スイス[10] 欧州の鉄道(3)無愛想ICE編【中】
202202172357スイス[10] 欧州の鉄道(3)無愛想ICE編【中】A. J.
ドイツ・フランクフルトからICEで一路スイスに向かっていた私だが,ICEにしてはトロトロ走るなぁと感じてばかりだった。実はのちに日本に帰ってから読んだ本(*1)には「(ICEの)専用軌道ではICEは速い」という趣旨の文章があったが,私が乗った路線のほとんどは一般車両列車との共用線路だったらしくICEとしては速度が遅かったらしい。
そのトロトロ走るICEの窓からボケーっと右を見ていたら(私は進行方向右側対面4人がけの席)なんとSBB(スイス連邦鉄道)のロゴを付けた客車列車が同じ方向を並走しているではないか。どうもその路線の一部は複々線になっていたらしい。ドイツのどの駅発でどこへ行くのかは分からなかったのだが,あっちに乗ったらちゃんとスイスまで行けるのではないのか? と思わず乗り換えたくなったのだが,停車する駅はなくそのまま線路は分かれてしまった。
その時撮影した写真をあとで見ると行き先表示には Koblenz / Interlaken Ost とあった。速度の早い特急列車ではなかったのかも知れないし,私のスイスでの目的地の駅に行くために便利だったかどうかはともかく「SBBの方が安心だよなぁ,でも客車がSBBなだけで走っている線路はDBだよなぁ…」とか考えていた。ちなみに Interlaken Ost はインターラーケン・オスト(Ost は東の意味)と読みスイス中部の山岳地域近くにある駅で,随分昔にグリンデルワルドへ行った時に途中で乗り換えた駅である。
嬉しかったことがあった。私がその列車を眺めていたら,そのSBBの列車の窓側に座っていた青年と偶然目が合った。どうしようか少し悩んだが思い切って遠慮気味に手を振ってみた。するとその青年も少しはにかみながらもこっちに手を振り返してくれたではないか。
距離にしてたった数メートルなのだが走行中の列車どうしだ。挨拶はそれだけしか出来ない。でもとてもいい気分になった。
ドイツ人かスイス人かそれとも他の国の人か…どんな青年だったんだろうな。
(欧州の鉄道(4)無愛想ICE編【下】に続く)
(*1)「日本の鉄道は世界で戦えるか」川辺謙一著/草思社/2018年,p.p. 124-125