【声劇】百合舞うところ〜怪異前世譚〜(3人用)
利用規約:https://note.com/actors_off/n/n759c2c3b1f08
♂:♀=2:1
約30分~40分
上演の際は作者名とリンクの記載をお願いします。
【登場人物】
絹代♀:動きが大げさで、踊っている様にも見えるな女の子。
良彦♂:土地持ちの若い男性。
医者♂:良彦が絹代親子に紹介した医者。※良彦と兼任。
父親♂:絹代の父親。 病に伏せている年老いた父親。
立花♂:横柄な男性。 良彦の知人? ※父親と兼任。
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【配役兼任表】
絹代♀
良彦♂:医者
父親♂:立花
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絹代:「(扉を開ける)
おっとう、ただいま帰ったよ♪
良彦様がお暇をくださったの♪
……おっとう?」
*******************
良彦:「戻った」
絹代:「おかえりなさいませ♪」
良彦:「うむ。
何か、変わりは無かったか」
絹代:「あぁ〜えっと、タチバナ……様? という方がいらっしゃいまして、『来たと伝えろ』と」
良彦:「立花……あぁ、来たのか。
それで?」
絹代:「それで?
えっと『今の舞はなんだ』って聞かれまして、舞ってるつもりは無いって言ったらお怒りになられて……それで私の名前を聞かれたので──」
良彦:「──ん? 名を聞かれたのか?」
絹代:「えっ、あ、はい」
良彦:「そうか、聞かれたか……」
絹代:「……? 良彦様、私は何かいけない事をしてしまいましたか?」
良彦:「いや、何も無い。それよりも──
絹代、庭の掃除はもう良い。私の部屋に来なさい」
絹代:「あ、はい」
********************
絹代:「(鼻歌を歌いながら、洗濯物を干す)」
良彦:「精が出るな、絹代」
絹代:「あっ良彦様!
おはようございます♪」
良彦:「あぁ、おはよう。
お前はいつも楽しそうだな」
絹代:「はい♪
良彦様に奉公へ迎えて頂き、私は毎日が幸せです♪
あっ……それで、あの──」
良彦:「父君の様子か?」
絹代:「あっ、はい……」
良彦:「案ずるな。
昨日は医者が用意した薬を飲んで、粥をおかわりして食べたらしい」
絹代:「そうですか! 良かった……
良彦様には本当になんとお礼を申し上げれば良いか、感謝の言葉もありません。
本当にありがとうござ──」
良彦:「──良い良い!
絹代に来て貰って、私も感謝しているのだ。
これは、お前を奉公に迎える上での、父君との約束でもある。
持ちつ持たれつ」
絹代:「それにしましても──ありがとうございます!」
良彦:「良いと言うのに……
お前にはそんな堅っ苦しい言葉は似合わん」
絹代:「えぇ〜……少しでも良彦様のお役に立てたらと、色々お勉強しているのに」
良彦:「はっはっはっ!
私は、いつも無邪気に過ごしているお前だからこの家に迎えたのだ。
そうお前が『私の為だ』等と気負う必要はない。
それよりも──洗濯の途中だったのだろ? 続けてくれ (座る)」
絹代:「はい♪
──あっ、えっと……どうして腰を下ろしているんですか?
