「ゆるキャン△」が誘う日常のとなりへの冒険
惹かれる深夜アニメの要素とは、冒険なのかもしれない。先に取り上げた今期最大注目の一本「宇宙よりも遠い場所」はまさにその路線に合致する。成層圏の向こうよりも遠く、簡単に人を寄せ付けない絶界の地へ普通の女子高生たちが挑戦するストーリーは文字通り冒険である。
だが、遠くに行くばかりが冒険ではない。冒険は常に自分の隣りにある。日常から非日常へ踏み込むことは冒険でなくて何なのか。そんな、日常のすぐ隣りにある非日常に誘うアニメが「ゆるキャン△」だ。その世界は富士山の麓にある。いや、あなたの生活のすぐ隣りにある。
「ゆるキャン△」は、ゆるいキャンプ。テントなどちょっとした道具をもって、日常の隣りにありそうな自然に恵まれれた場所でときにソロで、ときに仲間たちとワイワイと、まったりキャンプを楽しもうという世界だ。
キャンプというと、あまり経験のない人からすると、ものすごい遠い存在に思えてしまう。でも、アウトドアショップて手軽に変えるテントセットやコッフェル、バーナーなどちょっとした用具さえ揃えればすぐに体験できてしまう最も手軽なアウトドアであることを、このアニメは警戒かつまったりなリズムで教えてくれる。細かいことを追求すると色々用意しなければならないことがあるが、「簡単にできそう」と半ばだましだましいざなってくれているのがこのアニメの素晴らしさと言っていいだろう。
テントの貼り方から焚き火のコツ、さらにはウインターシーズンに必須な使い捨てカイロのコツまで、ゆる~い女の子たちの世界観とはものすごいギャップがるベテラン声優・大塚明夫の懇切丁寧なナレーションが懇切丁寧に教えてくれるから安心だ。
本作に流れるシーズンは今のところ秋冬。凍てつく寒さに覆われる山梨のキャンプ場。なのに、そんな寒さを忘れてしまうほど、いやそんな寒さを味方にしてしまうほどに、まったりと温かい時間がゆっくりと流れていく。1年で一番寒いこの時期なのに、何故か「明日キャンプ、行こうかな」という気持ちにさせてしまう。
本来賑やかさが持ち味のまんがタイムきらら系アニメでありながら、のんびり路線を行く本作、隣の冒険にいざなってくれている。