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サブスク動画配信時代だから、お願いしたいこと。


映画やテレビドラマやアニメが月額数千円単位で思う存分楽しめる動画サブスクリプション配信サービスが拡大を続けている。映像作品マニアにとっては我が世の春が訪れた気分ではないだろうか。筆者も複数のサービスに加入しており、古いテレビドラマやアニメの記事を書く際に、生の映像を気軽に引き出せる手段として大いに重宝している。

きょうも、新たなサービス開始のニュースが目に入ってきた。

かつてのレンタルビデオ隆盛期の興奮が蘇る気分でもあるが、ビデオショップとは違い「貸出中」の憂き目に遭うこともなく、ラインナップもスタンダードな作品からこんなものよく配信できたなと思ういわくつきのタイトルまでカバーされているのはマニア心を揺さぶりまくる。

上のアマゾンプライムビデオの新サービスには、実写版「忍者ハットリくん」や「河童の三平」など自分が生まれた頃の白黒作品や、かの川内康範原作の伝説的特撮ヒーロー「コンドールマン」なんていうマニアックな作品まで平然と顔を並べているではないか。本当に、いい時代になったものだ。

同時に、再放送の情報を求めさまよい、雑誌「宇宙船」や各種ムックなど限られた資料を神保町古書街などで買い漁っていた遠い日の懐かしさがかすかによぎったりもする。

レンタルビデオが一般化する以前、テレビ放送は終了した作品に再びお目にかかるには再放送を待つしか方法がなかった。「仮面ライダー」や「ウルトラセブン」など本放送時から人気のあった作品なら再放送はなんどもされたのだが、途中で打ち切りになってしまった不人気作ともなると、二度と見られないこともザラだった。それらの作品が放送されない間は、テレビ局や制作会社の倉庫の奥でひたすら眠り続けていたわけだ。今でも、ビデオソフト化もされず配信サービスからも省かれている作品はもちろんあって(版権の都合、物理的にフィルムそのものが紛失してしまった、社会的事情で出しづらいなどが主な理由だ)、それらは今もなお、倉庫で惰眠を貪り続けていることになる。

だが、たとえ日の目を見る機会が与えられていない作品といえど、著作権は消えるわけではない。だが、それはなんのための著作権なのだろうか。存在感の薄い作品だって、見たいファンが全くゼロというわけではあるまい。版権管理を主張するなら、せめてそれらを日の当たる場所にいさせる責任くらいはあってしかるべきではないだろうか。その意味で、知る人ぞ知る作品が次々に表に出てきつつあるサブスクサービスの傾向は歓迎この上ないが、まだまだ足りないものがあるというのが私の印象でもあるのだ。

少し話がそれるかもしれないが、先に発生した京都アニメーション放火事件で、多くの有望なクリエイターが失われたことに、私を含め多くのファンがショックを覚えた。だが、先週公開された京アニ製作の最新作「ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 - 永遠と自動手記人形」のエンドロールになくなった社員全員の名が刻まれていたのを見て思ったのは、映像作品ほど長く人々の間に残る産物は他にないということだった。

これは別に、京アニのクオリティの高い作品だけのことではない。テレビ黎明期に作られた拙い子供向け特撮番組だって、小さい子供の頭の中にはずーっと残り続け、気がつけば50過ぎのおっさんになっていた私のような人間はあっちこっちにいるのだ。

映像権利者の考えを軽んじるつもりはないが、一度世の中に放たれた映像作品は、その時点で権利者だけの占有物ではなく、大げさに言えば社会の共有物でもあるのだ。それを、見せようと思えば見せられるのに見られないようにしていることは、罪とまでは言わないまでも、ちょっとズルいんじゃないかと思わずにいられない。そう考えてしまうのは、サブスク時代ならではの贅沢な欲求だろうか?


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