あさげの用意は既に出来ておりますので、冷める前に──」
良彦:「ふふふっ。
そんなモノ、後で良い。
また子鹿の様に楽しげに舞いながら洗濯物を干すのだろう。
私はそれを眺めるだけだ。気にせず、続けてくれ」
絹代:「子鹿!? 私がですか?」
良彦:「他に誰がいる。
お前は子鹿が跳ね回る様に、軽やかで楽しそうに舞いながら奉公する。それを見るのが私の楽しみなのだ。
ほらっ、続けてくれ」
絹代:「ん〜子鹿……にひひ♪ 可愛いですね♪
かしこまりました! では今日は二割増で舞わせて頂きますね♪」
良彦:「あぁ」
絹代:「(鼻歌を歌いながら、洗濯物を干す)」
********************
医者:「ご加減は、如何ですかな?」
父親:「ん……あぁ、お医者様……
わざわざ、申し訳ありません (咳き込む)」
医者:「いやいやそのままで結構。
しばし失礼致しますよ (部屋に上がる)。
今日の分のお薬を持って参りました」
父親:「ありがとうございます」
医者:「どこか痛い所などはございますか?」
父親:「いえ、今は大丈夫なのですが……
お医者様から頂いた薬を飲むと、急激な眠気が襲って参りまして──夜、目を覚ましますと、身体の節々が少々……」
医者:「なるほど。
それは、睡眠薬を少量程混ぜておるからですな」
父親:「睡眠薬でございますか?」
医者:「病を治すには、十分な睡眠が必要となります。
節々が痛むのは、身体の中で薬と病が戦っている証拠。
薬が効いている証拠でありますな」
父親:「あぁ、左様でございますか」
医者:「えぇ。
では今日の分の薬を──大丈夫ですか? 飲めますか?」
父親:「ありがとうございます。
(薬を飲む)
ふぅ……
娘は……」
医者:「はい?」
父親:「娘は、しっかりとやっておりますか?」
医者:「えぇ、旦那様からは『頑張り屋で、素直な娘さんだ』と、伺っております」
父親:「左様でございますか……
あの子には苦労をかけました……
妻は、絹代を産んですぐ逝ってしまい……父親である私が、アイツの形見でもある大切な娘を、必ず守ると誓ったというのに……
なんとも情けない」
医者:「何を仰いますか。
娘さんはご立派にお育ちになられました。
だからこそ、旦那様が娘さんをお選びになられたのでは無いですか。
これからも娘さんは、旦那様のお役に立たれる。
父親として胸を張ってくださいな」
父親:「っ……そう、ですか……
良彦様の……お役に……
よかっ……た…… (眠る)」
医者:「えぇ。
今は、ゆっくりとお休みください」
*******************
良彦:「娘、名はなんと申す」
絹代:「は、はい! あぁ〜えっと、その……」
良彦:「自分の名すら言えないのか?」
絹代:「あっ、いえ! き、絹代と申すでゴワス!」
良彦:「ゴワス?」
父親:「申し訳ございません。
娘は緊張している様で── (咳き込む)」
良彦:「緊張、か……はっはっはっはっ!
それもそうか! それならば仕方ない!!」
絹代:「ご、ごめんなさ──あっ、すみません」
良彦:「良い! 急に訪ねたこちらにも非がある!」
父親:「あの、それで今日は、どの様な御用で……」
良彦:「あぁ──
ここから半里先の畑で舞っていたのは、お前だな?」
絹代:「っ……は、はい……」
良彦:「どうして舞っていた?」
絹代:「っ……それは──」
父親:「──申し訳ございません!」
良彦:「ん?」
父親:「私は身体が弱く、最近は畑の仕事を娘の絹代に任せておりまして!
絹代は父に心配かけまいと、何をするにも身体を大きく使って元気に振る舞う癖がついておりまして、それが舞っている様に見えたのだと──
貴方様に何かご迷惑をおかけしたのでしたら、それは父親である私の責任でございます!
申し訳ございま── (咳き込む)」
絹代:「おっとう、大丈夫!?」
良彦:「落ち着きなさい。
私は何もお前達を咎めようと、ここに赴いた訳ではない」
父親:「はぃ……」
良彦:「身体を大きく使って、元気に振る舞うか……なるほど、面白い。
失礼ながら、お前達の事を少しだけ調べさせて貰った」
父親:「はぁ……」
良彦:「奥方は娘を産むと同時に死別。
その後、借りた畑ひとつで何とか食い繋ぎ、その娘を父一人で育てた……
身体を壊したのも、その心労がたたっての事であろう」
父親:「(咳き込む) ……情けのうございます」
絹代:「おっとう……」
良彦:「他に身寄りも無く、たった二人の家族──相違無いか?」
父親:「……はい、間違いございません……
あの、それが何か?」
良彦:「あぁ──絹代と言ったか」
絹代:「っ──は、はい!」
良彦:「私の元に奉公に来なさい」
絹代:「え!?」
良彦:「畑で見た舞いが実に気に入った。
それも、ただ舞うだけでは無く、畑仕事をこなす姿が舞っている様に見えると言うではないか。
実に面白い──」
絹代:「──し、しかし私がいないと、身体の弱いおっとうが一人になってしまいます!
