見出し画像

これからの働き方を模索する人へ。社会・組織・人も幸せであることを目指す、キャリアオーナーシップとはたらくの未来

この激動の時代にわたしたちはどんなふうに働けばいいのでしょう?

「2030アジェンダ」のタイトルにも「Transforming our world」と掲げられてあるとおり、SDGsや問題に取り組む前提として、社会を “抜本的に変革していく” こと、産業だけでなく雇用のあり方も変革していくことがわたしたちに求められています。

2018年に日本で開催された社会的インパクトフォーラムでは「多様な自己実現のための経済のあり方」が語られ、

昨年末に経産省が各省庁と連携して出した「グリーン成長戦略」のなかでも「産業界には、これまでのビジネスモデルや戦略を根本的に変えていく必要がある企業が数多く存在」と記載。

いたるところで「経済のニューノーマル」「ポスト資本主義」についても語られ始めています。

世界の有識者が集う世界経済フォーラムでも、2021年の年次会議のテーマに「経済のグレートリセット」「タレンティズム(才能主義)」というキーワードが据えられ、

さらにブログのなかで「社会の進展が経済の発展に取り残されることのない、人間の尊厳と社会正義を中心とした、新しいソーシャル・コントラクト(社会契約)が必要」だとし、人間らしい働きがいのある且つ有意義な雇用の創出が゙緊急の課題だと語っています。


個人と組織の関係性のあり方を変革

このような流れがあるなかで、個人と組織の関係性のあり方を見直す動きが出てきています。みなさんは「キャリアオーナーシップ」という言葉をご存知でしょうか。

「キャリアオーナーシップ」とは、個人が仕事を通しどんな未来を実現したいのか、仕事において何を実現したいのかを主体的に考えることを指します。

この「キャリアオーナーシップ」は個人のウェルビーイング実現においても、組織が社会の変化に臨機応変に対応していけるようにするためにも、重要な考え方となってきます。

先日、このキャリアオーナーシップとはたらくの未来をパートナーシップを発揮しながら模索するコンソーシアムキャリアオーナーシップとはたらくの未来コンソーシアムが発足しました。

今回はこのコンソーシアムの運営事務局を務めるパーソルキャリア株式会社の村澤さんに、これまでの日本の雇用環境における問題とともに、コンソーシアムの目指すビジョンやミッションについてを伺いました。


コンソーシアム発足の経緯を教えていただけますか。

スクリーンショット 2021-05-28 18.58.23

このコンソーシアムでは、働き方と生き方が融合することを目指しています。そのなかで一人ひとりの可能性を高めていくことが必要だと考え、そこに向けて事業活動以外でできることを模索しているなかで出てきた取り組みがこのコンソーシアムでした。

コンソーシアムの名前にある「はたらく」は、あえて平仮名にしています。そこには「働く+生きる=はたらく」という意味をこめています。これまでの働き方は画一的でしたが、これからはそうではなくて、人の多様性に合わせて働き方も多様なものになっていくと思うんですね。

「はたらく」は「生きる」につながっているので、会社に入って決められているものに従うという受動的なものではなく、本来自分で決められたほうがいい。自分で「はたらく」を決めると、すべてのはたらく人の幸福につながるのではないか。このビジョンがもとになっています。


スクリーンショット 2021-05-31 21.26.15


出典/パーソル総合研究所

2030年になると、日本社会の労働人口は644万人ほど不足することが予測されています(出典/パーソル総合研究所)。人口が減るなかでいまの仕組みを維持するには、一人ひとりの生産性を上げていくことが日本における課題とも言えます。

一方で、コンソーシアム立ち上げの前にパーソルキャリアが独自調査した3,000名を対象にしたアンケートでは、自律的に働いている人は労働人口のわずか「5%」でした。非常に少ない。

この生産性が高いとは言えない現状があるなかで、「はたらく」のあり方自体のシフトが必要なのではないかという考えが、コンソーシアムを立ち上げた背景にあります。


そのほかに課題となっていることはどんなことが考えられますか?

2つありまして、1つは今後日本に限らずグローバルでも高齢化・長寿化していきますが、それに伴って働く期間が長くなります。それに加え、テクノロジーを含めたさまざまな変化のなかで、スキルの陳腐化というのもより一層激しくなることが予測できます。

そのなかで常にリカレント教育(生涯学習)が必要となってきて、働くと学ぶが並行し続ける。そこで特定の企業で通用するような個別のスキル経験だけではなくて、他の組織や業種、社会でも通用するようなポータブルなスキルの獲得が重要になってくるのだと思っています。

もう1つは、以前は「その組織で通用すればなんとかなる」というのが前提だったんですが、そうではなくなっていくということ。

人生においてはたらく期間は長くなっているのに、企業寿命が短くなっていって、転職の回数も多くなり、複数の組織ではたらくことが必要となるので、個人が適切なキャリアを考えて行動すること自体は、国内のみならず、グローバルでも必要なことなのではないかなと考えています。


それらを踏まえて個人と企業の関係性はどうなっていくのでしょうか?

