【声劇】サンタクロース・イブ(2人用)
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♂:♀=1:1
約10分~20分
上演の際は作者名とリンクの記載をお願いします。
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父親が陥るだろう危機を、台本に仕上げた声劇です。
サンタさんが「いる」「いない」問題。永遠に争われるテーマですよね?
サンタクロースは……います!!
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【登場人物】
妻♀:良い奥さん。子供の事を第一に考えながら、旦那さんの事もしっかりと考える。
夫♂:良い旦那さん。仕事仕事に追われているが、それは全て子供の為。超頑張り屋さん。
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妻:「あなた……」
夫:「……」
妻:「ねぇ、あなたったら」
夫:「ん……何、どうした?」
妻:「あのね、あの子も、もう物心がつく歳じゃない?」
夫:「お? あぁ、そうだな」
妻:「だから、そろそろ今年くらいから、やりだした方が良いと思うの」
夫:「やる? ……何かやるのか?」
妻:「(ため息) もう12月でしょ!」
夫:「あぁ、12月だな……今年もなんか早かったなぁ〜。年末はまた忘年会忘年会忘年会で──」
妻:「子供に『今日は忘年会よ』って言っても分からないでしょ? じゃなくて! 12月って言ったら……ほらっ」
夫:「な、なんだよ……【相手の名前】の誕生日──」
妻:「──は、5月!!」
夫:「だよなぉ……12月と言ったら……あぁ〜! アレか!!」
妻:「そうそうそうそう!」
夫:「すまん! 今年も忘年会やら接待やらで土日返上で、休めそうに無いんだ……
やれる時にはやるけど、出来る分だけやっておいてくれないか?」
妻:「大掃除じゃなくて!! ──って、今年もまたぁ!?
たまにはあなたも家の事やってくれても良いんじゃない? 仕事で忙しいのは分かるけど……」
夫:「すまん!! 本当にすまん!!」
妻:「もぉ〜……そうじゃなくて!! クリスマス!!」
夫:「……え? クリスマス?」
妻:「そう、クリスマス!!」
夫:「あ、あぁ〜クリスマスな、クリスマス……ん? クリスマスが……何?」
妻:「だから、あの子も物心がついてくる歳になってきたでしょ?
去年までは、お菓子とかケーキとかで『メリークリスマス♪』って言ってたけど、今年からは本格的に『サンタさんが来たんだよ』ってやった方が良いんじゃないの? って事」
夫:「あぁ〜なるほど! そういう事か! はっはっはっ!! サンタさんな!!
そうかぁ〜もうアイツもそんな歳になったかぁ〜……本当に子供の成長は、早いなぁ〜」
妻:「そうよ? あなたはほとんど家にいないから分からないだろうけど、毎日毎日少しずつ成長してるのよ」
夫:「あぁ、そうなんだよな……仕事から疲れて帰って来て、アイツの寝顔を覗き込んだら……『だ、誰だ!?』って、毎回思うよ」
妻:「それは思わないでよ……あなたの子なんだから……」
夫:「それだけ成長が早いって話だよ。
次覗き込んだら、髭が生えてたらどうしようって……不安に思う事が──」
妻:「それは早過ぎるわよ!
大丈夫……早く感じるけど、ゆっくり、毎日、順調に成長していってるから……
だからあなたにも、仕事ばかりじゃなくて、父親らしい事をして欲しいの」
夫:「そう、だな……俺に何が出来るんだろ……」
妻:「そ〜れ〜がっ、クリスマスでしょ♪」
夫:「お? おぉ〜なるほど……?」
妻:「あの子から、欲しい物を聞き出して、そして──ね♪」
夫:「あぁ〜なるほど!! それでクリスマスに備える!
OK、分かった。明日は久し振りの休みだし、アイツと公園でも出かけて、聞き出すよ」
妻:「えぇ、よろしくね♪ お父さん♡」
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(翌日)
妻:「あ〜なた♡」
夫:「……ん? どうした?」
妻:「どうだった?」
夫:「何が……あぁ、クリスマスのヤツ?」
妻:「そうそうそう♪ あの子が何を欲しがっているか、聞き出せたの?」
夫:「おぉ聞いた聞いた♪
なんか、日曜日の朝にやってる『仮面ライダーなんとか』ってヤツのベルトが欲しいんだってさ」
妻:「あ、それ私も欲しい!」
夫:「なんでだよw」
妻:「俳優の男の子が可愛いの♪ ストーリーも、結構深くって、あの子と一緒にハマっちゃった♪」
夫:「おいおい……子供が観る様なアニメ──いやドラマ? だぞ」
妻:「意外に馬鹿に出来ないものよぉ〜♪」
夫:「そうかぁ〜? ま、まぁ機会があったら観てみるよ (汗)」
妻:「絶対に観ないヤツだw」
夫:「それを言うなよw 見るよ、見る!