そ、そうなったら──」
良彦:「ただ『奉公に来い』と言う訳ではない。
父君には、日々の食事と、そして医者を用意する」
父親:「は……なんと?」
良彦:「日に日に弱り行く父を、まだ若い娘一人に背負わせる。
薬を買う余裕など無かろう。
私の知人に良い医者がおる。
それで如何か?」
父親:「ど、どうしてそこまで……」
良彦:「ん? 先程申した通り、その娘──絹代の舞が気に入った。
どうだ? これでは不服か?」
絹代:「……おっとうは……治るんですか?」
良彦:「私は医者では無い。故に私には分からんが、これまでと同様の暮らしを続ければ、病状は間違いなく悪化するだろう」
絹代:「……」
父親:「私の事はどうでも良い……
絹代には苦労をかけて参りました。
父に母親の代わりなど努まるはずもなく──生きていく為とはいえ、幼い頃より畑仕事ばかり……
遂には守ってやるべき父親の私も身体を壊し……」
良彦:「うむ……」
父親:「娘を! 絹代を──
どうか……どうか! よろしくお願い致します!!」
絹代:「おっとう……」
*************
(絹代、庭掃除中)
立花:「そこの娘!」
絹代:「……?」
立花:「お前だ」
絹代:「あっ、は、はい! なんでしょう!!」
立花:「主人はおるか?」
絹代:「えっあ、あぁ〜……」
立花:「居るのか居らぬのか!」
絹代:「あっ、い、今出かけておりまして──そ、そのっ、夕刻までには戻られるかと!」
立花:「だったら早く言え!!」
絹代:「すみませ──申し訳ありません!」
立花:「(舌打ち)
……先程の舞はなんだ?」
絹代:「へ? えっと……
舞っているつもりは無いのですが……その……」
立花:「この俺を謀ろうと言うのか! 舞っておっただろう!!」
絹代:「い、いえ! あの、私は何をやるにも動きが大きくなってしまい、そ、それで舞っている様に見えてしまい──」
立花:「動きが大きく? ふんっ滑稽な……」
絹代:「こっけい……?」
立花:「(舌打ち)
……娘、名は何と言う」
絹代:「へっ? あっ、絹代と申します」
立花:「絹代……
(舌打ち) 主人が帰ったら『立花が来た』と伝えろ」
絹代:「あ、はい。分かりました!!」
立花:「ふんっ……」
********************
絹代:「(クワを振り下ろす)
よっとせっ! さっとせ!!
ふぅ〜っ、おっとう! こんな感じ?」
父親:「上手い上手い!
そうだなぁ……もっと腰を落とし、腕じゃあなく、足と腰で──
ヨッと!! ハッと!! ホッと!!
こうすると、もっと捗る!」
絹代:「うわぁ凄い♪
えっと、腰を落として、足と腰に力を──よっ♪ はっ♪ ほぉぉ〜♪」
父親:「はっはっはっ!! なんだその動きは!! 盆踊りをしているみたいじゃないか!! はっはっはっはっ!!!」
絹代:「へ? 盆踊りなんてやってないよぉ!!
よっ♪ とっ♪ はっ♪」
父親:「いいぞいいぞ!
私も──ほっ♪ とっ♪ せぃっ♪」
絹代:「ははははっ!! おかしい動き!!」
父親:「はっはっはっはっ!!!」
********************
良彦:「うむ、やはりお前には白百合がよく映える。
良く似合っているではないか」
絹代:「あ、ありがとう、ございます……で、でもこのような高価な着物、私には勿体無いです!」
良彦:「お前が来て、ひと月が経つ。
その間、実家にも帰れずに父が恋しかろうと思うてな」
絹代:「はぃ……でも、良彦様の元で働く事で、おっとう──父の為になるのであれば、私は──」
良彦:「──お前は頑張ってくれた」
絹代:「っ」
良彦:「まさか、たったのひと月で……な?」
絹代:「私には勿体無い言葉です」
良彦:「だから──その綺麗な姿を、父君に見せて来てはどうだ?」
絹代:「ふぇっ!? え? こ、この姿を!?
