MITSOUKO 7月24日~365日の香水
カサブランカ
1942年に公開された映画「カサブランカ」。
第二次世界大戦中のモロッコが舞台。当時のモロッコは、ナチ政権から逃れてアメリカに亡命しようとする人々の経由地になっていたという。
そこで酒場を営むアメリカ人リックは、元カノのイルザと再会する。イルザの今カレ(夫)ラズロは反ナチのレジスタンスで、抵抗運動を再開するためモロッコから脱出する必要があった。
リックを演じたハンフリー・ボガート、イルザを演じたイングリット・バーグマン、別れの場面の「君の瞳に乾杯」の邦訳が有名。
直訳は「神様は君を見ています」というこただそうなので、ラブストリーの文脈に入れなおしてのスーパー意訳だそうだ。
汎ヨーロッパ運動
映画に登場した活動家ラズロにはモデルがいるといわれる。
「ヨーロッパ連合の父」と呼ばれた人で、彼は一つのヨーロッパ、ヨーロッパ連合国という理念を持っていた。いまのEU の礎と言っていい。
その人の名はリヒャルト・クーデンホーフ=カレルギー(Richard Nikolaus Eijiro Coudenhove-Kalergi)。
名門ハプスブルグ家に仕える伯爵家に生まれた。
生まれた地は日本の東京。
クーデンホーフ光子
リヒャルトの母は日本人。明治時代に日本で生まれ、当時駐日大使を務めていたクーデンホーフ伯爵に見初められオーストリアの伯爵家に嫁いだ「クーデンホーフ光子」である。
光子の信頼
言葉も文化もそして身分も違う結婚に光子を向かわせたのはなんだったのか。小間使いとして入った大使公邸、結婚後の猛勉強、教養豊かな夫。
クーデンホーフ伯爵は光子を愛人扱いすることもできたはずだが、正式な妻にすると決める。
これは、一人の人間として尊重されているという実感を光子に持たせたのではないかな。ゆるぎない信頼が生まれたのではないかな、と思う。
メリットデメリットの差し引きではなく、全振りして結果がどうなっても後悔はない、という信頼。
ラ・バタイユのミツコ
邦訳を未読だけれど1909年のフランスの小説「ラバタイユ~la bataille(戦闘)」(クロード・ファレル作)はミツコという日本女性がヒロイン。日露戦争を舞台にし、海軍将校の妻でありながら、若いイギリス人将校に恋をしたミツコ。彼女はその思いを奥底に秘め続ける、という。
この小説にインスパイアされた香水が、作者のファレルと親交のあったジャック・ゲランによる「MITSOUKO」。
ミツコたちの関係
ゲランのミツコとラ・バタイユのミツコにつながりは上述の通り。それがクーデンホーフ光子につながるかは不明。ゲランでは特定の実在人物ではない、としている。
ただ、クーデンホーフ光子自身も、ヨーロッパ社会で偏見にさらされていたが、日露戦争に日本が勝利し国際的な地位が向上したことで、見られ方に変化があったという。
ミツコ像
意志の強さ、内に秘めた情熱、テンションではなくモチベーション。
意志を貫き情熱を絶やさない努力、そういう人物像が共通している。
それは、美しく控え目な中にも威厳が宿る人。
MITSOUKO/GUERLAIN/1919
シプレータイプの歴史的名香。ゲラン家三代目、現代調香の父といわれるジャック・ゲラン(Jacque Guerlain)による。
香りの説明は必要だろうか?
この香水はカサブランカで主演したイングリット・バーグマンも愛用していた。
2004年の舞台「MITSOUKO」では晩年、光子が自分と同じ名の香水を贈られ喜んでいる場面があったはず。
今日7月24日はクーデンホーフ光子の生まれた日。
香り、思い、呼吸
7月24日がお誕生日の方、記念日の方、おめでとうございます。