《サス経》 なんでこうなる日本の順位
日本の女性活躍度は…
G7サミット関連で先週25-26日に男女共同参画・女性活躍相会合が日光市で開催されました。その際、日本以外の国はすべて女性閣僚が参加したのですが、議長を務める日本の大臣は小倉將信氏で男性でした。もちろん男性だからといってそれだけで問題にはならないのですが、これが日本の苦しい状況を代弁しているのではないかと、海外のいくつかのメディアにも皮肉られてしまったようです。
日本において女性活用があまり進んでいない、はっきり言えば極めて遅れているということは国際的にもよく知られているようです。アメリカのニュース週刊誌TIMEはこのことを報じる際に、ご丁寧に6月20日に世界経済フォーラムが発表した今年の「グローバル・ジェンダー・ギャップレポート2023」において、日本はさらに順位を下げ、146カ国中125位であったことまで詳しく紹介しています。これはもちろんG7の中で最下位です。
ちなみにこの記事では、日本では閣僚だけではなく、そもそも国会議員にも女性が少ないことや、上場企業の役員の女性の割合も11.4%に留まっていることも紹介されています。
こうしたことを知っている人からすれば、日本の女性活躍推進担当大臣が男性であったことは決して偶然ではなく、むしろあぁやはりという理解になってしまうのは当然でしょう。
もう一つ気になる国際ランキング
そして6月にはもう一つ気になる国際ランキングの発表がありました。持続可能な開発ソリューションネットワーク(SDSN)が6月21日に発行した「持続可能な開発報告書2023」(Sustainable Development Report 2023)です。今回、日本の順位は166カ国中21位と、残念ながら2位下がってしまいました。点数そのものも昨年より-0.2点です。
このレポートはSDGsがスタートした2016年から毎年発行されており、2年目の2017年には日本は157位中11位でした。世界で11位というのは立派な順位であり、先ほどのジェンダー・ギャップレポートとは大違いです。
ところが日本の順位はこの年が最高で、それ以来、毎年少しずつ順位を下げており、今回ついに21位に後退してしまったのです。スコアも2017年の80.2点が最高で、以降はそれより低くなっています。つまり日本はほとんど進捗がないために、スコアを上げた他の国にどんどん追い抜かれているという状況です。
そして17の目標について日本の達成状況を見てみると、もっとも評価が低い「深刻な課題」とされているのが、「ジェンダー平等を実現しよう」(目標5)、「つくる責任、つかう責任」(目標12)、「気候変動に具体的な対策を」(目標13)、「海の豊かさを守ろう」(目標14)、「陸の豊かさも守ろう」(目標15)なのです。やはりここでもジェンダー平等の状況が深刻であることはバレてしまっていますね。
しっかり取り組んでいるはずなのでは!?
私がさらに深刻に思うのは、ここで日本にとって「深刻な課題」となっている5つは、実は企業のサステナビリティ課題でいえば、人権、資源循環、気候変動、生物多様性に関わる部分、つまり今もっとも重要で、もっとも取り組んでいるハズの課題だということです。
それなのにもっとも評価が低くて「深刻な課題」になっているのって… あなたなら、この状況をどう考えるでしょうか?
そもそも深刻だからこそ、企業も頑張って取り組んでいる!? 日本も頑張っているけれども、世界はもっと頑張っている? やっている感ではバレてしまう? 異次元の取り組みが必要!?… いろいろな仮説がありそうです。
これらがいずれも最近になって「サステナビリティ課題」として取り上げられた新しい課題であり、それが故にまだあまり進展していないということは大きいとは思います。けれども、新しい課題であっても、それが本当に重要な課題であることを認識していれば、やはりそこにもっと力を入れているはずです。日本の多くの企業や組織は、まだそこまで深刻に捉えていないのではないか、だから「取り組んでいます」で満足してしまっているように思えてなりません。ジェンダーギャップの状況も、それを象徴しているように思えるのです。
なぜ日本はこのような評価になるのか、あるいはあなたの所属する組織はどうなのか? ぜひご自身でもう一度考えてみていただきたいと思います。そして国内や組織内の常識や相場観だけで見ていると危うい、このことは常に頭に入れておいた方が良さそうです。
サステナブル経営アドバイザー 足立直樹
株式会社レスポンスアビリティのメールマガジン「サステナブル経営通信」(サス経)470(2023年7月4日発行)からの転載です。