《サス経》 その対応はどこまで本気?
こんにちは。レスポンスアビリティの足立です。月曜日が満月でしたので、これに合わせて旬のサステナビリティに係る話題をお届けしたいと思います。
まもなく1年経つのに…
コロナが5月の連休明けから第5類に引き下げられることが決まりました。感染者数のピークも過ぎたようで、出張や旅行などを再開した方も多いと思います。私も国内の出張が増えつつあるのですが、その中でちょっと気になっていることがあります。相変わらずホテルにプラスチックの使い捨てのアメニティーが置かれていることです。
サステナビリティ担当の方であればよくご存知だと思いますが、2022年4月1日に施行されたプラスチック新法(プラスチック資源循環促進法)により、特定プラスチック使用製品をこれまで無償提供で行って来た事業者は、削減の取り組みが求められています。
「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」(環境省)
プラスチック製のフォーク、ナイフ、ストローなどがその一例なのですが、これについてはファストフードやチェーンのカフェなどでは何らかの取り組みが行われている様子も見られます。
一方で、ホテルや旅館が提供しているヘアブラシ、かみそり、シャワーキャップ、歯ブラシも該当するのですが、それが新法施行前とあまり変わっていない場合も少なくないように感じます。
客室には置かずにフロントに置いてあるところも見かけますが、自由に使えるのであれば、減るのはホテルの手間だけで、消費量は減らないでしょう。
みんな歯ブラシを使っている⁉️
さらに私に追い討ちをかけたのが、最近あるホテルの支配人からお聞きした話です。そのホテルでは、部屋に備え付けの歯ブラシはほとんどのお客様が使用するということでした。私は出張などの際には洗面道具一式を持参するので、備え付けの歯ブラシはまず使うことがありません。肌が弱いので、シェーバーも必ず自分のものを使います。なので、ホテルの備え付けのアメニティーを使うという発想がなかったのですが、ほとんどの方が歯ブラシを使うと聞いて大変驚いたのです。
ほとんどのお客さんが使うとなれば、無料配布を止めたら、かなり苦情が来るかもしれません。少なくとも、歯ブラシを持ってこなかった方からは、どうにかしてほしいという相談はあるでしょう。もちろん急に宿泊することになって、用意がないという場合にも対応は必要です。
けれども、レジ袋の時もそうでしたが、最初のうちは混乱や苦情があっても、しばらくすれば皆それに慣れるようになるはずです。もしどうしてもという場合には、適切な処理費用も含めた価格で販売すれば良いのです。割高と思われても、その方が社会的に公平ですし、そのぐらいしなければ使用量は減らないでしょう。
プラスチックだけ悪者にするなという声も聞こえてきそうですが、やれることはすべてやらないといけない所までもう私たちは追い込まれています。本当に必要なところでプラスチックを使うことができるようにするためにも、使わなくても良いところではギリギリまで減らすことが必要です。それをせずにプラスチックの使用や廃棄を放置していると、この先大変なことが起きることが科学的に明らかなのです。だからこそ日本でもプラスチック新法が出来ました。
海外では、プラスチック製の食器類は有料どころか、販売が禁止されたところもありますし、企業も発想を転換して、次々に新しい、環境負荷の低い代替法を考えて出しています。それが創造性を刺激し、新たなビジネスも生んでいます。
将来世代に対する犯罪
使い捨てのプラスチック製品が使えなくなれば、不便なことも出てくるでしょう。けれども、自分たちの利便性のために、将来世代の環境や社会を毀損することは、もはや倫理的に許されません。法律上は罰則はなくても、将来世代に対する犯罪と言っていいでしょう。
ところが、この辺の感覚がまだまだ日本では弱いのではないかと心配です。気候危機やESGの話題を掲載したビジネス誌がビニール袋に包まれて配達されたり、これまで紙製で問題なかった牛乳のパックにプラスチックのキャップが付くようになったり… 「私たちは地球全体や将来世代のことより目先の利益を重視してます」と公言しているのですから、こういう企業の評価はこれから必ず下がるでしょう。
サステナビリティ、特に環境に関わる問題は世代間で利害が衝突します。法律に罰則がないからとサステナビリティを軽視することはもはや企業にとって自殺行為です。逆にサステナビリティを考えた行動をどんどん進めている企業はそこが差別化のチャンスです。自分たちの考え方や行動をどうぞしっかりとアピールしていただきたいと思います。
冒頭のホテルの話に戻れば、迷っている企業の方はぜひ自信をもって次世代のためになる方を選択し、そのことをしっかりお客様に伝えてください。コスト等の関係で大変な場合もあるかもしれませんが、それが生き残る道です。そしてそこでの工夫や努力が、近い将来の競争力になります。安易な方を選択すれば、結局は後から苦労することになるのです。
本気の会社にもっと増えて欲しいと思いますし、私もそういう本気の会社を応援し続けたいと思います
サステナブル・ブランド・プロデューサー 足立直樹
株式会社レスポンスアビリティのメールマガジン「サステナブル経営通信」(サス経)461(2023年2月7日発行)からの転載です。