「仮面ライダーゼロワン」に見る、人類とAIの古くて新しい関係性
仮面ライダーシリーズの最新作「仮面ライダーゼロワン」の放送がスタートした。いわゆる令和ライダー第1作である。
ちなみに、「仮面ライダークウガ」から始まった平成シリーズ以降で数えると21作目、1971年に始まった昭和第1作の「仮面ライダー」から数えると第28作になる(TVシリーズに限定)。時代が改まり、主役のスーツアクターもバトンタッチし、これまでの平成ライダーとは違うものを求める冒険が始まったと言っていいだろう。
その冒険とは何か。まだ第1話20数分分の本編から全てを探り当てるのは無理があるが、細部をつまみながら考えてみたい。
まず、「ゼロワン」のテーマは、人類とAIとの共存だ。AI=自立型アンドロイドが社会のいたる所に進出した近未来が物語の背景として描かれている。そのAIメーカーの最大手企業「飛電インテリジェンス」の若き社長を任されることになった主人公が、社長だけが持つことができるアイテム「ゼロワンドライバー」をつかって仮面ライダーに変身し、平和を脅かす様々な敵と戦う、というのが大まかなイントロダクションだ。
とにかく、街角のいたる所に、見た目普通の人間と変わらないAIアンドロイドがいる、それがゼロワンの世界だ。ライダーに変身する飛電或人(ひでん・あると)は生身の人間だが、彼をアシストする秘書イズは女性型アンドロイドである。
このように、人間とロボットが共存する特撮ドラマやアニメは、実は古くから存在した。国産テレビアニメ第1号である鉄腕アトムからそうだった。思い返してみれば極めて伝統的な世界観なのに、なぜか「AI」は今、やけに際立っている。
それは、取りも直さず、実際の現実社会が、近い将来そうなりそうな様相を呈しつつあるからだろう。いま、日本でiPhoneを使っている人が何千万人いるかわからないが、その数イコールAIの数である。その上、アマゾンアレクサやグーグルホームといったAI搭載のスマートスピーカーが数千円で手に入る。ゼロワンの世界は、まさに明日の現実そのものだ。自立型ロボットを「スーパー」という形容詞で呼んで現実との違いを認識していた昭和の時代とは明らかに違う。それが今想像できる令和という時代のアウトラインであり、そんな時代に求められるヒーローとして、ゼロワンが登場したと言っていいのだろう。
ところで、“ゼロワン(01)”と聞くと、「仮面ライダー」と同じ石ノ森章太郎が生み出したもう一つの特撮ヒーロー「人造人間キカイダー」の「キカイダー01」を思い出さないわけにはいかない。キカイダー01もその弟であるキカイダー(ジロー)も、正体は自律型アンドロイドである。まさに、「仮面ライダーゼロワン」のAIアンドロイドの始祖とでもいうべきものだ。
しかし、「仮面ライダー」のほうのゼロワンは生身の人間であり、キカイダーの方の01とは真逆の存在ということになる。まだ何も語られていないが、もしかするとこの奇妙な関係性が、この先の物語を解くカギになっているとしたら、70年代初頭の特撮ブームの中で育った私達の世代としては悠長に構えているわけにはいかなくなるというものだ。
私達、いわゆる昭和40年前後に生まれた世代にとって、AIはまだ、的か味方か判断しかねている状態といってよい。AIによって仕事を追われてしまうのか、それとも、AIのおかげで豊かで便利な老後を送ることができるようになるのか、そんな将来を占うつもりで、令和ライダー記念すべき第1作を追いかけてみるのもいいだろう。
そういえば、きょう(9月1日)、「ゼロワン」の直前に放送されていた「スタートゥインクル☆プリキュア」も、AIが話の中心に置かれていた。これは「ゼロワン」へのご祝儀の意味もこもっているのだろうか?ちょっと気になった朝だった。
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