今日アイツと話していて、大半がその話だったから、ほとんど分からなかったんだ。
さすがに観ないといけないなぁ〜っと思ったよ」
妻:「そうよぉ〜。子供と同じ目線になって、一緒に楽しまないと──育児なんて、そういうモノ♪」
夫:「ご苦労おかけしております」
妻:「苦しゅうない、よきにはからいたまえ♪
まぁとにかく、仕事の合間でも良いから、あの子が欲しいって言ってるベルト、お願いね♪」
夫:「分かった。色々と調べて、やっとくよ♪」
妻:「うんっ、よろしくね♪ お父さん♪」
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(3日後)
妻:「あ・な・た♪」
夫:「ん?」
妻:「プレゼント、どう?」
夫:「あぁ〜……その話か……」
妻:「まだ準備出来てないの? 人気なグッズだから、そろそろ準備を始めないと、売り切れちゃうよ」
夫:「だよなぁ〜……それは分かってるんだけど……なかなか」
妻:「もぉ〜……そんなに仕事忙しいの?」
夫:「まぁ、それもそうなんだけど……俺、英語苦手だろ?
仕事の空いた時間で、色々と検索してみてはいるんだけど、どこも違うっぽくてなぁ……
父親の凄さっていうのを、再認識させられてるよ……」
妻:「英語?」
夫:「買う場所は、家の近所の方が良いのかな?
深夜まで開いてるおもちゃ屋とか、その辺も調べた方が良いのかな?」
妻:「別に深夜に行かなくても良いんじゃない? 子供にバレなければ、それで良いわけだし」
夫:「そういうもんなのか? そっか……そっか……なるほど……うん、少し楽になった♪」
妻:「うん……そんなに悩まないで、分からなかったら言ってね?」
夫:「あ、あぁ……」
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(翌日)
夫:「あの、さ……」
妻:「ん? 何、どうしたの?」
夫:「いや、その……どれくらい、包んでおいたらいいんだろう?」
妻:「……何を?」
夫:「いや……とりあえず、メールは送っておいたんだ。翻訳サイトとか使って、場所とかの位置とか、画像も添付して……」
妻:「……?」
夫:「自動返信メールとかあるのかなぁ〜と思って、待っていたんだけど……それも無くて──でも、一通りの事は出来たと思う。
それで、いざ当日になったら……その……『今日はありがとうございました』って、やっぱり気持ちを包まなくちゃいけないだろ? その……チップっていうのかな……いくらくらい──」
妻:「なんか注文したの? 宅急便なら、別に着払いなら、来たら払っとくよ?」
夫:「いや、宅急便じゃなくて」
妻:「ゆうパック?」
夫:「じゃなくて……仮面ライダーなんとかのベルト」
妻:「あぁ〜w ネットで買ったの?
OKOK♪ 届いたらちゃんと見えない所に隠しとくから大丈夫──」
夫:「──か、買わないよ! せっかく貰えるのに買ってどうするんだよ!」
妻:「……え?」
夫:「だから! サンタさんが来た時に、どれだけ包んでおくべきなのかなって。
それが──それをさ、どれだけ調べても出てこないんだよ!
入って来る時は『窓を開けておいたら良い』みたいな記事が結構あったから、それは分かったんだけど!
色々とちゃんとしておかないと、来年から来てくれなくなるかもしれないし── (以下妻の台詞を無視して続ける)」
妻:「(夫の台詞を被せる) ──ちょっ、ちょっと……」
夫:「──ベルトも調べたら結構高い物だったから、ある程度多めに包まないと申し訳ないっていうか── (以下妻の台詞を無視して続ける)」
妻:「(夫の台詞を被せる) ──ま、待って──」
夫:「(徐々に泣き始める) ──俺もう訳が分からなくて!
でも、俺っ父親だから! 子供の為にって──アイツが喜ぶ顔が見たくって!
英語だと思ったら、住んでる場所がフィンランドだったから!
フィンランド語に翻訳しても、全く意味が分からなくて!
ちゃんと翻訳されてるのかも不安で!!
もう色んな事が一気に押し寄せて来て、俺もうどうしたら──」
妻:「──待って! あなた! 落ち着いて」
夫:「──あっあぁ……あぁ〜……」
妻:「ね? お、落ち着いて……ゆっくりで良いから……何の話をしてるのか教えて?
大丈夫だから……」
夫:「あ、あぁ……」
妻:「一つずつ……ね? 何があったの?」
夫:「あぁ……家にサンタさんが来るの、初めてだろ?」
妻:「えぇ、そうね……」
夫:「だから『家の場所』とか『欲しいプレゼント』とか『どこで買える』とか……英語でメール送ったんだ……」
妻:「ん〜?」
夫:「そしたら、サンタさんの出身地が……フィンランドだって知って──」
妻:「──うん、ちょっと待って?」
夫:「あ、うん……本当に頼りない父親で……俺」
妻:「そこじゃない……待って」
夫:「え……あぁ……」
妻:「……マジか……」
夫:「お前に呆れられるのも分かる!
俺がもっと普段から父親らしくしていたら──」
妻:「──違う。そこじゃないの……えぇ〜っと……マジか……」
夫:「え……あ、あぁ……」
妻:「OK……うん──よしっ! 凄く大切な話だから、しっかり聞いてね?
もしかしたら、もの凄くショック受けるかもしれない話なんだけど──」
夫:「──えっ……り、離婚とか!? そ、それだけはホントに許して──」
妻:「──違うから! ……違うから、あなた……安心して?」
夫:「う、うん……」
妻:「……良い? 落ち着いて聞いてね?」
夫:「あ、あぁ……」
妻:「ふぅ〜……あのね? サンタさんって言うのは──」
(了)