スクリーンショット 2021-05-28 18.58.29

大きく3つの要素があると考えています。1つは「流動化」というキーワード。これまでの終身雇用や年功除列が崩れると、今まで固定化していた組織と個人はずっと一緒という前提が崩れ、流動化していくということ。

2つ目は「フラット化」というキーワードで、終身雇用で契約期間が長いと、どうしても企業の方が強い立場になって、上下関係ができて個人が従うようになるけれど、流動化して自由に選べるようになると、個人と組織はより相対性のあるフラットな関係性にパートナーシップのような形になっていくと思います。

3つ目は「多様化」。これまでの正社員の標準化した働き方から、時短勤務もあれば、副業契約もあれば、その人のはたらく状況やライフステージに応じて、個人と組織のつながり方が増えていくことが予測されます。

おそらくこの3つが日本の労働環境における根本的な変化になっていくと思います。ここで両者の課題としてあるのが、組織や企業側には、画一的な人事制度がまだあり、それをもとに管理をしようとしていて、変化や多様性に適用する土壌が整っていない現状があります。

個人の側にも、コロナもあって時短やリモートなど自由に働いている人もいますが、自分のキャリアや「はたらく」を組織や他人に委ねるのでなく、自分で決めていくというところにいたるまでには、まだまだ課題があるというふうに捉えています。

スクリーンショット 2021-05-28 18.58.35

そこで、コンソーシアムのミッションにつながるんですが、企業と個人の関係性のあり方を見つめたときに、キャリアオーナーシップがその交差点にあると考えています。

個人としてのはたらきがいも、企業の成長も同時に妥協することなく、キャリアオーナーシップで互いに成長しあう関係をつくることを目指していく。

コンソーシアムでは、キャリアオーナーシップの概念をアップデートしながらも、組織と個人がどういう関係性であるのがお互いにとって幸福なのか?というところを解決していきたいと思っています。コンソーシアムには、そこにご賛同いただいた複数の企業にご参加いただいています。


キャリアオーナーシップを発揮しキャリアをデザインしていくための具体的なアプローチについて教えていただけますか?

まず「会社人」ではなくて「社会人」になろうという呼びかけをしています。社会において自分がどんなことができるのかを考える。自分を主語、主人公にして考えましょうと。そこでどうやってデザインしていくのか、アプローチとしてはいくつかステップがあると思っています。

1つが「気づく・知る」。自分にどういう可能性やスキルがあるのか、改めて見直していくこと。さらに自分の内面的な可能性に気づくだけでなくて、外にあるチャンスや選択肢に気づくこと、そこへの支援が大事なことだと思っています。

2つ目には、それをどう選んでいくか「選択」であったり「意思決定」の支援が大事で、3つ目には、それを決めたあとに「行動」を後押ししていく支援、大きくわけるとこの3ステップが重要なことなのかなと思っています。

多くの人が新卒のときには自己分析や将来のビジョンを聞かれるので内省やリフレクションをするんですけど、それが会社に入ってから内省を続ける人はごくわずかだということを調査で気づかされたんですね。

最初は広い視野だったのが、いつの間にか狭い視野に徐々に狭まってしまうということが起きてしまっている。そういった理由から最初の「知る・気づく」のステップが大事だと思っています。


どこに評価軸を置くのか、どうやって企業価値につなげていくのかについては、どのようにお考えでしょう?


評価軸やKPIをどうしていくのかは、各社違いがあります。事務局のパーソルグループの話になりますが、自社ではミッション・バリュー指標を持っています。この基準に則ってミッションに貢献したかどうか、バリューを体現したかどうかが評価制度上に反映されます。

今までの評価基準を一気にゼロにするわけではなくて、それは残しつつも、管理型でなくより自律的に判断できるようにするために、ミッションとバリューをもとにした判断軸をもとにしながら個人が動けるかどうかで判断しています。


実現するにあたりどのような課題がありますか?


管理から自律に移行するのに、各社からは「信頼」の部分に課題があるという声を複数聞いています。

イコールパートナーだから社員を信頼して自由に選択していいよと言うんですけど、とはいえ大きい会社になればなるほど、例えば、大事なデータを扱っていたり、漏洩事故による被害リスクも大きい。

管理体制だとそのあたりはリスク回避しやすかったりするのですが、基本はできるだけ管理を外し、社員を信頼しながら自律的に任せるってことをしたほうがいい。会社のリスクマネジメントとして、何をどこが最低限管理しないといけないのかなど、まだ過渡期の企業も多いので、そこが今悩んでいるところです。


SDGsでもまずは共通認識・共通言語をつくっていくことに取り組まれていますが、その点はどのような方法を考えていますか?


