TYO GQOM 5
2019/12/15に幡ヶ谷Forest Limitにて1周年を迎えた「TYO GQOM 5」に行ったのですが、強い刺激を受けると脳味噌に言葉が駆けめぐってしまうので、その時頭に浮かんでたことと、前々からクルーのプレイを見て思ってたことを思いつくままに勢いで書き散らした奴です。多分読みづらいけどアウトプットして形に残すのが目的なのでもういい。
少し出遅れて到着したので、トップバッターだったKΣITOくんのDJは少しだけしか聞けてないんだけど、到着して15分で踊りすぎで汗がヤバいし、羽織ものを着ていることを早々に諦めてTシャツ一枚になった。
かっこいいGQOMを流していたのだけど、私これ聞いたことないかも、などと思っていたら同じ事を思っていたのか「えーこれ誰だろ!あ、この人か!」とみとこんさんとK8ちゃんがSHAZAMしたりしていて盛り上がっていた。
KΣITOくんはDJもLIVEもそうだけど、音の傾向として少し硬質、温度は低めで重心は上の方、そして脳味噌に作用する印象が個人的には強い。脳のいろんな部位を満遍なく使ってみよう、といった模索みたいなのがLIVEの時だと特に顕著な気がする。脳に作用する印象はどこから来るんだろう、と前々から思っていたのだけど、彼が元々ガムランが好きというのを聞いてからは妙に納得するようになった。
生でガムランを聞いたことがあるのだけど(スアール・アグンの来日公演)、その時は完全に時間感覚がバグってしまい「えっなんなんだこれは、おかしい!おかしいぞ!大丈夫かこれ!」ってなった記憶があって、トランスするとかそういう話はまぁ聞くだけなら沢山あるのだけど、私自身も体感としてガムランはそういう音楽だなと認識しているし、そういうモノに思春期の頃からハマって創作活動をやってると考えたら彼のヤバさがよくわかるというものである。
2番手のMOROくんは一緒にパーティーもやってるし(なんなら前日12/14も一緒にパーティーに出演していた)、彼のでているパーティーにはかなり遊びに行っているのだけど、彼のプレイの特徴的で物凄く良いところは「前のめりな疾走感」があるところだと思っている。本当に何でもプレイ出来る子なので、パーティー頭にまったり気持ちよいプレイを任せるのも本当に最高なんだけど、気持ちよく楽しくなってきてしまった時にすぐこらえきれなくなる様な、反応の良い素直な体をしている所があるし、そうなった時に行けるところまで行っちまおうや、となって行けてしまうタフさもある。だからGQOMをプレイしていても彼が流すと、さながらヤンキーがアフリカ大陸を爆走しているかの様な勢いすら感じる事がある。
この日の彼のプレイはそういう意味では周年だからというのもあるのだろうけど、祝祭感があった様に思った。この「祝祭感」という言葉も様々な要素を孕んでいるので一口に言うのは難しいところがあるのだけれど、彼の特長と合わせると「祭の熱気に真っ先に感応しておかしくなれる人」といった趣があった。意識はあるけれど半分くらい意識を手放しているようにも思えるようなトランス感、TYOGQOMが面白いパーティーだからこそそうなるという所も勿論あると思う。
ちなみに普段終わった後とか他の人のプレイを見て冷静になったタイミングで「もっと出来たんじゃないか」「ああいう感じ俺がやったらどうなるんだろう」と落ち込んだり考えたりしている事があるのもよく知っているので、模索があった上で発揮出来るヤバさだとも思っているし、その結果結局MOROくんでしかない何かになるのがまた良いのである。
3番手のBingoさんは、TYO GQOMに於いて途中からもうほぼSingeli(タンザニア発の超高速ダンスミュージック)しか流さなくなっているのだけれど、当初から「速すぎてゆっくりに聞こえる」などと言っていて、この日も「えーっと今日は皆様にゆっくりSingeliを聴いてもらおうかなと思います。」などとTweetしており、なにをおっしゃる〜〜〜などと思っていたのですが。始まってからも「えっ絶対ヤバいところに連れて行かれるんでしょ!?私知ってるよ!?」「ほら!今一瞬速くなりそうだったでしょ!?」と完全にビビりの人みたいな状態で聴いていたのだけど、Bingoさんはそれはもう丁寧に丁寧に丁寧に(3回言った)「ほーらこの曲のテンポと同じだよ〜速くないよね〜」とガイドラインを提示し続け、「あれっ?もしかしてSingeliってゆっくりなんじゃない?」「だって普通に聞けたもん、ゆっくりだよ!大丈夫だったよ!」と思わせられてしまった。
BingoさんがSingeliを流すようになってからどんどんアプローチの仕方が工夫されていって、「呪術のようなサウンドを聴いていたらテンションぶち上がってしまいSingeliが聞ける状態になっていた」みたいな感じだった印象だったけど、今回はなんかもっと巧妙な、ある種だまされてたんじゃないか?といった、そんな感じもあった。観光案内のお兄さんについて行ったら気がつくとキリマンジャロ山(タンザニアのめっちゃ高い山)に楽しく登頂成功して無事に帰ってこれてしまった、もしかしてアレ実はめっちゃヤバかったのでは?みたいな状態。ごめん適当言ったわ。
