普通の女子高生たちの大冒険、「宇宙よりも遠い場所」
今月も気がつけばはや半分が過ぎ、2018年冬アニメも一通りで揃った。今期は間違いなく豊作である。前期(2017年秋)は粒ぞろいではあったものの、期を代表するアニメとなると答えに窮するのが正直なところ。その辺の評価はもう少し時間が経って見ないとなんとも言えないが、今期はそれとは全く違う状況だ。いや面白そうなものが多すぎる分、結局どれが今期の代表的作品なのか迷ってしまう悲劇も起こりかねないが。
そんな中で、現状、ダントツで一押しなのが「宇宙よりも遠い場所」だ。宇宙よりも遠い場所、それは南極である。物理的にも大気圏を超えるまで数万メートルの宇宙をはるかに超える、日本列島からざっと1万4000km離れた絶界。その大陸に足を踏み入れられるのは極めて限られた人間だけ。まして深夜アニメにちょくちょく登場するそんじょそこらの女子高生が行けるなんて、誰も考えない。だが、アニメならそれが可能だ(もちろん宇宙も可能だが)。行けそうで行けない、リアルの隣りにある世界、それが南極と言えるだろう。
その厳しい氷に閉ざされた世界を目指す普通の女の子の物語は、あくまでごく普通の日常から始まった。ただ、彼女たちの胸の奥には「このままでいたくない。新しい何かをしなけりゃいられない」そんな思いが煮えたぎっていた。そこに火をつけたのが、4人のヒロインたちの中の一人、小淵沢報瀬(しらせ)。南極観測隊員だった母親が現地で行方不明となり、母にもう一度会いたいとの一途の思いから南極渡航を画策。同じ高校の同級生、玉木マリたちも報瀬の思いに賛同し、行けるかどうかさえわからない南極への道を歩み出す。
まだ放送は2話を終えたところで、物語は南極へ行くためのつてと資金あつめに四苦八苦しているところ。最終的に昭和基地までたどり着くだろうことは想像できるが、目的のためならいかにも危なげな高額バイトすら辞さない彼女たちの姿勢は前向きで若者らしさが垣間見える一方、本当のところ、無事に行けるのか?とまったくもってあやふやなのが現状だ。いまはそんな、女子高生なら誰もがもっているであろう危うさが物語上の見どころといえる。このあたり、「ラブライブ!」などで若い女の子の揺れ動く気持ちを描くことに長けた花田十輝の脚本の妙味が冴え渡っている。そして、第2話で繰り広げられた新宿歌舞伎町大マラソン大会?の演出も実に心憎く、心地よい。
この先、彼女たちの冒険はどこへ走っていくのか、毎週が待ち遠しい作品だ。