い、いやいやいやいや! そ、そんな──」
良彦:「良いではないか。
父君の見舞いも兼ねて、行ってきなさい」
絹代:「こんな田舎娘が、このような綺麗な着物を来て──そんな、恥ずかしいです! それだけは許してください──」
良彦:「何を恥ずかしがる事があるか。
とても似合っているぞ?」
絹代:「で、でも……」
良彦:「ん〜……だったら、夜更けに馬を出そう。
灯りが無ければ恥ずかしがる事もあるまい。
父君にのみ見せられるのであれば、問題なかろう」
絹代:「あっ……ん〜……」
良彦:「そうと決まれば、すぐに支度をしよう──
(手を二回叩く)
おいっ! 絹代に化粧を!!」
絹代:「ふぇっ! あっ!! ちょっ──えっ!?」
良彦:「ふっふっふっ、絹代、覚悟を決めなさい」
絹代:「そ、そんなぁ〜……」
********************
医者:「お邪魔致しますよ。
お身体の調子は如何ですか?」
父親:「あ……あぅ……あ……」
医者:「ふむ……もうまともに会話も出来無いくらいまで行きましたか。
良い傾向です」
父親:「あぅ? あ……あぁ……あ?」
医者:「いやはや、ちょうど買い手が見付かりましてね。
その間にお父様に探りなど入れられて、万が一という事もありますから」
父親:「あ……あ? あぅ……」
医者:「えぇえぇ、苦しいのは今だけです。
今日は少し多めに処方致します。
これで最後……あとは安らかな眠りが待っております。
娘さんは、私共にお任せ下さい。
ご立派にお育てになった分のお金にはなるはずですから」
父親:「っ!? あっ──あぁ……あがっ! (咳き込む)」
医者:「おやすみなさいませ……」
**************************
絹代:「(扉を開ける)
おっとう、ただいま帰ったよ♪
良彦様がお暇をくださったの♪
……おっとう?」
立花:「……やっと来たか……」
絹代:「っ──立花、様?
ど、どうしてここに……」
立花:「ふんっ、良い着物を着ているじゃねぇか。
あの野郎も粋な事をしやがる。
ほら、こっちに来い」
絹代:「おっとう──私の父はどこにいるんですか?」
立花:「ん? ……それは、知らねぇ方がお前の為だ。
まぁ俺には関係ねぇけどな」
絹代:「そんな……おっとう! おっとう!!」
立花:「──やかましい!! (殴る)」
絹代:「ひぐっ!? あ、あぁ……」
立花:「お前はもう俺のモンだ!!
俺の命令無しに口を開くなっ!!!」
絹代:「あ、あぁ……た、たすけ……たすけて……」
立花:「……踊れ」
絹代:「え……?」
立花:「大袈裟に腰を動かしていたお前を気に入って俺のモンにしたんだ……ほらっ、あの時の様に踊ってみせろ」
絹代:「い、いや……」
立花:「口ごたえするな! 踊れ!! (殴る)」
絹代:「っあぐ!!
た、たすけ──っ (走り出す)」
立花:「っ!?
クククッ……俺から逃げるか……
良いぞ、付き合ってやる。
そんな格好でどこまで逃げられるか……」
***********************
良彦:「先日はご足労下さった様で、申し訳ありませ──」
立花:「──あの娘はなんだ」
良彦:「……は?」
立花:「……」
良彦:「あぁ、絹代の事でございますか」
立花:「……」
良彦:「病を患った男が、娘とひっそり暮らしているという情報を得まして、その父が死ねば娘は天涯孤独の身。
他に取られる前に、私の方で──」
立花:「──いくらだ?」
良彦:「はい?」
立花:「あの娘はいくらだと聞いている!」
良彦:「っ──それはまだ。
ウチに来てまだひと月も経っておりません。
立花様にお売りして、何か粗相などあっては──」
立花:「(机を叩く)」
良彦:「っ!?」
立花:「……」
良彦:「かしこまりました……
絹代の父親には、毒を少量ずつ薬に混ぜ、他に怪しまれぬよう少しずつ弱らせております。
その父親を死せる事が出来ましたら、またご連絡させて頂きます」
立花:「(舌打ち) 俺の気は……短(みじけ)ぇぞ」
良彦:「……心得ております」
*******************
絹代:「(隠れる) っ……」
立花:「灯りも持たねぇで、こんな畑まで逃げるったぁ……
おぉ〜い! 何処に行ったぁ!
