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スイス[31] スイスの鉄道[3]閉じた系と開かれた系

202205251709スイス[31]スイスの鉄道[3]閉じた系と開かれた系

 私は過去の旅行時に,スイスと隣接国との鉄道による国境越えを何回かしています。その国境駅は,ジュネーブ,バロルブ(Vallorbe),バーゼルSBB,クロイツリンゲン(Kreuzlingen),ブフス(Buchs),キアッソ(Chiasso)とけっこう多めです。そのどこでも感じることなのですが,隣接国とのレール幅が同じ(ヨーロッパの標準軌道)とはいえ,やはり相互乗り入れが出来る「開かれた系」といえるスイスの鉄道はうらやましいなと思います。

 もちろん国や地域によって架線にかかる電気の電圧・交直さらには周波数の違いなどがありますが(話す言語が違う場合もある),それでも互いに連携し合って旅客・貨物輸送が出来るのはいいなぁ,と思います。実際,旅客列車だけでも例えばスイスSBBの特急がミラノ中央駅まで,フランスTGVがチューリヒ中央駅まで,ドイツICEがインターラーケン・オスト駅まで乗り入れているのです。
 単に良いというより,鉄道技術の進歩(ハードウェア)・ダイヤグラムの作成(ソフトウェア)・各国間の政治的交渉・契約など鉄道車両の乗り入れ実現には高度な技術と手間暇が必要だと思います。これは古くはオリエント急行の運行でワゴン・リー社が相当に苦労したことからも明らかでしょう(*1)。

 交通技術ライターである川辺謙一氏の著述によると,日本の鉄道技術は悪くはないけれど世界一という訳でもなさそうです。理由の一つには,私が思うに日本の鉄道は「閉じた系」だからかもしれません。在来線でも新幹線でもそれぞれが閉じたシステム(系)を作っています。もちろん日本でも都市の地下鉄・私鉄相互乗り入れはあるにはありますが…
 何をもってして「技術」が世界一かという判断基準は簡単ではありませんが,日本は他所の国との相互乗り入れや交渉の必要性がありません(というか出来ません)。日本の事情にあった鉄道技術としては独自に発達しているとは思いますが,これは決して揶揄していうのではないのですが日本の鉄道技術(鉄道事情)は一種のガラパゴス的な発展と言えなくもないと思います。

(*1)平井 正 著,オリエント急行の時代(中公新書),2007年1月,中央公論新社

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