クリアになれない微細な滞留
空気を裂く一瞬、
微細な音が耳元で踊る。
その音はクリアにはならない。
どこかで滞留し、絡み合う。
すべてが明確であるべき世界の中で、
曖昧なまま浮遊する粒子たちがいる。
知覚の狭間に現れては消える、
つかみきれない影。
触れることなく浮遊する微細な粒子、
それは見えざる風の中に漂い、
世界を覆う無限の層に
吸い込まれたかのようだ。
透明であるべきはずの存在が、
かすかな影を落とし、
視界の隅にかすかな翳りを残す。
クリアになれないもの、
曖昧に滞るものたちは、
その存在自体が問いかけを始める。
透き通った一滴の水、
その中に揺れる無数の可能性、
だが、明快さはついに訪れない。
言葉の網は粗すぎて、
真実は手元からすり抜けていく。
微細なるものは、
我々の存在と同じで、
無数の解釈を含んでいるのに、
どれ一つとして明確に
固定されることはない。
光が屈折するように、
思想もまた屈折し、
真理の輪郭はぼんやりと変わり続ける。
人間の意識は、
どこまでもクリアに至りたいと願うが、
その願望自体が滞留の一部である。
進むたびに後退する、
見えない壁が前に立ちはだかる。
私たちはこの滞留を避けることなく、
むしろその曖昧さの中に
自らを見出すべきだろう。
明確さに依存するのではなく、
その曖昧さを抱擁し、
無限の解釈を試みるとき、
ようやく新たな視座を得る。
光の屈折が、脳裏をかすめる。
彼方にある明解さに手を伸ばしても、
指先に触れるのは
ただの意味の解体と
再構築の繰り返し。
その微細な滞留は、
透明に見えるが、
名もなき感情や言葉が、
断片となって
心の奥に居座り続ける。
この滞留は私たちの存在そのもの。
完全な透明さを求めるほど、
逆にその曖昧さに囚われる。
明確な解答にたどり着こうとすると
思考の流れが絶えずねじれ、
自己矛盾に満ちた問いかけに変わる。
この微細なものたちは、
消えることなく漂い続ける。
その静かな囁きこそ、
私たちが見逃す「真理」の音として
分解しては再構成され、
また新たな曖昧さへと戻る。
世界は、クリアに見せかけた
無数の重層で成り立っている。
その中で私たちは、
ただ漂い、滞留する。
微細な粒子の行き先は、
揺らぎの中で永遠に迷う。
澄んだ鏡のような湖面を望むが、
そこに映る自分は、
常に僅かにズレ、
掴みきれない影。
思考の織り成す網は、
常に解けない糸のように絡まり続ける。
一つの結論に辿り着くたびに、
その背後に別の問いが忍び寄る。
透き通った一滴の水、
その中に揺れる無数の可能性、
だが、明快さはついに訪れない。
微細な滞留は、
存在そのものにしがみつき、
私たちを不確実性の海に留める。
何かを掴んだと感じる瞬間、
それはすでに指の間から
零れ落ちている。
真実の直前で立ち止まり、
問いかける。
微細な滞留に身を委ね、
答えのない問いの余韻に沈む。
クリアになれない、
それは終わりではなく、
始まりの兆し。