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【声劇】悩み騒談~二世~(2人用)

利用規約:https://note.com/actors_off/n/n759c2c3b1f08
男女不問=2
約15分~30分
上演の際は作者名とリンクの記載をお願いします。

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悩み事を解決するには、誰かに話す事が一番の早道……かな?
でも相談する相手を間違える事もある……と思う。
そんな凄く遠回りな、面倒くさい話。
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【配役表】
カオル :男女不問。男性推奨。 とにかくノリと勢いだけで生きている。 だから友達はほぼいない。
ツバサ :男女不問。男性推奨。 悩み多き社会人。カオルの唯一(?)の友人。

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カオル:「──『ロリコンからしたら天国だよな』って言ったんだよ! 流石の俺も、最初理解出来なかったんだけどな!! そいつが帰ってから大爆笑!! なっ面白いだろ!!」

ツバサ:「あ、あぁ……そうだな……」

カオル:「ん? なんだなんだ、どうした? 何があった? 久し振りに会ったってのに暗い顔して」

ツバサ:「悪ぃ……ちょっと悩んでてな」

カオル:「悩み? ほぉほぉほぉ!! 役にたてる人が、ここにいる!! 呼んだか? どうも相談役のカオルだ!! さぁ話せ!! ほら話せ!!」

ツバサ:「いや……大した話じゃないから」

カオル:「その『大した話じゃない事』で、こんな重い空気を作っちまってんだ。俺が聞けない相談は『戦争』と『政治』と『今日の晩御飯』くらいなもんだ!! それ以外ならなんでもズバッと解決!! 良いから話せって、な? 話すだけなら金は取らないからよ!! 相談無料!!」

ツバサ:「それ以外は金取るんだ……まぁ、話すくらいなら」

カオル:「あぁ!」

ツバサ:「そ、それじゃあ……あのな?」

カオル:「おう! それは相手が悪いな!! 相手がツバサの気持ちを全く考えてない!!」

ツバサ:「うん、まだ何も話してない」

カオル:「そうかっ悪かった!! 大概の話はこれで解決出来ちまうから、先走った!!」

ツバサ:「そうか?」

カオル:「そう言うもんだ! まぁ良いから、話せ話せ!」

ツバサ:「あぁ……あのな? 会社の話なんだけど」

カオル:「仕事してたのか!? 若く見えるから、てっきり学生さんかと思っていた!!」

ツバサ:「同級生だろ?」

カオル:「そういえばそうだった! 忘れていた!! ほらっ続けて」

ツバサ:「……俺な? 会社で『二世さん』って呼ばれてるんだ」

カオル:「おっ? それは聞き捨てならないね!! ツバサはツバサ! 本物なのにな!! そもそもツバサの偽物なんて、いる意味がない!! 無用の産物!!邪魔なだけ!! 消えろっ!! 一人で十分だって──」

ツバサ:「『ニセ』じゃなくて『二世』な?」

カオル:「おっ、そっちか!! 俺もそう思った!! ほらどんどん続けて!!」

ツバサ:「……本当に続けて良いのか?」

カオル:「何を今更! 当然だ!! 人間過去に戻る事なんて出来ないんだ!! 前進あるのみ!! 諦めろ!!」

ツバサ:「全然聞く気が感じられないから……」

カオル:「聞く気満々!! 聞く気があり過ぎで、既に50個は返しを考えてるぞ!? 聞くか? まず1つ目が『そうだなぁ』2つ目が『ツバサはどう思うんだ?』3つ『マングローブ』──」

ツバサ:「話を聞いてから考えてよ。まだ聞くだけで良いから」

カオル:「そりゃそうか! 分かった、聞こう!! 聞く事に徹しよう!! だから話せ! 思う存分話せ!! 『偽物』と言われて、どうだったんだ?」

ツバサ:「『ニセ』じゃなくて『二世』なんだけどな?
父親の会社に入ったのは、前に話したと思うんだけど」

カオル:「覚えてないが、覚えているフリをしとく! つまりは、知ったかぶりだ!」

ツバサ:「うん、父親の会社に入って3年……コネで入りはしたけど、下積みから頑張ってるつもりなんだ」

カオル:「『つもり』という事は自己評価高め! 自信を持つ事は良い事だ!! 自信の塊の俺が言うんだから、信ぴょう性は低めっ!! 気にするな!!」

ツバサ:「営業さんとか、兄弟会社、下請けの会社の人達は、みんな『〇〇さん』みたいに名前で呼びあって、あくまでも『会社の付き合い』『仕事上の掛け合い』みたいな感じなんだよ」