スクリーンショット 2021-05-28 18.58.43

3つの柱を考えています。1つは「研究会」。理想的なビジョンにいくのに現状何が問題なのかというところで、各社いろいろなことを試しているところです。

そこをつまびらかにオープンにして、うまくいっている部分とそうでない課題の部分を話し合い、課題が出た場合、研修や人事制度でどう変えていけばいいのかをコンソーシアムで取り組んでいきます。

それを一社でやろうとすると、難しかったり動きが遅かったりするので、コンソーシアムのメンバーの各社で、まずはライトに「実証実験」していくというのをやろうとしています。これが2つ目。

そのなかで課題への打ち手が見えて、いけそうだ、うまくいかなそうというところは、世の中にとって参考になるように「社会発信」していくことをやっていく。

これらを並行しながら、コンソーシアムで回していきたいと思っています。いまで言うとまだ研究会のところで、なんとなく課題が出てきているところ。今後はさらに深堀りしていきながら、夏以降に実際にアクションを試していこうと思っています。


ここではどんな成果や効果を期待していますか?

いまは、個人と企業の新しい関係性を築くことをサポートする仕組みやサービスが少ない黎明期だと思っていますので、そこに関するモデルをこのコンソーシアムで1つアウトプットしていけたらいいなと思っています。

あとは機密情報を守ったうえでですが、新しい発想や企業間のつながりがうまれて、そこから別のかたちのオープンイノベーションが生まれていくことも期待しています。

例えば「副業」っていまは「個人がやりたいからそれを会社が支援する、でもルールや時間は守ってね」という範囲の中で、企業が許可しているような形になっていますが、個人や組織にとってもより幸せな発展の仕方はあるんだろうなと考えていますね。

参加企業のなかには、副業で100人ほど受け入れをやっているところやグループ会社間での交流を行っているところがあります。その先にグループ内でなくグループ外のところで交流できる何かをやるのは、組織と個人双方にとってメリットになるとは思っています。

そこから企業の協働を促進していく役を担っていくような人が生まれたらいいですね。


最後に、2030年や2050年のはたらき方の理想像を教えていただけますか?


わたし自身も副業を3つしたり、いろいろな活動をしながらいまの仕事をしているんですが、1つの組織に属するというよりは、必要なプロジェクト単位だとかタスク単位で組織と個人の関係性が結ぶことができるというようなものでしょうか。

そのときに上下のいびつな指示系統ではなくて、なるべくフェアな関係性のなかでフラットにできるようになっていけばいいのかなと思っています。

たとえばプロスポーツのようなイメージ。選手とスポンサー企業、お互いがプロフェッショナル性を高めてちゃんと活躍していく。そこには「自分軸を持つこと」と「社会で求められているスキル・経験」があることが必要になってきます。

セーフティネットをどこまで設けるのかというのはあるんですが、自律した個人としてのプロフェッショナル性があったうえで、プロジェクト単位で契約を結んでいる社会が実現していることが、コンソーシアムの実現したい社会のありたい姿になってくるのかなと思います。



あなたは"はたらく"をどうデザインする?


画像7


国連では「Accelerate(加速)」がキーワードとなり、SDGsへの取り組みが急がれています。

問題の根本解決に向けて、これまでの  "課題ありきのビジネス" や "売上をつくるためのビジネス" を見直し、“持続可能な社会実現のための取り組みでどう売上をつくるか” に取り組むこと

持続可能である社会像を想像し、課題解決のためのプロジェクト創出と、その先にある持続可能な社会の一部としてのビジネスの実現、真の意味での “サステナブルビジネス” が求められています。

これらを実現するためには、身軽な組織体制に整えることだけでなく、個人の意識変革が必須だと言えます。

組織依存の個人意識を変革するともに、人類が存続できる持続可能な社会像を捉えた上で経済やビジネスをデザインしていく、高い・広い・長期的な視点が必要です。これは、アジェンダに記載がある「グローバルシティズンシップ」の視座とも言えます。

地球市民としての意識に立ったとき、そしてあなた軸ではたらくをデザインしていくとなったとき、あなたや社会の幸せ実現のために、あなたは自分の「はたらく」をどうデザインしていきますか?



スクリーンショット 2021-05-31 21.31.22

村澤 典知 さん キャリアオーナーシップとはたらく未来コンソーシアム 事務局長

パーソルキャリア株式会社 執行役員 経営戦略本部 本部長
一橋大学経済学部卒/伊藤邦雄ゼミ。新卒でトヨタ自動車に入社し、グローバル調達本部にて部品メーカーの経営改善などに従事。その後、A.T.カーニーなどで経営コンサルタントとして経営戦略や新規事業、マーケティングのプロジェクトに従事。2018年にパーソルキャリアに入社。CMOやCPOなどを経て、現在は経営戦略や新規事業(はたらく未来図構想)、ミッション推進などの責任者などを担当。
2021年、本コンソーシアム発足とともに運営事務局企業の代表として事務局長に就任。
https://co-consortium.persol-career.co.jp/


いいなと思ったら応援しよう!