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GLAYと函館の幸せな関係
1988年に函館で結成、94年のメジャーデビュー以降、CDセールス、ライブ動員数などで数々の金字塔を打ち立て、音楽シーンをリードしつづけるGLAY。彼らはまた、故郷函館を愛し、創作意欲の源と公言することでも知られる。地元出身のバンドを誇りに思う函館市民と、函館愛にあふれるGLAYとの絆は堅固である。
GLAYが函館の人工島・緑の島で、のべ5万人を集めての凱旋野外ライブを実現させたのが2013年夏のこと。私自身は、東京から函館に移住して3年目で、函館市の公式観光情報サイトの仕事の一環として、この一大イベントに関する情報をインターネットで提供し、街の盛り上がりを全国に伝える任に当たることになった。
年代的にも少しはずれるし、函館でのGLAYの下積み時代もまったく知らなかった私に、この時の街の熱さは衝撃的だった。函館市とGLAYがまさにタッグを組んで、街がGLAY色に染まったのだ。
まず、函館駅や函館空港には大きな歓迎ボードが掲げられ、街角にフラッグがはためいてライブのテーマソングが流れる。市電には歓迎ポスターが貼り出され、写真入りの記念乗車券の販売も。コンビニのローソンは、スペシャルな装飾のGLAY LAWSONに変身。地元のFM局ではライブ当日、GLAY特番を終日放送し、翌日の地元紙の第一面はライブの写真で飾られた。
一方、市民のほうも、全国からやってくるGLAYER(ファン)を温かく見守り、時に案内を買って出ることも。ライブ中には、野外ステージのセットを遠目に眺めたり、風にのってくる曲や歓声に耳を傾けたり、クライマックスで上がる花火のプレゼントを楽しんだり。お祭りのような熱気が街にあふれていた。
以来、大規模な凱旋ライブは何度か実現し、そのたびに、官民挙げてのおもてなしで盛り上げている。それに対して、GLAYのメンバーから「僕らの大切なファンを、こんなに温かくもてなしてくれた函館のみんな、どうもありがとう!」という言葉を、ライブのMCで聞くことができた。函館とGLAY(とファンのかた)が、長い時間をかけて作り上げてきた絆を実感したできごとだ。
メンバーがアマチュア時代に演奏したライブスポット、学生時代をすごした思い出の場所や立ち寄った店、ミュージックビデオの撮影地などが「聖地」となり、全国のファンが訪れている。また、お気に入りとして紹介される店や商品などが注目を集め、ブレイクすることもある。
最近は、音楽制作の拠点の一部を函館に移して、ここでしか生まれない音について語られることも多い。「生まれた街への恩返し」という彼らの言葉どおり、函館の活性化のためにGLAYが果たしている役割は、計り知れないだろう。この幸せな関係は、函館の誇りといっても過言ではない。
(朝日新聞「北の文化」2022年3月3日掲載)
※画像は2018年撮影