カオル:「〇〇さん……あの〇〇さんか!? いやぁ〜懐かしいなぁ!! 〇〇さん!! ん? あっよく考えたらそんな珍しい名前の人知らねぇや!!」

ツバサ:「……」

カオル:「どうした? 終わりか??」

ツバサ:「ちゃんと聞いてる?」

カオル:「あったりまえだろ!! 聞いてないとなると、俺の耳は飾りか? 飾りなのか? 耳に俺の耳のピアスか? 金持ちの家の壁に飾るか? 鹿の隣に俺の耳!! 壁に耳あり正直迷惑!! 昔の人はよく言ったものだね!!」

ツバサ:「(ため息) もう良いや……」

カオル:「おいおいおいおいおいおいおいいおいおいおいおいっ!! おいが多いってか!? 馬鹿にするな!! めいの方が可愛いのはよく分かるが、話を中途半端で終わられたんじゃ、気になって夜も眠れなくて昼に寝るしかなくなるだろ!! 良いから話せ!! 俺の為だと思って話してくれ!! 頼む!! 前世で使わなかった七夕の願いを今使うから、話せっ!」

ツバサ:「ふぅ……それでな? 父親の会社だから、まぁ仕方ないとは思うんだけど……なんか気を使われてるって感じがして──でも、社長の子供だからって事で任される仕事もあって……でも他の人と同じに扱われたいっていうか」

カオル:「親の七光り! 七って何が光ってやがんのか!! 眩しくて親に顔向け出来ねぇかは、他人のふんどし!! 洗ってあってもはきたくねぇ!! でもそれしか無いなら、辞退します!!」

ツバサ:「カオルに話したの……失敗だったかな?」

カオル:「なっ!? 失っ礼な事を言う事だねぇ〜この子は! 親の顔を見てみたい! 見て一緒に写真取ってYouTuberになって天下を取りたい!! 誰に話すかなんて事は問題じゃないんだよ? もやもや溜まってるのを吐き出させる! それがツバサには必要なんだ!! 俺に話すのが失敗だった!! 話す前から分かってた事を、今さら言ってんじゃあ無いよ!!」

ツバサ:「だよな……すまん」

カオル:「まったくツバサは難しく考え過ぎてんだ。良いか? 俺が昔生徒会長に立候補して演説した時みたいに真面目に話すから、よく聞けよ?」

ツバサ:「生徒会長に立候補してたの!?」

カオル:「俺の学校を潰す気か!! してねぇ〜よ! 馬鹿が増えるわ!! あえて増やすわ!! 俺が学年トップになるくらいまで学力下げるわ!! 来世の話だよ!!」

ツバサ:「面倒くさいなぁ〜……」

カオル:「慣れろっ!!!」

ツバサ:「あぁ……たぶん無理」

カオル:「俺はクセの強いセロリか! パクチー多めのタイ料理か!!
良いから、な?」

ツバサ:「苦手だわ…… (ため息) まぁ、分かった……聞く」

カオル:「……」

ツバサ:「……」

カオル:「……」

ツバサ:「……?」

カオル:「……話す事、忘れた」

ツバサ:「だぁぁぁぁあっっ!!!!!!!!」

カオル:「待て待て待て待て!!! 思い出す!! 俺頑張る!! 人生で初めて頑張る!! デブのダイエット並に頑張る!! 3日は頑張るから待って!!!! あっ思い出した!!」

ツバサ:「うぅぅ!!!」

カオル:「ほら思い出した!! 頑張ったら思い出したから!! 思い出した事にするから!! 新しく作るから!!」

ツバサ:「思い出してないじゃん!!」

カオル:「過去を振り返らない性格だから! 俺は俺の時代を作ってくから!! 未来は自分で切り開いて行くから!!!大丈夫!!! 落ち着いて……ほら、コーヒーでも飲んで……な?」

ツバサ:「そのコーヒーが無いんだけど?」

カオル:「飲むフリで……な? 飲んでる気になって! パントマイムを極めよう。いける! 自分信じろ!! ツバサなら空も飛べる!! 飛んでる気がする!! ほら飛んだっ!!!」

