スイス[2] 「スイスの徴兵制」 A.J.
202202101452スイス[2]スイスの徴兵制
A.J.
スイスを旅行中にスイス人の知人(男性六十歳代)と彼の家で夕食をご一緒した時に「そういえばスイスってええと、何ていうのかなぁ military duty って言わないかも知れないけれど、若い男性は軍隊に入るんでしょう?」と英語で話しかけると、彼は「小さいのを投げるとさ、向こうで『ボン!』って大きな音がして爆発するんだ。面白かったよ」と若かった頃の話をこともなげに言った。年齢が年齢だけに彼は今は予備役でもないはずだが、彼の家に今でも軍用小銃があるのかは藪へびなので聞かなかった。
ただ、近年はスイスと周りの欧州各国との間にはシェンゲン協定があるから国境管理が甘くなっている(へたすると税関もいない無人の国境検問所すらある)。だからスイスにやたらと兵器があるとフランスなどでテロに使われかねないという理由から,スイスといえど街のあちこちに小銃などの武器があるというわけではないらしい。
徴兵制(兵役の義務)はスイスが日本とは大きく違うところの一つだろう。日本の自衛隊が事実上の軍隊であるとしても今は自衛隊に入る義務は日本国民にはない。これを義務としてしまうと職業選択の自由に反してしまう。もちろん現行の日本国憲法を改正すれば徴兵制を導入することもあるいは可能かもしれないが、現在のところ全ての憲法改正論者がそれに賛成しているかは疑問である。
先日あるドイツ関係の会合に出席したら、以前ルツェルン(Luzern,スイス中部の都市)に在住していたという女性と少し話が出来た。若いご婦人でお子さんを連れていたので聞くと旦那さんはスイス人で今は一緒に日本に住んでいると言う。で、その女性に「そう言えばご主人は兵役は大丈夫だったのですか?」と聞いたら「高い『罰金』を払って兵役を逃れた」と話してくれた。どうも参考資料を見ると(*2)『罰金』は本当にある(あった)らしい。ただし今はスイスにも良心的忌避が認められているようだが。
スイス国内を鉄道(SBB,スイス連邦鉄道)で旅行をしていると時々移動中の軍隊に出会う。もちろん彼らは自分たちの輸送手段も持っているのであろうが、列車の普通の客車にもグループで乗り込んでくることがあるのである。間近で小銃を抱えて武装している一団を見ると、そういうことに不慣れな私はちょっとビビったりする。
私が参考にしている書籍には(*3)には『スイスの兵隊たちはアマチュアでパートタイムの兵隊であるに過ぎない』という表記がある。私にはスイス軍の実際はよくわからないが、徴兵制があるにしても各種兵器の準備、訓練の程度や近隣国との緊張の度合いによってその軍隊の強さは違うはずだ。少なくともスイスの近隣諸国であるフランス、ドイツ、イタリアそしてオーストリアがスイスを今すぐ攻めてくる、とは考えられない現状では強固すぎる軍隊が必要とは言えまい。中立政策上での自衛目的だけの軍隊がスイス軍なのかも知れない(*4)。
(*1)後で調べたら英語ではmilitary service(兵役)conscription,draft(徴兵制)と言うらしい(ウィズダム2和英英和電子辞書)
(*2)このサイトの記事はある程度信用出来ると思われる(2022年2月7日閲覧)
https://www.swissinfo.ch/jpn/スイス軍_スイスの兵役義務-拒否できる-/45307438
(*3)700歳のスイス アルプスの国の過去と今と未来,1991年11月20日/宮下啓三著/筑摩書房,p35
(*4)検索するとこんな例も出てきたが文中の「領空通過拒否」の出典が不明(2022年2月7日閲覧)
https://synodos.jp/opinion/international/21193/
『近年の例でいえば、1999年のNATOによるコソボ空爆や2003年のイラク戦争において、スイスはNATOや米軍によるスイス領空通過の要請を防止義務に基づき拒否している』
著者に,礒村英司,福岡国際大学国際コミュニケーション学部准教授,とあるが現在この大学は無いらしい。
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