西武鉄道の秘密兵器は地下に潜ったまま「S-TRAIN」
2019年のダイヤ改正での明と暗
2019年3月16日
JR各社と大手私鉄はダイヤ改正を実施しました。
北海道新幹線では所要時間が短縮、上越新幹線には北陸新幹線で使われていたE7系新幹線が登場。
JR西日本では新快速の一部に有料座席サービス「Aシート」がスタート等などJR各社で大きな出来事がありました。
また私鉄では京王電鉄の京王ライナーに新宿方面(上り)が設定。
東武鉄道の東上線では無料の特急「川越特急」を設定、TJライナーは座席指定へ。
東京メトロ千代田線は北綾瀬駅が10両編成に対応。
そんな中、私鉄ダイヤ改正の中でもトップクラスの話題を持っていたのが、西武鉄道・新型特急の「Laview」の運転です。
Laviewは西武池袋線の秩父方面へ向かう特急、レッドアローに置き換わる新型特急電車。
池袋〜所沢の区間を所要時間最速19分で繋ぐことができます。
↑Wikipediaより
「いままでに見たことのない新しい車両」をコンセプトに、大きな窓や周辺の自然に溶け込むような銀色の車体。
車内は黄色の座席。レッドアローからのステップアップが凄すぎる。
初列車の切符が1分程度で完売したという注目ぶりです。
西武鉄道のホームページでも大々的に宣伝されており、力の入れようは段違い。
秩父に新しい人の流れを生み出そうと西武も力を入れているのがわかります。いつかは乗ってみたい列車です。
もちろんダイヤ改正は新しい特急が走るだけではなく、一部の列車が変更になっています。
その中でも長らくインターネット上で「空気輸送の美学」などと揶揄された列車、「S-TRAIN 豊洲行き」の列車が廃止となりました。
ダイヤ改正の前日、S-TRAINの上りに乗ってきましたのでご紹介します。
ダイヤ改正の疼き
ダイヤ改正前日の2019年3月15日。
その日、友人が住む所沢にいました。
昼の12時から4時近くまで所沢周辺でご飯を食べたり、買い物をしたり。
所沢駅構内では明日に迫った新型特急の運転に備えて特別展示もされていました。
私の家は東京方面。
通常ならば、所沢から池袋方面へ行きJRなり東京メトロなりに乗り換えます。
ただ帰宅する夕方4時、時刻表を検索すると出てきたのは「S-TRAIN 豊洲行き」でした。
S-TRAINとは、所謂、座席指定の有料列車。
平日は所沢〜有楽町線経由の豊洲間。
土休日は西武秩父〜副都心線経由〜東急東横線〜みなとみらい線の元町・中華街駅間で運転されています。
S-TRAINの発表があった際に伊豆・箱根で熾烈な争いをしてきた東急と西武がタッグを組むことに驚きを持って迎えられました。
それだけ日本の鉄道は座席指定列車の波が来ています。
関東では京王電鉄が初めて有料座席指定列車、京王ライナーを始めました。
またその波は関西にまで。
無料の特急が特徴でもある、京阪電車。
朝の時間帯などでライナーとして座席指定列車を運転しています。
西武鉄道にも座席指定列車はあります。
先程の「Laview」「レッドアロー」も特急として運行されており、指定席券が必要です。
ただ、S-TRAINは地下鉄直通で有ることが最大の特徴です。
地下鉄直通の特急列車として、小田急電鉄のロマンスカーがあります。
本数は少ないものの、北千住〜箱根湯本と観光地とターミナル駅を通っていきます。
また夕ラッシュ時間帯に入ると、ホームウェイとして運行され、観光列車の要素のみならず通勤ライナーとしての需要も拾っています。
ただ、長らくロマンスカーの後を追う特急列車は登場しませんでした。
その中でのS-TRAINの発表。かなりの期待感はあったはずです。
ユーザーにしろ西武鉄道側にしろ。
ただ、始まって数ヶ月を過ぎるとインターネット上では、
「ガラガラ」「回送列車レベル」「空気輸送」などと冷たい言葉が投げかけられました。
なぜみんな乗らないのか。
S-TRAINの路線図を見ていただければ分かる通り、有楽町線を経由し豊洲まで向かいます。
その間、池袋・飯田橋・市ヶ谷・永田町・有楽町・豊洲・新木場とターミナル駅や乗り換え駅が多くあるにもかかわらず、飯田橋・有楽町・豊洲までという不思議なチョイス。
そして運行されていた時間。
16時や17時といった夕方、20時から22時の夜に池袋方面に乗る人がどれだけいるのかということ。
どこの路線も同じですが、夜になると郊外へ帰る人はいるが、都市部へ行く人は少ないのが多く、西武線も当てはまります。
そしてそこからお金を払ってでも座りたいという人のパイをレッドアローと奪い合うこと。