ツバサ:「ふぅ〜……で?」

カオル:「おかえり……空の旅は最高だったろ?」

ツバサ:「飛んでないんだよ……そもそも飛べないだよ」

カオル:「だよなっ! ずっと目の前にいたから、飛んでない気はしてた。でも俺はツバサが飛べると信じてる!!」

ツバサ:「そんなの良いから!!」

カオル:「おぉおぉ、今お怒りのツバサに質問だ! ツバサの『才能』ってのはなんだ?」

ツバサ:「あ? 『才能』?」

カオル:「あぁ『才能』だ。俺が見る限り『優し過ぎる』ってのは間違いねぇな! 普通だったら俺は殴られている!!」

ツバサ:「あぁ、殴る程度で止められる自信がないくらいに殺意はある」

カオル:「それを我慢した! よく耐えた!! 偉い!! ツバサじゃなけりゃ『俺がこの話をしているという事は、俺はこの世にいない事だろう』って手紙を残してた。つまり『我慢強い』って才能も持ってる! そして俺の才能は『人をイラつかせる』って才能だ! 全然気付かなかったろ?」

ツバサ:「学生時代から、感じてはいたけど……改めて再認識はしてる」

カオル:「それでもツバサは俺と遊んでくれてる訳だ!! 馬鹿だねぇ〜……ひくわぁ〜……無いわぁ〜……俺なら絶対に拒否るね!!」

ツバサ:「次回から断る様に──」

カオル:「──出来ない!!」

ツバサ:「うっ……ん〜……」

カオル:「ツバサに出来る訳がない! 逃がさない!! 毎日ツバサの家に通ってやる!! 郵便物とか漁ってやる!! 合鍵作ってやる!! 無言電話かけてやる!! 着信拒否かけられてやる!! 不法侵入してやる!! 忍び込んでパンツ被ってやる!! 勝手に寝起きドッキリ仕掛けてやる!! 通報されてやる!! 捕まってやる!!!」

ツバサ:「本当にやりそうなんだよ……」

カオル:「やらねぇ〜よ!! たぶん……。そんなモラルに反した事しねぇ〜よ!! きっと……。人間として最低だろ!! およそ……」

ツバサ:「言い切ってよ……」

カオル:「産まれた時から、俺はこんな感じだ。産まれた瞬間に、母親に『やっべ、うぜぇ』と言われた子供の気持ち分かるか? 今さら変わらないし、変えようとも思わないのはさすがにマズいと思ってはいるが、今さら無理だ。しかしこれが俺の産まれ持っての『才能』だ」

ツバサ:「要らない才能だなぁ……」

カオル:「さぁここで本題に戻ると見せかけて、昨日食った麻婆豆腐の食レポをしようと思う!」

ツバサ:「いや、本題の方で──」

カオル:「土下座までされたんじゃあ仕方ない! 昨日の晩飯はハンバーグだったし、こちらにとっても好都合! 本題の方だ」

ツバサ:「土下座してないけどなぁ〜……まぁ良いや」

カオル:「産まれた瞬間から、あらゆる『才能』ってのが備わってる!! 分かるか? 数万、数千、数百、数十個、数個の中から選ばれて、この世に生まれ落ちたんだ!!」

ツバサ:「減ってくなよ」

カオル:「落ちたんだよ!! 産まれて落ちた!! さっそく奈落人生の火ぶたが切って落とされた!!」

ツバサ:「カオルはな? 『うぜぇ』って親に言われたんだもんな」

カオル:「あぁ! 耳を疑ったね!! 人生で唯一黙った瞬間だった!! あの時の失敗はもう繰り返さないと、心に決めた!! 俺がこの世界の政治を変えてやる!! だから『カオル』と自分に名前を付けたんだ!!」

ツバサ:「なんで『カオル』なのか、全く分からないし、自分で付けた事も理解出来ないから……続けて」

カオル:「俺は『生き抜く』という才能を持っていた! もちろんツバサにも備わっている才能だ!!
ツバサの場合は『親が社長という運』ってのも備わっていた!!」

ツバサ:「ぅん?」

カオル:「俺の家はしがない武士の家だ!! 腰に剣をたずさえ、日々人を切り捨てては『ゴメン!』!! 切り捨てては『マジごっめ〜ん!!』!! と──えっ、今『運』に対して『うん?』って言った?」

ツバサ:「言ってねぇし、カオルの家は居酒屋だろ──」

カオル:「──ちっくしょう!! 負けねぇかんな!!! 面白い事言いやがって!! ぜってぇ〜ツバサより面白い事言ってやる!! という話は一回横に置いておいて、後で近所の郵便受けに後でばらまく事にする」

