弁護士広告に関する最近の懲戒事例(アフィリエイト報酬)の紹介
八坂 玄功
弁護士
士業適正広告推進協議会 監事
1 最近の懲戒事例
弁護士業務広告としてアフィリエイトの手法を採用した事案について、最近の「自由と正義」(2024年5月号)に懲戒事例が公告されていたので概要を紹介します。
2 「自由と正義」(2024年5月号)懲戒公告の概要
T弁護士は弁護士法人Aの唯一の社員であるところ、弁護士法人Aと広告業務委託基本契約を締結したB株式会社を通してアフィリエイトサービスプロバイダに弁護士法人Aの広告出稿を依頼した。
当該アフィリエイトサービスプロバイダが広告掲載を依頼したアフィリエイターがインターネット上に作成した交通事故慰謝料請求に関する広告及び占い詐欺被害返金請求に関する広告には、弁護士法人Aの名称が目立つように記載され、その広告にリンクされた弁護士法人Aが運営するホームページ上の無料診断に誘導されるようになっていた。
広告を見て弁護士法人Aの相談ページに入って無料診断を受けた者につき、T弁護士は、上記各広告における報酬支払義務発生条件及び成果報酬の不発生条件を検討するなどし、成果報酬として、交通事故慰謝料請求に関する広告については1件当たり6500円、占い詐欺被害返金請求に関する広告については1件当たり5000円を支払った。
T弁護士の上記行為は、弁護士職務基本規程第13条第1項に違反し、弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
3 第一東京弁護士会懲戒委員会の判断
上記処分の理由の太字部分から、第一東京弁護士会懲戒委員会としては、アフィリエイターが作成した広告から誘導されて無料診断を受けた者のうち一定の条件を満たす者について、成果報酬として、1件あたり定額の金銭を支払うという態様のアフィリエイト広告について、弁護士法第13条第1項(弁護士は、依頼者の紹介を受けたことに対する謝礼その他の対価を支払ってはならない。)に抵触するものと判断することが明確になりました。
(もっとも、上記処分の理由の太字部分のうち「上記各広告における報酬支払義務発生条件及び成果報酬の不発生条件を検討するなどし、」という部分については具体的な態様がよくわからないことから、第一東京弁護士会に対して懲戒委員会の議決書そのものを開示してもらえないか問い合わせてみました。残念ながら、第一東京弁護士会の回答は、公開できるものは「自由と正義」に掲載されている公告文がすべてであり他は非公開であるとのことでした。)
前述のとおり公告文からは不明確なところがありますが、おそらく、無料診断を受けた者のうち、弁護士法人Aに依頼することになった者について報酬が発生するといった条件のもとで、1件当たり6500円とか1件あたり5000円の報酬が発生するという基準を設けて、それにしたがって弁護士法人が報酬を支払ったことが弁護士法第13条第1項が禁止する依頼者紹介の謝礼その他の対価に当たるものと判断されたものだと思われます。
4 広告事業者の注意点
広告事業者のみなさんにおいては、上記第一東京弁護士会が弁護士法第13条第1項に違反する旨判断するような態様のアフィリエイト報酬が発生する広告手法を採用しないよう注意することが必要です。
また、クライアントの弁護士からそのような報酬発生条件に基づくアフィリエイト広告の依頼を仮に受けても本懲戒事案が存在することなどを説明してそのような報酬発生条件に基づく依頼については回避するよう、注意することが必要です。
以上
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