また510円を払ってでも乗りたい電車であるのかという疑問。
S-TRAINの運用には西武40000系の車両が新規で製造されました。
ただこの車両は東武のTJライナー、京王の京王ライナーの車両と同じように通常の急行や準急の車両としても利用されています。
そこでプレミアム感が薄れ、レッドアローが1時間に1本走る中で、S-TRAINの魅力が減ったのではないかということ。
私はこの3つがS-TRAINの上りがガラガラの状態にしてしまったのではないかなと思っています。
じゃあ乗ってみないとわからないよね
ただバカにするのは簡単です。
乗ってみて実際に自分の目で見て感じて、皆さんに伝えることが大事です。
510円の列車指定券を遊んでいた西武球場前駅で購入して、所沢で乗車を待ちます。
16:18発、豊洲まで17:16と1時間近くの運転です。
切符には豊洲と書かれていますが、この日は飯田橋で降りました。
所沢の3番線で列車を待っていたところ、乗車位置に翌日から運行される「Laview」専用の乗車位置が貼られていました。
先頭は10号車です。写真を見ていただければ分かる通り、写真を取る人はいても乗ろうとしている人がいません。
列車種別は「S-TRAIN」です。
西武鉄道内では特急のちちぶ号より下、快速急行より上という立ち位置です。
早速乗り込みます。
ドア上部にあるディスプレイ(西武スマイルビジョン)は豊洲ゆきとなっています。
肝心の車内は、
発車2分前、西武新宿線の列車との接続が行われましたが、私の乗っていた1号車には誰も乗ってくることはありませんでした。
最初、回送列車ではないかと思えるぐらいでした。
所沢を出ると、次は保谷に停車します。
保谷?西武線に乗りなれていない人間からすればなぜそんな駅に?と思うもの。
Google検索でも「S-TRAIN 保谷 なぜ」と出てくるほど。
保谷では乗車専用駅ですので降りれません。石神井公園も同様です。
でも降りようと思えば簡単に降りれると思いますが...

快速急行が停車する石神井公園に停車するのはわかります。
快速急行も急行も停車しない保谷が選ばれたのでしょうか。
下記のニュース記事にはこう書かれています。
「2駅については、マーケティングや需要ボリューム、駅構造などから総合的に判断した」と西武はいう。
<中略>
保谷は2面3線。中線の2番ホームは、保谷止まり列車や同始発列車、優等列車待避などに使われている。
ただこれ、保谷でも石神井公園でも乗ってきませんでした。
マーケティング以前に上り列車は、ほぼ池袋方面に需要があるようで、池袋を通過するS-TRAINは少し需要を見極めることができていない印象です。
座席にはコンセントが付いています。またテーブルは無いもののドリンクホルダーが取り付けられています。
運行上、練馬駅で一度停車し、小竹向原で乗務員の交代があります。
なんならこの二駅も乗車駅にしたら良かったのに...
S-TRAIN 豊洲~所沢間の最大のポイントである池袋通過です。
写真ブレブレですね。
結果、飯田橋到着時で私以外で乗ってきた人はいませんでした。
また、隣の号車を見た限りでは二人の人だけ。
逆によく続けられてきたなと不思議に思うほどでした。
じゃあどうすればいいのさという
じゃあ、S-TRAINの上り列車はどうすれば成功したのだろうかということですが、池袋には停車するべきだったのではと思います。
石神井公園を出ると次は、問答無用で飯田橋です。その間の練馬、小竹向原、池袋は通過。
ホームで待っている人を目の前で猛スピードで抜けるのは大変爽快ではありましたが、運行する会社側にしたら乗りたい需要が目の前にあるのになぁと。
基本、有楽町線は各駅停車の列車です。
豊洲方面に幾らかはお金を払ってでも乗りたいという人がいたかもしれない。
また、S-TRAINの車両はリクライニングしません。
これで一部の人が「レッドアローでいいじゃん」となっていたかもしれない。
停車駅の見直しだけでなく、始発駅を飯能にしたらどうなっていたかという想像も生まれます。
飯能には5番線特急ホームが存在します。
これを利用しなかった理由はわかりませんが使っていたらどうだったでしょうと。
ただ、S-TRAINは朝の時間帯にも運行されています。
朝の時間帯は通勤需要をうまく拾っているようです。
ダイヤ改正でS-TRAIN上り列車は地下に埋もれたままですが、いつか西武鉄道の特急が地下鉄直通へという新しい展開もあったら面白いなぁと妄想にふけておしまいにします。