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【世界最強の義足ジャンパー】マルクス・レームが闘うもの
マルクス・レーム -Markus Rehm- とは?
・「ブレード・ジャンパー」の異名を持つ1988年ドイツ生まれの、走り幅飛びアスリート。
・走り幅跳び8m72cmのパラアスリート世界記録を持ち、パラリンピック4連覇、世界パラ陸上選手権6連覇中。数々のオリンピック優勝記録を上回る記録も出している。
・14歳の時にウェイクボード競技中にボートのスクリューに巻き込まれ右脚の膝より下を切断。2008年に義足に出会い、競技を開始した。
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1. プロローグ:人生を変えた事故
2003年、ウェイクボードの事故によって右脚の膝より下を失った。
スポーツ好きなマルクス少年にとって残酷な現実で受け入れけがたいものであった。
「もうアスリートにはなれない」そんな言葉が飛び交う中、希望は捨てなかった。
2. 義足アスリートとしての出発
事故から5年後の2008年、スポーツ用義足と出会いその魅力に惹かれ、陸上競技にのめりこんでいく。
しかし義足に順応するのは容易な事ではなく、試行錯誤と苦悩の日々を過ごす。
地道な努力を重ね、少しずつ成果が出始め、周囲からは逆境にもめげずに義足で挑戦し続ける姿に称賛の声が聞こえるようになっていった。
そしてついに2014年、途方もない努力の結果、ドイツ選手権でついに健常者を抑えて優勝を収めた。
3.疑念
しかしその輝かしい成績とは裏腹に、世間からは「義足がむしろ跳躍力を生み出しているのではないか」との疑念が生まれ始め、「テクニカルドーピング」の疑惑をかけられた。
リオオリンピックへの出場を求めた際には、義足の反発力が競技に有利に働いていないことを証明するよう、求められもした。
4.テクニカルドーピングではなく、持つべくして持ったスキル
陸上コーチでもあるシュテフィ・ネリウスは、「レームは特別な才能の持ち主で力の入れどころを感覚でわかっている」と発言している。
事実、各大会において同じく義足を着用した2位選手たちと1メートル近くの差をつけている。つまり義足が決定的にパフォーマンスを高めているとは言えない。
レーム本人も「特別な能力を持っているわけじゃない。ただの努力の積み重ねだ。」と主張。
5.マルクス・レームが闘うもの
パラアスリートとしてではなく、「アスリート」として闘いたいという情熱を持ちながらも、それを阻む、世間の生み出す「障害」という定義と闘っている。
オリンピックアスリートを含めて前人未到の、9m越えを成し遂げるべく、今日この瞬間も闘い続けている。
Yusuke Wagatsuma