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士業広告の社会的役割
深澤 諭史
弁護士
士業適正広告推進協議会 顧問
この記事は、2020年9月23日に公式サイトに掲載されたコラムを再掲したものです。
1.士業広告について
どんなによい商品,サービスであったとしても,それが消費者に知られることがないのであれば,消費者に届けられることはない。
また,消費者からすれば,必要とする商品やサービスがあるとしても,それを知ることができなければ手に入れることはできない。
この両者を結びつけるのが広告である。そして士業広告においても,そのような事情や役割は,全く異なるところはない。
しかし,士業広告は,次に述べるように他の広告とは異なる事情がある。そのことが,士業広告の社会的役割が大きいということを示すとともに,ともすれば,消費者に被害をもたらすリスクもあることも示している。
2.士業広告の社会的役割と弊害
弁護士や司法書士をはじめとする士業は,法律により名称の独占と,そして業務の独占を広範に認められている。その趣旨は,士業の業務に高い専門性があるが故に,能力的担保のない者がこれらの業務を行うことによる弊害回避にある。
これを逆方向からみれば,士業の業務というのは,本来的に専門性や公益性が高く,処理によっては消費者に容易に被害を与えるということもいえる。
専門性や公益性の高さに鑑みれば,士業のサービスを必要とする者に,スムーズにそれを届ける道筋をつけるということで,士業広告の役割は大きい。先に述べたように,消費者がサービスを知らなければ消費者の元に届けられることもないのであるから,ある意味,士業広告は士業の業務に匹敵する程度の重要性,公益性があるともいえる。
また,士業は社会のインフラとよくいわれる。そうだとすれば,士業広告はインフラと消費者を結びつけるものであるから,士業広告もまた,社会のインフラの一つであるといえるであろう。
一方で,士業広告には危険性もある。誤った情報を提供すれば,消費者に被害が生じることもあり得る。
特に士業は,専門性が高いというだけではなく,紛争であったり,あるいは重要な財産の処理など人生の重大イベントに関与することが多い。こういう重大イベントを前にして,特に消費者は,冷静な判断が難しくなることも多い。
専門性が高く市民による理解が難しいこともあること,一方で冷静な判断が難しいタイミングで依頼の決断を強いられること,こういう前提は士業広告が容易に「悪質化」する原因となりかねない。仮に士業広告が悪質,例えば騙したり誤導するような内容であったら,容易に消費者は被害に遭ってしまいかねない,ということになる。
3.士業広告のこれから
2で士業広告には社会的に重大な役割があると指摘した。
一部,「士業たるもの広告で依頼者を集めるのはけしからん」という考えもあったようである。
しかし,士業が,法律上の名称や業務の独占を認められている以上,社会に対して,自己の行う業務について情報を提供することは,半ば社会的使命であるといえよう。
また,かつて,ドラマ等のフィクションで「借金苦を原因に一家離散・自殺」などの表現多々見られたが,最近はあまり見られない描写である。もちろん,フィクションでも現実でも,そのような現象が皆無になったというわけではないが,耳にすることは確かに減った描写である。
これが減ったのは,弁護士や認定司法書士に相談をすれば,借金問題は解決出来る,そういう知識が市民の間に浸透したことも原因の一つであろう。そして,その浸透の立役者になったのは士業広告である。その意味で,士業広告は多くの家庭や人命を救ったともいえる。
そして,士業広告がその役割を果たす,すなわち適切に情報を伝えるためには,前提として市民に信用されることが必要である。信用してもらえるには適正であることが必要であり,それが客観的に消費者に示されることも必要である。