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長野県が取り組むSDGs推進のための企業登録制度、その効果は?


いま日本全国でじわじわと広まりつつある「SDGs 認証制度」

これは内閣府が取り組む、持続可能な社会の実現に向けた経済の自律的好循環を形成するための施策の一つにも掲げられています。具体的には以下の3つ。

① 民間企業や金融機関などの関係者と連携し地域事業者等を対象にした登録・認証制度の展開 
② 地域金融機関等への表彰制度の設置 
③ さまざまな関係者とともに事業の取り組みに対する評価手法の構築

前回の記事では、横浜市の取り組み「Y-SDGs」企業認証制度をご紹介しましたが、今回は先駆けて取り組んできた長野県の企業登録制度についてをインタビュー。

長野県庁でSDGs の取り組みを推進する、産業労働部 産業政策課 企画担当主事/岩瀬 明日香さん と 主査/湯本 茂樹さん に、登録制度が誕生した背景、具体的なお取り組み、今後の展開について伺いました!


登録制度が生まれた背景について教えてください!

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湯本さん: 今日、社会環境の変化が激しくなっていること、価値観が多様化していることなどがありますが、そのなかで我々行政も、新しい社会の仕組みづくりが重要と考え、2018年に長野県の最上位計画である「しあわせ信州創造プラン2.0」のなかにSDGs の考え方を組み込みました。

国際社会でもESG投資の拡大など、企業の社会的な意義が増大してきていること、SDGs の言葉が世界の共通理念や共通言語として認識されてきている一方で、当時「そもそもSDGsって何?」「何から取り組めばいいの?」という声が多くあったことから、地域企業がSDGs に取り組める仕組みとして2019年に登録制度を立ち上げました。

企業も事業継続や国際協力に参加していくためには、SDGs に取り組むことが必須となってきています。例えば、基幹産業である製造業、長野県の豊かな自然を生かした農業や観光業、これらの長野県ならではの強みを見出していくという考え方のもと、この制度を通してビジネスモデルの転換を促したり、意識変革をする必要があるだろうと制度に取り組んでいます。

企業さんにはSDGs にある環境・社会・経済の三側面の調和にしっかり取り組んでいただき、人材確保やブランディング、リスク管理やステークホルダーとの連携・拡大、そういったところにつなげていってもらいたいと思っています。


制度設計のプロセスについてを教えてください!

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出典/長野県SDGs推進企業情報サイト

湯本さん: 長野県は全国に先駆けて「誰ひとり取り残さない持続可能な社会」というSDGs の基本理念を取り入れて、内閣府からSDGs 未来都市に選定いただきました。

パートナーシップで課題を解決していくという基本的な考え方のなかでコンソーシアムをつくり、関東経産局・経済団体・金融機関等と協力しながら地域企業にも浸透する支援制度をつくっていこうと1年くらい検討をしてきました。


岩瀬さん: 申請様式については、実際に県内企業のみなさんの意見やこれからを担う学生さんの意見も聞きながらつくっています。

また、2030年に向けた目標なので、足下だけの取り組みだけにならないようにも意識したものになっています。どんなものに取り組んでいくのかセルフチェックシートに記載してから宣言をするかたちになっているのですが、いくつかチャレンジ項目をつくっています。

自分たちがいつもやっていることにプラスして取り組めそうなことをあえて入れることで、この登録から新しい気づきを促して、ステップアップしてチャレンジしていって欲しいなという思いを込めています。


湯本さん: 制度は、1年ごとに進捗を報告していただくものにしています。また、制度自体も3年の更新制にしていますので、達成に向けて定期的に意識や意思を確認していけるよう、その場で終わらせないよう工夫しました。


制度をはじめて効果をどのように感じていますか?

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湯本さん: 4月末現在で796社にご登録いただいていて、県内10万社あるなかで1%に満たないところではありますが、着実に増えてきていて、機運が醸成してきていると感じています。

企業向けのセミナーやワークショップも展開して、ここからさらに意識を高める企業さんも増えてきています。また、ポータルサイトを昨年立ち上げてから月に1万件の閲覧があって、思ったより多くの関心を寄せていただいているのではと思っています。

サイトには、企業さん同士の交流を促す機能やマッチング機能を搭載していますので、これを活用して情報交換や個別の取り組み等に活用していただいたりしています。ここからSDGs を軸にしたネットワークづくりが少しずつできてきているのではと思っています。

具体的な取り組みでは、県内にあるワイシャツ業者さんがリサイクルした繊維でシャツをつくったり、襟の芯をプラスチックから紙に変更したりなどの取り組みも出てきています。

他にも、デザイン学校が県立美術館のリニューアルオープンに合わせてSDGs 展を開催していました。ここで企業さんが応援や協賛として関わっていて、制度を通して少しずつ県内のつながりや共感が生まれています


登録している企業の反応はどうでしょう?