Bingoさんの恐ろしいところは、多分あれを全部理性を手放さずに意識的に行っているところだと思う。というか理性を手放せないタイプなのかもしれないけど、それを分かり切った上で、どこまでフロアの空気をコントロールしてヤバいことが起こせるか、を好奇心でもって突き詰めている様子があるところ、と言えるかもしれない。勿論裏打ちされた知識や技術があってこその事なのだけど、しかしながら一筋縄では行かない感じも込みで素晴らしかった。
終わった後にMOROくんとKΣITOくんと話してたんだけど、「いやマジでアレはもはやシンゲリストだわ」「現地の人絶対あんなかけ方しないでしょ」との話になった。それだけ自分のものに出来てるって所も込みでヤバいよね、って。
4番手みとこんさんのAmapianoセット…の前に珍しくKΣITOくんがマイクを持って一周年の挨拶及びみとこんさんの紹介をしていたのだけど、絶対不慣れなのに必要だと思ったタイミングでちゃんとやれる子、えらい…!っていう誰目線だよみたいな気持ちで眺めてしまった。
みとこんさんのAmapianoセットは以前Bonoboで初お披露目だった際に、みとこんさんの踊る母と一緒に踊り倒した事があるのでヤバさは重々承知していたのだけど、やっぱりヤバかった…。今回やったAmapianoはみとこんさん曰く「アフリカの酔っぱらいの音楽」と以前説明を聴いた事があったのだけど、Twitterで検索をするとへべれけになった人がウィ〜となりながら踊っている動画が上がっており、その上でAmapianoを聴くとよく分かるのだけど、酔っぱらって頭がファ〜となっている時の、あの「ファ〜」の上澄み成分で出来ている音楽だと思うと良いのかもしれない。そんな音楽をみとこんさんが1時間のセットでプレイすると「パーティーが始まって終わり、朝を迎えるまで」が圧縮されてお届けされてしまうのである。ドラマティック&エモーショナルである。最初は酔っぱらって楽しくなって踊っているのだけど、後半にさしかかる頃には"パーティーのピークタイム"で最高に盛り上がり、"AM3:00"で酒でグズグズになり、"AM5:00"酒でダメになった奴は寝てるしゾンビみたいに踊ってる奴もいるし、"AM7:00"もう陽が昇ってまぶしい〜って起き出して、その後アフターアワーズなのかエンドロールなのか、ハッピーな大団円を迎える、というナイスパーティーで体感出来ることが、気持ちよすぎて聴いている1時間の間に起きてしまうのである、これがドラマティックでエモーショナルじゃないなら何なんだ。高まりまくったmoemikiちゃんに「ヤバい〜〜ヤバいよ〜〜〜エモいよぉぉ〜〜」と抱きつかれながら人類マジでヤバい状況になるとヤバいしかいえなくなるよね…わかる…という気持ちになっていた。そもそもみとこんさんはアフリカ愛が強すぎて、好きの一点張りでここまで来ており、その時点で凄まじいのだけど、TYO GQOMクルーは同じ曲みんなかぶって持ってるだろうに彼女が曲をかけると完全に「南アフリカ産地直送便」の音になってしまうのである。故に彼女がDJする時の音はTYO GQOMメンバーの中で重心が一番低い様に思う。大地が近いのだ。そして本人の様子を見れば分かるのだけど健康的な色気があって、女の私が聴いていると開放的になれる安心感があるし、男性の感想を見ると色気があるという表現を目にする事が多くて、なるほどなと思ったりする。Amapianoセットの時はお酒のフワァ〜っと感があるので重心の低さをそこまで感じることはないのだけど、その代わりなんというか、「受け入れられている」感じが物凄く強い。ズブズブの沼感よりももっと優しい目線の何かである。現場で書き散らした自分の投稿を見たら「みとこんさんのアマピアノは"赦し"を感じる…最高…」「地母神か何かか」と書いており、つまり結局我々は、彼女のDJによってアフリカの大地に包まれていたのだ。なんということだ…。
5番手のGQOMZILLAはKΣITOくんとMOROくんのユニットなのだけど、これまでのDOPEめな流れを鑑みて、キャッチーな「TYO GQOMに於けるAnthemナンバー」がゴリゴリに流れてそれだけで大変な事になってしまったし、MOROくんの前のめりな疾走感とKΣITOくんの脳に利く感じに加えて超絶技巧ハンドドラムによるライブ感ブーストされるというスタイルは、聴いてると「極東アジアから南アフリカを侵略するゴジラになりうるやべーもんが産まれてしまったぞ」と思わせてくれるのである。故に早く現地の人に聴いてもらって反応が知りたいとずっと思っている。ちなみに今スマホ見返したらこの時の動画ほぼ撮ってなくてなんでや!!!と思ったけどそういえばずっとVoshoしたりして一番踊り狂ってて動画撮るどころではなかった。最近Voshoしてなくてここで足が終わりを迎えた。
