
線上に見える群衆の砂溜
時の河が運ぶ無数の砂粒たち
それぞれが物語を持ち、
夢を追い絡み合う運命の糸は、
見えない手に導かれ
この一瞬という岸辺に、
束の間の休息を求める。
空虚な街角で交差する視線
誰もが誰かの影を追いかけ
誰もが誰かの影から逃れる。
存在という重みを背負いながら
群衆は砂時計の中で舞い踊る。
上から下へと落ちていく粒々は
時間という幻想に身を委ね
個であることの孤独を癒やす。
線上に並ぶ無数の「私」たち
それぞれが光を放ち、影を落とす。
砂は流れ続け、形を変える。
群衆は溜まり、また散っていく。
人生という砂時計の中で
私たちは落ち続ける。
そして気付く
落ちることこそが、生きることだと。
無数の足音が、
一つの線上に溶け込む。
足跡は砂の粒となり、
無数の他者と混ざり合う。
群衆は一体であり、
しかしその一体は無限の個で成り立つ。
流れに身を任せる者も、
逆らう者も、皆、同じ砂溜にいる。
砂は風に舞い、時に形を変え、
時に姿を消す。
しかし、どの粒も独自の軌跡を描き、
消える瞬間に光を放つ。
線はただの幻影
無限と錯覚する地点に過ぎない。
線上を歩む者たちは、
自らの影を追いかけ、
過去の砂を踏みしめる。
だが、群衆は進み続ける。
足音は消え、砂の粒は新たな形を作り出す。
私たちはその一部、
線上に見える群衆、
その姿は掴みどころのない流れ。
それはただの砂溜、
風にさらされては消えゆくものであり、
同時に、永遠に刻まれる瞬間の連なりでもある。
広がる線は、無限の空虚へと
続くかのように錯覚させる。
だが、その線上に立つのは、無名の群衆。
彼らは粒子のように存在し、
集まり、そして散っていく。
砂溜に足を取られることなく、
ただ風に揺れ、時間に磨かれ、
己の形を失いながらも、
また別の形へと移り変わる。
名もなき砂粒たちは、
己の意味を問わず、ただ在り続ける。
言葉も声も消え、
ただその存在のみが重なり合い、
形なき形を描き出す、無限の模様。
彼らの動きは定まらず、
規則と混沌の狭間に揺らぐ。
同じ瞬間を共有しながらも、
視点は異なり、全ての粒子は
一度も同じ線上に立つことはない。
それは時の流れか、それとも意識の断片。
どちらでもなく、どちらでもある。
遥か彼方から流れ来る時の砂
無数の粒子が織りなす人の群れは
地平線という檻の中で踊る影絵。
スマートフォンの青白い光に照らされた顔
それぞれが持つ物語は、
風に舞う砂のように
互いを知らぬまま、すれ違い、
積もり刹那の輝きは、
都会の螺旋階段を
上り下りする足音のリズムとなって
虚無の底へと沈んでゆく。
誰もが求める確かな何かは
指の隙間からこぼれ落ちる砂のように
形を持たぬまま、消えてゆく。
だが、見上げれば 空は今日も青く
砂時計を優しく包み込む。
群衆は流れ、積もり 新たな砂の山となって
明日という風景を形作る。
無数の声が、線を描く。
遠くから見ると、それはひとつの形に見えるが、
近づけば、無数の粒――砂。
彼らは囁き、互いに溶け合い、姿を失い、
時折、風に乗り、飛ぶ。
個々は小さく、流れに従う。
だが、ふとした瞬間に、誰かが踏みしめ、
その瞬間に形が変わる。
砂溜の中で、いくつもの未来が生まれ、消え、
そしてまた新たに形を成す。
線上に見えるその群衆は、
遠くからはただの風景の一部。
個々の砂粒の運命が絡まり合い、
線は再び違う形を描く。
それは常に変わり続ける。
砂溜は静かに崩れ、
また新たな群衆が形を成す。
そして、それが再び、
誰かに踏みしめられるまで。
永遠に続く線上の旅。
その群衆は、ただ静かに存在し、
ただ、存在の痕跡を残し続ける。