──っと! あぁ〜あ、俺の着物が汚れちまった」
絹代:「……っ」
立花:「ん〜? 足跡が……クククッ
──ほぉ〜ら捕まえた!!」
絹代:「──きゃっ!?
は、放して──放してください!! 良彦様! 助けてっ、良彦様!! ──」
立花:「おるぁ!! (殴る)」
絹代:「ぎぃっ!! (倒れる)」
立花:「言ったはずだ……俺の命令無しに口を開くな」
絹代:「っ……ど、どうして── (殴られる)」
立花:「頭の悪ぃ女だなぁ……
何が起こってるのか理解出来ねぇか?
クククッ! 分からねぇなら、分からねぇまんまの方が良い!!
ただ俺の為にお前は腰を振って踊りゃあ良い!!! はっはっはっはっ!!!」
絹代:「きゃあ!! や、やめて下さい!! 止めて下さい (殴って離れる)」
立花:「っ──」
絹代:「ふぅ……ふぅ……っ……」
立花:「……? 俺に……手を上げたな?」
絹代:「……たすけて……良彦様……」
立花:「この俺に……この立花の顔を……っ! この女ぁ"ぁ"!!!! (掴みかかる)」
絹代:「きゃ──ぅぐっ!!!?」
立花:「──道具でしかねぇお前が!! (殴る)
この俺に!! (殴る)
手を上げやがったな!!! (殴る)」
絹代:「っ! ぃや──
たすけっ──
ぅぐっ!!」
立花:「この立花に!! (殴る)
この立花に!!! (殴る)
道具風情が!!!! (殴る)」
絹代:「ぁがっ──
あ、あぁ……」
立花:「ぶち殺してやる!! (踏みつける)
俺に逆らう奴は!!! (踏みつける)
ぶち殺してやる!!!! (踏みつける)
絹代:「っ……ど、う……して……っ!
た、たすけ……て……っ!」
立花:「てめぇが!
知る必要なんて無ぇ!! (踏みつける)」
絹代:「っ……あ、あ……っ」
立花:「はぁ……はぁ……はぁ……
(舌打ち) つまらねぇ買い物をしちまった──クソがっ
(立ち去る)」
絹代M:「どうして……
なんで……
私は……
おっとうと私は……
良彦様に救われた……はず。
知る必要が……無い?
どうして……
なんで……
知らない方が……良い?
おっとうは?
私がいなくなったら……おっとうがまた悲しんじゃう……
踊らないと……
私が踊ったら、おっとうは笑ってくれる……
おっとう……
私は……
元気だよ……」
*********************
兄:「次、俺の番だろ? 早くゲーム貸せよ」
弟:「まだやり始めたばかりなんだもん、やだよ」
兄:「っんだよ……
田舎は本当にやる事ねぇから、面白くねぇなぁ……」
弟:「ばあちゃんとじいちゃんは?」
兄:「(窓の外を見ながら)
あっちの畑の方に行ってる」
弟:「ふ〜ん……」
兄:「んぁ? どうしたんだろ……」
弟:「なにが?」
兄:「なんか、手、振ってる……?」
弟:「ははっ、手伝えって言ってんじゃない?」
兄:「……いや、踊ってる?」
弟:「ばあちゃんが?」
兄:「いや……遠くて見えないけど……なんか、白いのがクネクネして……」
絹代:「『シる、ヒツ……ウ……ナい』」
兄:「……?」
絹代:「『シらないホウが……イい』」
兄:「知る……必要が……無い……
知らない……方が……良い……」
弟:「にいちゃん?」
絹代 & 兄:「『シる……ヒツヨウが……ナい……』」
弟:「に、にいちゃん! どうしたの!? にいちゃん!!」
兄:「『シシシシらないイィ……ホ、ホホホホホウがガガガガ……イイイイい!!!!!』」
弟:「に、にいちゃんが──
おばあちゃん!! じいちゃん!!!
に、にいちゃんが!! にいちゃんがぁ!!!!」
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