円盤を買わずにいられない隙きのないスパイアクション「プリンセス・プリンシパル」という希望
3ヶ月毎に30本以上の新作が作られその質を競っている深夜アニメの世界だが、放送終了後に発売されるブルーレイやDVD、俗に言う“円盤”の売り上げが全般的に伸び悩んでいることが久しく問われている。これらの作品の中心的視聴層である10〜30代前半にとって、映像作品は円盤よりもサービス拡大の一途をたどるネット配信で手軽に見ることを選ぶ傾向が常識化しつつあるのだ。それでも、まだ収益性においては円盤の売上のほうが配信サービスより優位ということなのか、その売上向上のため大量のおまけ(サントラCDや特製冊子、円盤だけでしか見られないOVA、イベントチケット優先申し込み権などなど)を乗っけて販促活動にやっ気になっているのが現状だ。
だが、つまるところアニメの内容に見る価値があってこその円盤売り上げであり、配信サービスにおいても同様である。以下に買いたくなる、つまりは半永久的に所有して何度も繰り返して見る価値がある作品を作ることこそが、現代のアニメづくりにおける最大の正解である。
この正解に今期、最も近いといえるアニメ作品が「プリンセスプリンシパル」だ。いわゆる萌え系に近い、可愛らし女の子のキャラクターたちが、19世紀の架空のロンドンを部隊にスリルとサスペンスに満ちたスパイアクションを繰り広げるという意欲作だ。
監督は「ばらかもん」などを手掛けた橘正紀、シリーズ構成・メイン脚本は「ネギま!」などで知られるベテラン・大河内一楼、キャラクター原案は「ポッピンQ」の黒星紅白、音楽はアニメファンなら知らない者はいない梶浦由記。SF要素まで交えた細かい世界観や好きのない台詞回し、入念に描き込まれた背景美術、ジャズテイストを交えた爽快な音楽と、どこをとっても否の付け所なし。原作なしのオリジナルなため先が読めず、常にハラハラ・ドキドキを視聴者に強いていく。
最大のキモは、練り込まれたストーリー展開だ。1話25分の中身はスパイモノならではの伏線がこれでもかというくらいにばらまかれており、1度視聴しただけではすべての伏線を解読するのはまず不可能。必ず録画しておいて数度繰り返し見ないとなぜそうなったかが明確にわからないし、繰り返し見るたびにまた新たな謎と発見が浮かんでくる。スルメアニメとはよく言ったものだが、これこそが今のアニメに求められている仕掛けにほかならない。
しかも週ごとに放送されるエピソードは必ずしも時系列順になっておらず、シリーズ構成全体が大きなトラップになっているようにも思える。まだ第4話(なのになぜかCase 9だった)が放送されたばかりなのでこの先どう展開するかわからないが、女の子版ルパン三世の趣もあり、やりようによっては長く続くシリーズに持っていく方法もあるように思える。劇場版くらいは軽く作れそうな気がする(作るのはもちろん大変なのだが)。
このあと、ゲーム化が予定されているなど様々な展開がありそうな「プリプリ」、本作の成功は今後の深夜アニメに新たな流れを導いてくれる予感がする。