思わず語りたくなる「アニメガタリズ」の引力
もう11月も下旬に差し掛かり、10月スタートの深夜アニメもそろそろ終盤のクライマックスに向けて準備段階に入っている頃。そんななかで、そろそろ今期の一押しアニメをいくつか、取り上げていいきたい。
まずは「アニメガタリズ」。ビデオ配信(特にエロ系)で名を馳せるDMMが立ち上げたアニメレーベルDMM Picturesが手がける第1弾オリジナルアニメだ。オタクっ気の欠片もないごく平凡な女の子がある日夢で見たロボット物やら魔法少女モノやら海外名作者やらがごっちゃ混ぜの謎のアニメ番組の正体を探ろうと、クラスメートとともにアニメ研究部を立ち上げて、いつの間にかアニオタ世界に引きずり込まれていく、というのが大まかな内容。
特段壮大な世界観があるでもなく、よくある日常系アニメの体を装いお気軽に見られる趣向だが、ネットやアニオタクラスタの間でしばしば語られる“アニメあるある”や謎めいたスラングが、登場人物たちの口から惜しげもなく次々と語られていく様子は、深夜アニメ依存症の視聴者にとってはまさに“オレたちの世界”。気がつけば次回がまちどうしくて仕方がない心境にもって行かれてしまう。
どこかで見たことのあるロボットアニメ風のメカや、どこかで聞いたことがあるアイドルアニメの決めゼリフなどが次々と語られ、そのセンスもアニオタたちの心をくすぐるエッジの聞いたものが多い。アニメ研究部の部員集めをしていたときの会話で、最後の一人としてやってきたイケメンちょっと残念系な男の子が「うちを入れて6人や」と口走ったときには、思わずコーヒーを吹いてしまったラブライバーが何人いたことだろう。
ほかにも、部員全員でコミケに参加する話(何故かコミケは実名NGなんですね)や、「ガールズアンドパンツァー」のお陰でアニメ好きの間では日本を代表する観光地になってしまった茨城県大洗へ聖地巡礼の旅行に出かける話など、アニメ好きのツボをついてくるエピソードが続く。≈
恋アニメファンからすれば「何を今更」というネタが目立つのも確かだが、そこそこ気軽に深夜アニメを楽しんでいる層をドン引きさせないギリギリの線を意識的に考慮している様子もうかがえる。一方でニコ生などでよく見る「エンディングで走るアニメは名作」などマニア心をくすぐるネタも随所に散りばめられている。見ているうちに「それについてはオレにも語らせろ」という気持ちにさせるバランス感覚は大いに評価されるべきだろう。
一方で番組開始に先駆けて中国のアニメイベントで積極PRをしたり、コミケの回で海外のファンと交流するシーンを入れ込んでくるなど、営業面での手堅さも好感が持てる。海外で今の日本アニメの文化がどうとらえられているのか、ちょっとした参考になるかもしれない。
もちろん、予算がそれほど十分ではないのか、画作りなどにあらさが目立つことも否めない。それでも、こうした新しい作風へのクリエーターたちの挑戦は温かい目で見守っていきたい。