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2人漫才が人間の本性を掘り起こす「少女終末旅行」

NHKの朝ドラでは時折、ごく少数の人数で制約の多いセットのなかでスペイーディーな会話がひたすら続いた挙句そのまま15分間の放送が終わってしまうというエピソードに出くわす。前回の作品「ひよっ子」では、ヒロインが住むアパートの一部屋で住人3〜5人だけによるこうした展開が何度かあった。こういった場合、演じ手にアドリブが求められることが少なくなく、スリリングな展開に見ている側は少人数という特殊性を忘れ真剣勝負の芝居の虜になってしまうものだ。

そんな少人数芝居を取り入れたアニメが「少女終末旅行」だ。戦争やら何やらで人類の大半がいなくなり拡張しすぎた文明の残骸ばかりが横たわる終末世界で、たった二人の少女(見た目16〜18歳か)がバイクと装甲車のあいのこと言うべき車両ケッテンクラートにのりあてもなさそうな旅を続けるという物語。

登場人物は、ケッテンクラートを運転するしっかり者のチトと、楽天家のユーリの2人。たまにゲストキャラが絡んでくることがある(8話まででカナザワとイシイの2人を確認)が、ほぼ主人公の2人だけで話が進む。と言うかたいして進まない。

戦争の後ということなのか、2人はともに軍服姿だが、特に何かと戦うわけでもなく(食料の取り合いであわやというシーンはあったが)、終末世界を背景にした日常アニメといった趣き。食料やその日の定住場所を求めてさまよいながら、道すがら出会う文明の足跡をめぐりちょっとした出来事がおこる、という繰り返しだ。

2人の会話劇は、ユーリがボケ役、チトがツッコミ役となって、他愛もない事象に漫才のような言葉のキャッチボールが繰り返されていく。2人が立つ背景には朽ち果てた大都会の町並みや痛々しい戦火の跡など凄惨な様子が広がるが、不思議なほどにそれらが愛おしくすら感じてしまうほど、二人の漫才劇は黙々と続いていく。そしてユーリが時折口ずさむ「ぜっつぼー、ぜつぼーぜつぼー」なる珍妙なソングがいつしか心地よいほどに耳から離れなくなる。第5話のエピソード「雨音」では、2人で雨宿りしていたオンボロの建物で、雨漏りで落ちてくる水滴にリズムを刻ませ美しいメロディを奏で、いつの間にかエンディング曲へ昇華させていく展開は、日常アニメを飛び越えて壮大なファンタジー作品にシフトしていくかのようだった。

戦争や災害があった跡でも、人は笑顔を絶やすことをやめようとはしないとよく言われる。そこにどれだけの不幸があったとしても、その後でも人は行き続け楽しさの追求をやめない。そんな人間の本性を、このアニメはたった2人というシンプルな芝居を通して示しているのだろう。そして、人間の本性を描いているからこそ、このアニメに私たちは深い理由もなく引き込まれていくに違いない。

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