アクティビストが注目する?関連当事者取引とは
上場企業が開示している資料のひとつに、有価証券報告書(通称"有報")というのがあります。
イラストがなく、めちゃくちゃとっつきづらいですが、ここに上場企業の情報があますことなく記載されており、アクティビストファンドはこの有報を朝から晩まで、雨の日も風の日も読み漁り、投資のアルファを探しております。
今回は、有報の中でも特に注目すべき項目である、
関連当事者情報
の読み解き方を紹介します。
この欄には、会社と関連当事者との間で行われる取引が記載されております。
関連当事者とは、大株主や取締役のことを言います。
なぜこの欄を有報に載せないといけないかというと、
「社長個人と会社が取引したらダメ!ということではないんですが、もしあるんだったら開示してくださいね!」
という理由からです。
これ、非上場のワンマン、オーナー企業の感覚したら
「え、俺と会社間で取引あると開示しないといけないの?」
と思われるかもしれません。
そうです、しないといけないんです。
上場するということは、いろんな人が株主になるわけです。
ですので、特定の人だけ「有利じゃない?」「セコくない?」ということがないように「役員や主要株主と、会社間で取引あるなら開示しておいて」というための欄です。
では実際に見てみましょう。
例えばオアシス・マネジメントが投資しているDICです。
一番上の欄を見てください。
何が書いてあるかを説明しますと、
「日誠不動産という会社に賃料を22億円支払ってるよ」
ということが記載されております。
「日誠不動産って何の会社?」と疑問に思われたことでしょうが、下の欄外に説明があります。
要は、役員の川村氏の資産管理会社的な会社、ということです。
(川村氏は創業家)
なので、結論を申し上げると、
「創業家の資産管理会社がDICにオフィスを貸している」
ということです。
もっと具体的に言うと、
「毎年家賃として創業家はDICから22億円を受け取っている」
という見方もできます。
「え!それってダメなんじゃないの?」
と思われた方。
一概にダメ!とは言えないんです。
欄外の(注)2.を見ていただくと
との記載があります。
要は「賃料は異常に高かったり安かったりということではないので、特定の人に利益供与しているわけではないですよ」
ということが書かれております。
ですので、ただちに「利益相反だ!法人の資産を個人に移転している!」ということでもありません。
ですが、アクティビストはここを狙って指摘します。
最もメジャーな例は香港のアクティビストファンド、オアシス・マネジメントがフジテック創業家に対して指摘した関連当事者取引です。
2000年から2021年の有価証券報告書を読み漁り、会社のお金で創業者が高級マンションに住んでいたことが判明しました。
このケースは関連当事者取引をパっと見ただけではわかりませんが、資産管理会社の登記簿、不動産の登記簿を取り寄せて、不正な取引を暴きました。
「関連当事者取引があるから直ちに不正だ!」というわけではないのですが、恐らくほとんどケースでは突っ込まれると回答に困ることが多いと私は思っており、アクティビストファンドとしては指摘することで創業家にプレッシャーを与えることができます。
関連当事者取引をやめたから業績が良くなるということではありませんが、
関連当事者取引がある
↓
アクティビストファンドが指摘する
↓
創業家としては負い目を感じる
↓
アクティビストファンド側の意見が通りやすくなる
↓
株主還元?MBO?
というストーリーが想定されます。
まとめますと、関連当事者情報をみて、創業家との怪しい取引があれば「アクティビストファンドはこれを指摘するのだな」と前もって認識することができます。
「アクティビストが投資したから、とりあえず買う!」
もよいとは思いますが、ひとつ上の楽しみとして、アクティビストの保有が発覚したら、有報見て、関連当事者取引を見に行くことでアクティビストが何を指摘するのか想像でき、キャンペーンでその通りになったときは儲かったときの嬉しさは倍増です!!!
ぜひ、アクティビストの保有がわかれば
関連当事者取引
も確認しましょう!!
最後までお読みいただきありがとうございます!!!
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