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《サス経》 訪日外国人が驚く○○

 桜のシーズンということもあり、京都の街には旅行者があふれています。 最近は海外からの旅行者がとても増えたことを感じます。

 そうした方々とが日本に来て一様に驚くことは何だと思われるでしょうか? 1分の遅れもなく正確に運行する列車、ゴミの落ちてない道路、丁寧に挨拶をする店員さん… もちろんそうしたこともあるのですが、多くの方々が挙げるのが、とにかくプラスチックに包装されているものが多い!ということです。

 なぜこんなになんでもかんでもプラスチックに包まなくてはいけないのか? 私がお会いするのは環境関係の方が多いので、かなりバイアスがかかっているとは思いますが、それでも本当に多くの方からそういう疑問の声をよく聞くのです。

 実際、日本はコンビニを始め、いろいろなお店でまだまだプラスチックのレジ袋が使われていますし、ペットボトルの自販機が街中にあふれています。そしてファストフードショップに行けば、あるいはコンビニでも、今もなおプラスチックのフォークやナイフ、トレイが使われています。ホテルでもプラスチック製のアメニティが無料で提供されているのは、少し前の記事でも書いた通りです。

 もちろん以前よりはレジ袋を使う人は減りました。ペットボトルの回収率も上がっているのかもしれません。それでも他の国に比べると、まだまだ使い捨てプラスチックは多いし、目立つのです。

EUは使い捨てプラスチックは販売が禁止


 ご存知の方も多いと思いますが、EUではもう2年近くも前、2021年の7月から10大使い捨てプラスチック※の使用を禁止する「使い捨てプラスチック指令」(Directive on single-use plastics)が発効しています。有料にするではなく、EU域内での販売を禁止するという厳しいものです。

 そしてイギリスでも今年から同様の法律が施行になります。販売禁止の対象には、使い捨てプラスチック皿、トレイ、ボウル、カトラリー、風船のスティック、そして特定の種類のポリスチレンカップと食品容器が含まれています。この販売禁止には政府との協議に参加した人の95%が賛成したそうです。

 本当は4月から禁止される予定で、約半数の企業もその期限を守れると回答していたのですが、もう少し準備時間が必要という企業にも配慮して、実施は今年10月に半年延期となったようです。

 それにしてもです、今年の秋にはEUについでイギリスでも、お店、レストラン、ホテルなどすべての場所において、プラスチックのお皿もトレイもカトラリーも一掃されるのです。そうした国々から、今だ何でもプラスチックに包まれ、プラスチック容器で供される日本に来れば、びっくりするのは当然でしょう。ずいぶん前の時代にタイムスリップしたような感覚を感じるかもしれません。

なぜ日本ではできないのか?

 なぜ欧州など他の国ではできるのに、日本ではできないのか? もちろん技術の問題ではありません。技術力で解決しようという問題ではなく、意志の問題だからです。

 SDGsですっかり有名になった「持続可能な発展」とは、「将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、現在の世代のニーズを満たすような社会」を作っていくことです。使い捨てのプラスチックを使うことは、いかにそれが便利で安かったとしても、将来世代のニーズや発展を損ねていることは明らかです。「持続可能な開発」ともSDGsとも相入れないことだから、止めるしかないのです。

 いやそれでは不便だ、コストがかかる。今までもこのやり方でやってきた。他に良い代替方法はない… 不思議なことに胸許にSDGsのバッジを付けた日本のビジネスマンからはすぐにそういう声が挙がります。けれどもダメなものはダメだし、真剣にその代替方法を考えることからイノベーションは生まれ、社会は進歩するのに… 何とももったいない話です。

 自分たちの利益しか考えない。なるべく変化せずに楽をしよう。そういう気持ちが私たちの心の底に潜んでいるのではないかと思わざるを得ません。エコノミックアニマルという揶揄はやはり正しかったのかと悲しい気持ちにもなります。

日本にも頑張って欲しいプラ対策

  •  海外との行き来が増え、いろいろな方々とまた直接会えるようになるのは嬉しいことです。けれどその反面、言い訳ばかりで停滞したままの日本の姿と向き合わなくてはいけないのは、悲しいことです。

     まもなく4月15日からはG7気候・エネルギー・環境大臣会合が札幌で開催されます。環境について、議長国の日本はプラスチック汚染対策に関する条約交渉をリードするとしていますが、果たして足もとがこんな状況で説得力がある議論ができるのかと心配になります。

     私も本当はこんな話ばかり書きたくはありません。日本も頑張っている、いや、日本がリードしている。そんな話題をぜひ紹介したいと思います。なので、我が社はこんなに頑張っている、こんな成果を挙げた。そういう会社の方は、ぜひご連絡ください。そうした会社の取り組みを世に知らしめるべく、全力でお手伝いしたいと思います。


    ※「10大使い捨てプラスチック」は以下のとおり

    • 綿棒スティック

    • カトラリー、プレート、ストロー、スターラー

    • 風船と風船用スティック

    • 食品容器

    • 飲料用カップ

    • 飲料容器

    • たばこのフィルター(cigarette butts)

    • ビニール袋

    • 包装とラップ

    • ウェットティッシュと衛生用品

  サステナブル・ブランド・プロデューサー 足立直樹

株式会社レスポンスアビリティのメールマガジン「サステナブル経営通信」(サス経)465(2023年4月6日発行)からの転載です。

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