もはや今年最高傑作確定、SHIROBAKO伝説は万策尽きない
まだ始まって2ヶ月も経っていない2015年だが、今年ナンバーワンのアニメは『SHIROBAKO』に決定した。この後何が来ようと決定事項だ。まだ最終回まで1ヶ月あるし水島努監督によるとその最終回の絵コンテが出来上がっていないそうだが(そこまでアニメの内容に沿わなくてもいいんですよ監督!)もう傑作になるに決まっている。そう確信させたのが19日放送の第19話だった。
大筋の内容はこう。放送まで1ヶ月近くに迫った『第三飛行少女隊』の第5話がグロス発注先のスタジオタイタニック(いかにも不穏な名前)の不手際で演出担当に逃げられ万策尽きるかと思われた宮森あおいの前に、武蔵野アニメーションを休職していた頼れる先輩・矢野が帰ってきた。矢野は旧知の仲だったらしい進行の平岡を同伴してタイタニックへヘルプとして入ることになり、“ヒゲ仙人”こと池谷ひろしに穴が開いた演出を依頼する。と、ここまでは頼れる矢野先輩大活躍の話なんだが、覚めた目で仕事をこなそうとする平岡に対し矢野は意味深な言葉を発する。
「たまにいるよね、何十年も熱が冷めずに夢を追いかけてる人って。私はそういう人が好き」
一方、宮森あおいは社長の丸川からある場所へ一緒に行ってくれるよう頼まれる。その場所とは、かつて丸川が在籍していた武蔵野動画の旧社屋だった。武蔵野動画は数年前に倒産し、武蔵野アニメーションが建物ごと引き取って倉庫として管理していたのだが、社屋の中はまるで昭和のアニメ現場にタイムスリップしたかのようなノスタルジックな空間だった。棚にはセル画が入ったカット袋の山やセル画を書くための絵の具がズラリ。袋の重さに驚くあおい。そうかつてアニメ制作は何かと重かったのだ。あおいはつぶやく。
「いま本当に面白いアニメって作れているんでしょうか?私の頭のなかにあるのは面白いアニメというよりも目の前のトラブルの事ばかり。じっくりとアニメを作れていたあの頃のほうが今よりも良かったんじゃないでしょうか」
丸川は言う。
「あの頃だってじっくりと作ってなかったよ」
そんなあおいがふと後ろを振り返ると、場面は70年代のアニメ『山ハリネズミ アンデスチャッキー』の制作現場に切り替わる。
コンピューターなどかけらもない時代、アニメの制作は紙と絵の具で背景を描き、手書き原画似せるに色を付けフィルムに撮影してという文字通りお手作りで行われていた。夜中であろうが仕事の手が止むことはなく、予想できない出来事の連続にも必死で対応しながら、それでも完成した時の作品をイメージし胸をワクワク踊らせながら白箱づくりに精を出していたのだった。制作デスクだった若き日の丸川、“3日伝説”の原画の杉江とその未來の奥さん(第12話に登場)、そして前回あおいが口説き落とした美術の大蔵と、今をときめく猛者たちが議論を戦わせつつ子供向けアニメにそれぞれの夢を求めていた。そんな彼らを一時癒してくれるのは、当時制作デスクだった丸川が作った鍋焼きうどんだった。コンビニなんて影も形もなかった時代、彼らはこうして心の隙間を埋めていたのだ。
画面に写ったのはそんな昔の一コマだったが、あおいは丸川から昔話を聞かされていたのだろう。一連の回想のあと自分のしている仕事の意味を改めた噛み締めたかの様子のあおいに丸川は帰り道のクルマの中でつぶやいた。
「ただがむしゃらにひたすら前に進んでいた。やりたいことをやり続けていた。そして気が付くとこの歳になっていた。それだけさ」
そして丸川は改めて問い直す。
「ねえ宮森さん、今は楽しいと思う?」
真顔になったあおいは言う。
「楽しいです!あの頃になんか負けませんから!あの頃に絶対負けないアニメを作ってみせますから!」
この一言で涙腺決壊だった。昔のアニメはたしかに面白かった。そしてそのDNAを受け継いだ今のアニメが面白くなくてなるものか!そんなメッセージが聞こえてくるようなエピソードではないか。最終回まで残り5話。もはや伝説の積重なりを見守るばかりだ。