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湯本さん: 登録の際にアンケート調査をしているのですが、自社活動のなかでやっていることとSDGs の紐付けのところで「SDGs の関わりを整理できた」との声や「社員への理解が深まった」との声もいただきました。

一方で「手続きが難しい」という声もいただいて、それに対しては新規登録のサポート窓口を設置して、一歩を踏み出すためのサポートに取り組んでいます。

なかにはSDGs の社内浸透にお悩みがあるというのも聞きますので、いい取り組みをわかりやすくお届けし自分のものにしてもらって、自らやる気スイッチを押してもらうことが県としての役割だと思っています。


岩瀬さん: 実際に企業の方から、採用面接のときに「御社はSDGs に対してどのように取り組まれていますか?」と学生に聞かれ、「登録制度に登録していたおかげで、宣言や取り組みを話せてよかった」との声もありました。

他にも、大手取引先から SDGs に対応するよう要望があった企業さんからは、「登録制度でSDGsのことを学んでいたので、要望に答えることができた」とおっしゃっていただきました。


課題としてあげられることはありますか?


湯本さん: 今は裾野を広げていく段階ですが、企業さんによって取り組みの進捗も全然違います。レベルにあった取り組みを支援していくことかなと思っています。


長野県内の住民全員に伝えるための工夫や課題は?

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岩瀬さん: 県民や事業者さんや学校さんが参加することができる信州SDGs ひろばというサイトを立ち上げています。

今まではSDGs に取り組むみなさんがイベント等の広報をする際には、自分たちの限られたつながりのなかでしか広報できなかったと思うのですが、このサイトで告知ができるようになって、SDGs の取り組み発信の強化になっているのではと思います。

あとは登録企業さんが登録制度オリジナルマークを名刺に入れたり、HPで広報してくださったり、地元金融機関さんが「長野県の登録制度は良い取り組みなんですよ」と紹介してくれたり、口コミで広がっているところもあります。みなさんと一緒になって進めているからこそ広がっているのだと思います。


湯本さん: 事業所を新設する企業への助成金では、SDGs 推進企業への登録を要件に入れています。また、県の入札制度の参加資格要件の加点になる仕組みも検討中ですので、これらもPRしながら後押しをしていきたいと思っています。


今後の展望について教えてください!

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岩瀬さん: 制度はあくまできっかけづくり。県としてはSDGs を本気で捉えてほしいとの気持ちがあるので、意義を理解した上で取り組んでいただけるような工夫はしていきたいと考えています。

補助事業の成果発表会の場では、企業さんから企業さん向けに「こういうところが大事」「こういう意義がある」という生の声も発信していただいています。SDGs ウォッシュが言われているところではありますが、ゴールのタグ付けで終わるのではなく、より深く考える場も提供しながらレベルアップを図っていきたいです。


湯本さん: セミナーやワークショップをやっていくなかで、企業さんの共同事業をこちらから促していけたらと考えていまして、それぞれのレベル感に合った取り組みの提案はしていきたいと考えています。

まだまだ県全体での共有までには至っていないので、トップランナーの企業さんの取り組み事例をもとに学んでいただき、自分ごととして捉えていただける情報発信だったり、伴走支援ができたらいいなと思いますし、無理してやることではなくて、みんなでやれば大きな動きになっていくものだと思うので、それを意識しながらやっていきたいです。


岩瀬さん: これまでの取り組みは、ご参加いただいているみなさんのおかげで盛り上がってきたものなので、県はパートナーシップをつくりながら、良い制度にしていくことが大事だと思います。トップランナーとして他の地域のみなさんのヒントとなるものを示していけたらと思います。


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◇ 岩瀬 明日香(いわせ あすか)さん
長野県産業労働部 産業政策課 主事

長野県上田市生まれ。
2016年にUターン就職で長野県庁に入庁し、県民文化部高等教育振興課で県内大学・短期大学のPR業務を担当。その後、長野県と包括連携協定を結んでいるソフトバンク株式会社CSR統括部において1年間研修派遣を経験し、企業としての社会貢献のあり方を学ぶ。2020年から現所属でSDGs 推進企業登録制度を担当し、現在2年目。企業からの声を聴きつつ、よりよい制度にするため日々奮闘中。

◇ 湯本 茂樹 (ゆもと しげき)さん
長野県産業労働部 産業政策課 主査

長野県中野市生まれ。厚生労働省、東京都足立区での勤務を経て、2013年に長野県庁に入庁。健康福祉部では難病、生活習慣病対策を担当し、県民の健康増進に従事。長野県坂城町への研修派遣ではふるさと納税や移住支援等を担当したほか、観光部で観光業の人材育成やビジネス改革を担当。2021年4月から現所属でSDGs 推進企業登録制度を担当。制度の普及に取り組みながら、自身もSDGs を猛勉強中。



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