そして前回ゲストにでてくれていたxiangyuちゃんの「Go Mistake」(これもTYO GQOM的Anthem)で次の出番のK8ちゃんのお誕生日おめでとう&ケーキ、そして遊びに来てくれていたxiangyuちゃん本人生歌…。エラいことになっていた。
この盛り上がりきった状況でどうなっちゃうの!?という感じで6番手のバースデーガールK8ちゃんにパスされたのですが、TYO GQOMクルーの中では最年少になるのだろうけども、彼女は彼女でめっちゃ腕も立つ上にイカれた所があって(ほめています)、この盛り上がりきった状況でも聴いてる側をめちゃくちゃにしてくれて最高に楽しい。彼女はUK Bassとかの素養があるからか、音を聞いたときの印象としては温度も湿度も低めで完全に北半球の人の音だ〜という感じ。GQOMを流してもそのある種ドライな雰囲気があって、その分しっかりクラブミュージック文脈のプレイの中に織り込まれたGQOMを聴くことが出来るので、じらされてからのGQOMにワァッと沸く、みたいな感じだったりするのだけど、そういったプレイもしっかり腕がないと出来ないし、その上彼女のイカれた所によって思い切りよく「ここまで行けるやろ」っていう振り回し方をしてくれる所がある。シームレスに色んなクラブミュージックを行き来して、聴いてて「何か色々ぶちかましてくれてGQOMとか半分くらいどうでもよくなる」みたいに思わせられるパワフルさすらあるので、本当に彼女もタフだなと思う。この5人がいてこその切り口の豊富さってのがあるよなとつくづく思うわけです。
7番手のDestiny Boyzはみんなで小指を立てて掲げてスタート。この辺はK8ちゃんの流れもあってもう完全に「行けるとこまで行こう」モードになってしまってて、私もどのあたりから最後の全員B2Bに移行したのか記憶が定かでない…。めちゃくちゃでクソ楽しかった事だけは覚えてるけど…。この辺りからみんなの「これならどうや!」の応酬が始まって最高だったし、「おい天才かよ…」って感想しか出てこない状態だった。ヤバいものを浴びすぎると人の知能は低下するので仕方ない。個人的にここからラストにかけての辺りで印象的だったのは、BingoさんがTOTOのAfricaを流してくれた事でして、もう「最高かよ!!!!!俺のアフリカはここから始まったんだよ!!!!!」とめちゃくちゃエモちらかしてしまった。完全に私事なんですが、あわいさんは小学生の頃からTOTOを聴かされて育っており、いまだに来日公演も姉妹で揃って行く位ファンなんですよ…。そして調子が良くなってくるとKΣITOくんが流しがちなレイヴクラシックも大好きなのでファー!ってなったし、みとこんさんが入ると一気にアフリカの大地に引き戻され、みたいなめちゃくちゃな行き来をしまくってどうやって締まるんだ、みたいになった時にKΣITOくんが選んだのがBlack MotionのJoy Joy、素晴らしかった…。
まぁ実際はその後もなんかちょっとグダって、野獣化したMOROくんがここで一句!とかを迫って怒られたりしてて、それでもめげずにマイクを持ったMOROくんが「アフリカ・愛!」って締めてて、そういうめちゃくちゃなのも込みで、本当に楽しかったんですよ…。
途中で書きそびれていたのだけど、TYO GQOMは1回目から全部見てきて、なんなら浜松とか大阪も「こんなんぜってー楽しいだろ」って前のめりになって遠征してしまったのだけど、みんなが変化していく様も含めて物凄く面白いと思っていて。
前回から今回にかけてで言えば、Amapianoのヤバさに気付いたみんながAmapianoを消化するようになったからか、DJ中の「空白」を恐れなくなったというか、ビートとかがスンッ…となくなるタメというか引きのポイントを度々使うようになったりしてて、みんなが進化なり変化していってるのが大して音楽詳しくもなければDJ上手くもない私ですらわかる(気がする)から、また次も違う何かになっていてほしいし、多分そうなっていると思う。
パーティーが終わる辺りにカトーマサカーのカトーさんとも話を少ししていたのだけど、TYO GQOMに対して私は「現象として面白い」と捉えている節があって、このまま面白い事の連鎖が続くとよいな、とめちゃくちゃな飽き性な人間としては願ってやまないのです。
これ読んでふーんって思った人はとりあえず
みとこんさんのNTS Radio出演時のMIX(29:03~)
とかを買ったり聴いたりしてみたらいいと思います!パーティーの様子が気になる人はTwitterで「#TYOGQOM」を検索したらみんながおかしくなっている様子がわかる!実は公式アカウントもある!
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