夜の中之島はもう一つの大阪
魅力的なところは歩いてすぐそこ
関東に住んでいる人間が、旅行なり仕事なりで大阪に行くとどこかやはり世界が違うなと思います。
標準語ではなく多くの人が関西弁を話し、コンビニのおでんは薄い出汁。
ビカビカと光るスーパーマーケット、梅田や難波は初見殺しの迷宮。囲うように設置されている阪神タイガースの広告、マルーン色の阪急...
関西のイメージを乱雑に並べてみました。
魅力的なところはたくさん。
大阪や京都、奈良、神戸など多くの観光地が近畿圏内にはあります。
ただ、私にとって大阪に行ってとても忘れることができない場所があります。そこは有名どころの観光地ではありません。
それは「夜の中之島」
中之島は地図で見るとターミナル駅が固まっている梅田とビジネス街の淀屋橋の中間に位置します。
堂島川と土佐堀川に挟まれる島です。
江戸時代、大阪は全国各地から物資が集まる「天下の台所」と呼ばれ、その中枢を担ったのが中之島でした。
昔からの商業の街・大阪の風景を覗くことができます。
誰もいない京阪中之島線・渡辺橋駅から
2泊3日、私は淀屋橋駅付近のビジネスホテルに旅行の拠点を構えていました。
淀屋橋は京阪電車に乗り込んで特急で1時間程度で京都の七条や出町柳まで、また地下鉄の御堂筋線で難波にも梅田にも行ける。移動の拠点として選んだのです。
3日間の主な内容は、
阪神電車に乗って甲子園で野球を見る。
京阪電車で京都で寺巡り。
そして中之島線を見てみたいということでした。
京阪中之島線は2008年10月開業の路線です
京阪本線の天満橋から飛び出るように線路は中之島へ伸びています。
なにわ橋、大江橋、渡辺橋、中之島の4駅。
中之島の発展を期待され開業。
ただ、開業当初から利用客数が伸び悩みます。運転本数や運行形態も変更されたり、ネット上では「いらない」「ガラガラ」「失敗」と揶揄する言葉が多く飛び交う残念な路線となっていたのです。
私は完全に興味本位で中之島に向かいました。あそこを見たい、訪れたいというポジティブな部分は一切なく、「本当に人はいないのかな」と茶化しの部分を含めて中之島に上陸しました。
梅田で夕食を食べ、四つ橋線で肥後橋駅まで乗り、そこから橋を渡って渡辺橋駅まで向かいました。
テレビで中川家の礼二さんがこう言っていました。
大江橋という駅があるんですけど、これものすごい近い。橋渡っただけなんです。これもう鉄道マニアどっか~ん
たしかにそうでした。5分ほどで到着します。
上記の写真の通り、夜の8時。
改札前でこんなに堂々と写真を取れたのは初めてです。
ここは地方都市の駅ではなく、大阪のビジネス街のど真ん中。
中之島方面は誰も立っていません。出町柳方面も自分がホームに降り立った5分後ぐらいでやっとサラリーマン二人組が来たぐらいでした。
夜の8時でこれだけの空間が生まれています。東京でこのような場所はあるのでしょうか。
大手町や永田町、渋谷、池袋などの人の多さを経験するとこんな駅が都市部にあるのかと驚きというか、感動に似た感情になります。
せっかくなので、電車に乗り込み隣の中之島駅へ。
ただ、ここ中之島は冷やかし半分で乗り込んだ私に、盛大なパンチを食らわしてきました。
出た瞬間に、おお。と言葉が口から溢れていました。
堂島川沿いにはスポーツ用品店やバーが並んでいます。
中之島線は駅間が短いため、ゆっくり歩いても10分掛からないか程度で隣の駅に到着してしまいます。
日本銀行大阪支店と大阪市中央公会堂といった歴史的建造物もここ中之島にはあります。照明で照らされると迫力は増大します。
iPhoneで撮影してもこれだけのビル群からの明かりが写ります。自分が写真を撮るのがうまくなったと錯覚を覚えるほど。
すぐ橋を渡ると多くの人でごった返す淀屋橋駅があるというのに、ここにはちらほらといるぐらい。綺麗で楽しいのに不思議です。
中之島線の低迷の原因は、接続路線が無い、繁華街もない、中之島の再開発が遅れているというのがあるそうです。
中之島線が大発展をする前に
大阪に限らずに、京都や東京、北海道といった場所には多くの観光客の方が来ています。見たいところにはぎゅうぎゅうの状態で歩いて少ししか見れない。どこか消化不良のままで後にすることが多い。
ここ中之島は夜8時なのに、まるでポッカリと開いたように静かな空間があるのです。
でも、この空間も長くは残らないようです。
中之島線は西九条駅までの延伸計画があります。
JR西日本の大阪環状線とユニバーサルスタジオジャパンへの乗り換え路線、ゆめ咲線。阪神電車も通っていて、なんば線で難波にも甲子園、神戸にも。
また、なにわ筋線という長らく梅田・中之島・難波を結ぶ路線も計画されており誕生すると中之島線は今のイメージを全てひっくり返す魅力的な路線に生まれ変わる可能性があります。
延伸計画の通りに中之島線が発展していくと、この場所もまた多くの人に共有される場になるでしょう。
多くの人が中之島を訪れ、賑わいを見せる。
発展は素晴らしい。でも、どこか嬉しい半面寂しい。
ゆっくりと公園を歩き、高速をひた走る車を眺めながら時間が流れるのを感じていく。
東京でもこういう場所はなかなかありません。
でも大阪の人たちからはこんなところで喜んじゃダメだよと言われてしまいそうです。
人と人、街と街、ビルとビルの間に生きるこの空間は私を悩ませていきます。