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伝統芸能としてのアニメ声優世代交代を考える
日本のテレビアニメが誕生してからすでに半世紀以上が経過している。これだけ続いているエンタメジャンルともなれば、そろそろ歌舞伎や落語などに準じた伝統芸能としての扱いがなされても何ら不思議ではないのではないだろうか。そんな中で、こんな記事が目についた。
最長寿の「サザエさん」を筆頭に、「ドラえもん」「ルパン三世」「宇宙戦艦ヤマト」「機動戦士ガンダム」など、長く語り継がれこれからも続いていくであろういわゆる定番アニメというべき作品は、落語の流派や歌舞伎の屋号のようにも思える。そうなると、サザエさんの声もルパンの声も、永遠に同じ人間が声を当て続けることなど到底不可能なことは明らかだ。その意味で、声優の世代交代は絶対必要なことであり、同時にそれは、歌舞伎などと同じく慶事であってしかるべきではないかと思う。
ご存知のように、声優の世代交代はすでに様々な作品で行われている。直近では「サザエさん」のマスオさんや「それゆけアンパンマン」のジャムおじさんを演じた増岡弘さんが後進に道を譲ったことが話題となった。こうしたことが一般的な話題として取り上げられた最初といえば、ルパン三世の声が山田康雄の急逝に伴い栗田貫一に交代した事例だろう。これがあったのは1995年のことだ(実はそれ以前に、山田の代わりに古川登志夫がルパンの声をやった作品があるのだが)。
それ以前にも、アニメキャラの声優交代は日常的にたくさんあった。マスオさんの声は初代の近石真介さんが1978年まで演じており、その後を増岡さんが引き継いだのだが、そんなことは誰も話題にしなかった。中学生だった筆者は当時、「あれ?マスオさんの声変わった?」と感じはしたが、誰かに話すほどのこととの認識はまったくなかった。それが今や、声優一人交代するだけで、下手をすればテレビのニュースの1項目として時間が割かれるまでになった。それがいいか悪いかと考えることに意味はないと思うが、人気アニメの声優という地位がこの数十年の間に格段に向上したことだけは間違いない。ものによっては、落語家の大名跡襲名よりも関心度は高いかもしれない。
これからも、「サザエさん」の主役の声を例に上げるまでもなく、声優の代替わりが話題になるケースはいくつも起こるに違いない。その際、わたしたちファンにできることは長年勤めた声優へのねぎらいと、新たなチャンスを掴んだ後継者への暖かな眼差しに尽きるだろう。