人的には、サンフランシスコでは3億円以上ないと住みたい家はないという印象です。

④築50年の中古(木造)は当たり前

物件視察の中で新築は1軒だけでした。
アメリカで新築は珍しく、中古取引が8割以上です。
築50年以上の物件でも問題なく売買されていました。

2億円のコンドミニアムは明らかに部屋が傾いていましたが、現地のエージェントは「こんなの当たり前ですよ!」と一蹴。「ダメだったら修理すれば良いでしょう」という発想です。

日本人には理解し難いかもしれませんが、アメリカでは立地が重視されているのでこの発想になるのでしょう。
日本もこのような発想で不動産が流通する時代が来るのでしょうか?

⑤維持費とランニングコストの上昇

視察中驚いたのはランニングコストの高さです。
内覧した3億円台の家では、固定資産税だけで月30万円以上とのこと。
これはどうやって払うのでしょうか?

アメリカでは購入した不動産の価格によって固定資産税が決まります。
購入価格×1%=固定資産税となっており、年率で2%上昇します。
マンションやコンドミニアムの管理費も高く、こちらも年率で2~3%ずつ上昇しているとのことです。

価格が高いだけでなく、ランニングコストも高いため、米国の不動産を所有する場合は購入後のランニングコストに注意が必要ですね。

<不動産仲介編>

①手数料は3%ずつに運用変更

カリフォルニア州では、今年8月7日より従来の売主側仲介が売主からの仲介料を買主側に渡す仕組みが訴訟の結果禁止されました。

基本的には、売主は売主仲介に3%、買主は買主仲介に3%を支払う形です。両手取引も可能です。
これは、いわゆる日本型仲介になったと言えます。
日本の仲介の仕組みが不適切と言われることもありますが、それは仕事の取り組み次第で変わると思います。
そもそも仕組みよりも、日本エージェントと米国エージェントでは倫理観が異なると感じています。
いずれにしても、日本式になったことは良いことなのではないでしょうか。

②会社型ではなくフルコミッションエージェント型

米国の不動産仲介の形態は日本とは全く異なり、不動産仲介=エージェントという考え方です。
会社で運営するのではなく、各エージェントがどこかの会社に属するという形式となっています。

給与形態はフルコミッション型で、売上の70~90%程度(会社によって異なる)が支払われます。集客や業務はすべて個人エージェントが単独で行い、エスクローやモーゲージプランナー、インスペクション会社、リフォーム会社などのアウトソースと連携して取引業務を行います。
そのため、個人エージェントはそれぞれ自分のホームページを持ち、そこに会社のリンクを挿入しています。
日本とは全く逆の形式ですよね。

米国の不動産会社は個人エージェントに場を提供するだけのシンプルな存在になっています。
日本でもこのようなエージェント型プラットフォームの会社もありますが、まだ大手不動産会社主導の市場です。

このあたりもアドキャストでどう取り入れるべきかを考える良い機会となりました。
フルコミッション型なので会社としては、売上がなければ経費もかからず合理的ですが、エージェントは全てが自己責任なので、生き残れるのは一握りの人だけでしょう。

私は、米国でトップ不動産エージェントを目指すにはに、不動産系ユーチューバーとしてインフルエンサーになるしかないのでは?と密かに考えてしまいました。

③テック型仲介はポータルサイト型?

サンフランシスコで特に学びたかったのは、新興の不動産テック大手の存在です。
私の中では、不動産仲介のテック企業といえばレッドフィン社コンパス社でした。現地のエージェントの話では、レッドフィン社は安売り仲介志向、コンパス社はトップエージェント志向とのことです。
この2社は世の中にある物件情報や取引情報を上手く集約し、消費者に分かりやすく取りまとめてポータル上に開示する情報集約テック会社で、現地ではこの2社の情報を、他の不動産エージェントがうまく活用していました。

この情報集約は、日本においてもそれほど難しいことではないと個人的に思いました。

④物件調査はしない

視察中に意外だと感じたのは、契約する際にあまり役所調査などに行かないことです。売買契約書を作成する際には、売主側から提示されるディスクローズパッケージという書類を信用して作成するようです。

この点は、日本とは全く異なっています。
日本では契約前に不動産仲介が現地調査・法務局調査・役所調査・インフラ調査などを毎回行います。
アメリカでは、売主側が販売委託を受けた場合にのみ、万全な調査を外部業者を活用しながら行い、用意している印象でした。

これは、訴訟社会であるアメリカのスタイルなのでしょう。

⑤オンライン契約は100%

日本の不動産流通と大きく異なるのがペーパーレスです。
オンライン契約率はほぼ100%とのことでした。

アドキャストでも積極的にオンライン重要事項説明や契約を実施するように指示していますが、実施率はおよそ5%程度です。
主に売主側や大手仲介が拒否してきます。

日本では紙での契約は印紙代もかかるので、オンライン契約をもっと普及すべきだと改めて思いました。

⑥キーBOX

視察で即導入すべきだと感じたのは内覧時のキーボックスです。
完成現場を内覧する際、エージェントが電子キーボックスにスマホをかざすと、そのデータが売主側エージェントに通知される仕組みです。
これにより、誰が内覧したか、どれくらいの滞在時間だったかが自動で通知されます。

サンフランシスコでは、このキーボックスを地域の不動産協会から購入するようです。非常に合理的で、日本でも即実施可能なシステムですので、早期に導入したいですね。

この仕組みは、私が今の会社を起業する前の20年前にハワイで不動産視察した時もありました。
このような状況も含め、日本の不動産流通市場は何周も遅れているように感じます。

まとめ

総じて感じたのは物価の違いです。
サンフランシスコに行くまでは、米国は給与水準が高いから何か生産性において日本と劇的に違うところがあるのではと思っていました。

しかし、生産性の高さは物件価格上昇にリンクし、さらに給与水準にリンクするというサイクルなのだと現地に行って初めて感じました。
米国はインフレを前提とした経済であるということです。

日本はこの30年間、デフレの時代を過ごし「なるべく安く」をビジネスの柱にしてきた結果、今の低成長社会に陥ってしまったのではないかと思います。
したがって、どれだけ安くからどれだけ付加価値があるか?への時代変革が必要です。

サンフランシスコの不動産研修では、不動産仲介=エージェント型という前提の違いを感じましたが、日本の企業型不動産仲介としての強みや魅力を感じる部分も多くありました。

この学びを活かし、日本における今後の不動産仲介業務をさらに進化させ、高付加価値ビジネスを目指していきたいと思います。

来年も仕事に励み、世界経済の中心地であるニューヨークに勉強に行きたいと思います。

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