ツバサ:「迷惑だわぁ……」

カオル:「その『運』という才能!! それが『二世』という呼び名に変わってる!! 変わっちまったんだよ!! 昔はもっと、こう……アレ、アレだ!! っんで分かってくれねぇんだよ!! 分かれよ!! ちくしょう……ちくしょう!!!!!」

ツバサ:「……」

カオル:「ツッコミ待たずに続けるぞ?」

ツバサ:「どうぞ」

カオル:「昔、俺のダチにこんな奴がいた! か、勘違いすんなよ!! ただのダチだから!! ツバサ以上のダチなんていないんだからな!!」

ツバサ:「友達自体いないじゃん」

カオル:「ご名答! 優勝商品は、この話の続き──俺の部屋から窓が見えるんじゃない!! 俺の部屋の窓から保育園が見えるんだよ馬鹿っ!! 何言ってんだ!! 今俺は真面目な話をしてんだぞ!!」

ツバサ:「5階だっけ?」

カオル:「誤解じゃない単なるマジボケだ!! そこはイジるな!! 人間誰だって間違いはあるってのは、言い励まし言葉だよな!! すっげぇ〜多用してるのは、俺達だけの、二人だけの秘密なっ!! 絶対だぞ!!」

ツバサ:「納得しないと進まないから、とりあえず……分かった」

カオル:「良い子だ……ご褒美として話の続きをプレゼント!! そいつが俺の部屋の窓からその保育園を見て、こう言ったんだ!! 『なんて言ったと思う?』」

ツバサ:「……ん?」

カオル:「……」

ツバサ:「……え? ここに来てクイズ?」

カオル:「……待って……今、話す事まとめてるから……」

ツバサ:「あぁ〜、自分の為の間ね……」

カオル:「そう!! こう言ったんだ!!『カオルの部屋って、ロリコンからしたら天国だよな』って言ったんだよ! 流石の俺も、最初理解出来なかったんだけどな!! そいつが帰ってから大爆笑!! なっ面白いだろ!!」

ツバサ:「……えっ? なんかデジャブ……なんか前に聞いた事がある気がするんだけど」

カオル:「当たり前だろ! さっき話したんだから!! 大切な事だし、ツバサが聞いてないから、もう一度話したんだけど、聞いていた事に逆にビックリしている今の心境を俳句でどうぞ!!」

ツバサ:「なんでそこに繋がったのか、全く分かってないんだけど」

カオル:「自由俳句! なかなかの高等技術を使ってくるねぇ!! それに対しての返事はアンサーソングとして曲をリリースから、明日まで待ってくれ!! ピアノ伴奏の超名曲に仕上げてくるから!!
つまりはだ! 良いから良く聞けっ!! 黙れっ喋るな!! 今俺が喋ってんだから!! 静かに聞けっ!! シーっ!!」

ツバサ:「黙ってるよ!」

カオル:「俺にロリコンの趣味が無かったから、無用の産物だったんだけど『ロリコンがもし俺の部屋に住んでいたら』!! その部屋も、そのロリコンからしたら、1つの才能だった訳だ!! その状況を利用して、望遠鏡や双眼鏡や顕微鏡で保育園を覗き見る!!
わざわざ保育園の見える家に住んだとしたら、それは『才能』じゃなく『努力』!! つまりは犯罪だ!!」

ツバサ:「どの状況でも犯罪だけどな?」

カオル:「顕微鏡けんびきょうの段階で来いよ!! ボケを一つだけピックアップアーティストするな!! 『番組をご覧の皆様、こんにちわ』ってやらすな!! 全てに喰らい付け!! ツッコミを舐めるな!!」

ツバサ:「えっと、つまり……社長の子供として産まれた訳だから、仕方ない。それを利用しろ……そういう事か?」

カオル:「はぁぁぁぁぁ〜〜!! ツバサは今まで何を聞いていたんだ。分かってない……本当にツバサは分かってない!!!」

ツバサ:「え、違うの?」

カオル:「まだ答えが足りない!! 良いか? 『こんな訳の分からない俺の話を聞いてくれてありがとう』って話をしてるんだ!! 二度も言わせるな!! 良いか!! 『こんな訳の分からない俺の話を聞いてくれてありがとう』って話をだな!! ──」

ツバサ:「聞いた聞いた! 分かったから──」

カオル:「同じ話を何度もするの嫌いなんだよ!! ふざけるなよ!!! 俺は!! 『こんな訳の分からない話を聞いてくれて──』」

ツバサ:「はぁ〜……悩んでるのが馬鹿らしくなったわ」

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