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ホームレス支援の"今"を知る。国と民間それぞれで広がる支援の輪


住む家をもたず、公園や駅の高架下、地下道などに暮らす“ホームレス”や“路上生活者”と総称される人々。家のない、安全な生活が送ることのできない状況は、生存権にもつながる重大な社会問題といえます。
住まいにまつわる社会問題を紹介する当note。今回の記事では日本のホームレスの現状についてフォーカスし、2002年8月の「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」の成立から調査が始まったホームレスの実態の今昔と、当事者への支援についてお伝えします。

全国のホームレス数は3065人。しかし実態は……

厚生労働省では、ホームレス支援の施策の効果を継続的に把握することを目的として、1年ごとに全国のすべての市区町村で「ホームレスの実態に関する全国調査」を行っています。
 
最も新しい令和5年調査では、全国のホームレス数は3065人と発表されています。
都道府県でその分布をまとめると、
 
1位 大阪府(851人)
2位 東京都(629人)
3位 神奈川県(429人)
 
の3都府県 が上位を占め、東京都23区と指定都市で全国のホームレス数の8割弱を占めている実態があります。
 
詳細なデータが公表されている令和4年度の情報によると、
路上(野宿)生活を始めてからの期間については、有効回答1138人のうち「20年以上」が最も多く(25.7%)、次いで「10年以上15年未満」(19.5%)を占め 、長年にわたってホームレス状態に陥っている人が多いことがわかります。
 
年齢に目を向けると、65歳以上が54.4%で半数以上。
ホームレス状態となった理由には、「仕事が減った」「倒産や失業」「人間関係」といった回答が多く、貧困や社会的孤立とも密接に関係した問題であることが感じられます。
 
過去5年間のホームレスの数を比較すると、
平成 30 年調査 4977人
平成 31 年調査 4555人
令和 2 年調査 3992人
令和 3 年調査 3824人
令和 4 年調査 3448人
令和 5 年調査 3065人
と、年々数百人単位で減少しています。
 
しかし、インターネットカフェや漫画喫茶などで寝泊まりしながら不安定な仕事に就く、あるいは無職の状態にある人、いわゆる“ネットカフェ難民”は、この数には含まれていません。
ホームレス状態の一種であるネットカフェ難民は、都内だけでも1日当たり約4000人に上るとみられています。
 
特にコロナ禍の影響を受け離職を余儀なくされた人が増えた2021年以降は、ネットカフェ難民の数も爆発的に増加したとの報道もありました。
潜在的な数や瀬戸際で踏みとどまっている人も含めると、不安定な居住環境にいる人の数が 決して大きくは減少していないことは、想像に難くありません。

路上生活者をめぐる国や地方自治体の支援

1990年後半に雇用情勢が悪化し、路上生活者が増えたことをきっかけに、2002年(平成14年)には「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」が成立し、以降改定を重ねています。
 
直近では、2023年7月31日に、ホームレス支援の新たな基本方針が策定されました。
 
基本方針の内容の一部を見てみると、
➀就業の機会の確保、安定した居住の場所の確保、保健及び医療の確保並びに生活に関する相談及び指導
➁ホームレスの個々の事情に対応したその自立を総合的に支援する事業の実施
➂ホームレスが多い地域を中心に行われる生活支援
➃ホームレスに対して緊急に行うべき援助、生活保護法による保護、地域における生活環境の改善及び安全の確保の実施
といった、当事者に向けた支援を国が主導し、各自治体で実施するガイドライン が明らかとなりました。
 
基本方針の中には、民間のホームレス支援団体への助成、公園を利用するホームレスを適切なセーフティーネットにつなぐ、といった当事者を見守る団体、当事者の環境についても、指針が記載されています。
 
また、支援に際して民間団体の活用にも触れており、市区町村のみならず国も民間支援団体との緊密な連携を取ることが定められています。
 
自治体が主体となり、低所得者向けの支援として相談事業を行う地方自治体もあります。
例)東京都 TOKYOチャレンジネット

全国に広がる民間の路上生活者支援のネットワーク

路上生活者を支援する民間団体の活動は、団体の規模や理念、地域の特性などによってその種類はさまざま。
具体的な活動の一例には
 
相談支援……現状の困難の生活相談。ヒアリングを元に、生活保護申請の補助や他団体が行う支援につなげる。
例)東京:一般社団法人反貧困ネットワーク

自立生活サポートセンター・もやい代表の大西さんのインタビューでは、コロナ禍以降の路上支援現場や住まいに関する相談の様相をお伝えしています。

食糧・衣類支援……食料物資の配布。炊き出しなどでその場で温かい食品を配布する団体もある。冬場には寒さをしのぐための使い捨てカイロや衣類の配布を行う団体も多い。
例)東京:新宿ごはんプラス
 
夜間パトロール(夜回り)……ホームレスの人たちが寝泊まりする場所へ訪問し、困ったことがないか、不足しているものはないかなどをヒアリング・対応するアウトリーチ活動。
例)大阪:認定NPO法人Homedoor(ホームドア)
 
シェルター運営……緊急性の高いホームレスの人へ部屋を提供し、自立に向けた暮らしのサポートを行う。
例)東京:一般社団法人つくろい東京ファンド
 
交流事業……社会的な孤立を防ぐための他者との交流の機会を提供。音楽療法やカフェ、食堂など、形態は多様。なかには互助会を運営する団体も。
例)福岡:特定非営利活動法人 抱樸(ほうぼく)

といったものがあります。
上記のような支援活動を、並行して行う団体が多いようです。

路上生活者への支援の輪は、東京や大阪に限らず、全国に広がっています。
全国の路上者支援を行う民間団体をつなぐNPO法人ホームレス支援全国ネットワークには、2023年6月21日現在、86団体が加盟しているとのこと。
 
また、企業による路上生活者支援への参画も増えつつあります。
有名なところでは、制作した雑誌の販売をホームレス状態の人たちに委託し、その定価の半分以上が当事者の収入源となる事業を展開する、有限会社ビッグイシュー日本を思い浮かべる方も多いと思います。
 
当事者への直接的な支援を行わなくても、支援団体への活動資金の寄付 のほか、国内大手ファストフードサプライヤーやスーパーマーケットからのフードバンクへの製品提供もあるそう。
 
LIFULL HOME’Sも、民間支援団体と連携を取り、FRIENDLY DOORに生活保護利用者フレンドリーのカテゴリーを掲載。
貧困に陥った路上生活者が生活保護を利用して住まいを 探す際、親身にサポートしてくれる不動産会社を探すことができます。

 おわりに

ホームレス状態を脱するには、「就業」と「居住場所」この2つの不安定さを解決する必要があります。安定した職を得るためには、住所を確保すること―。つまり住居支援策が欠かせません。
家のない、安全な生活が送ることのできない状況は、生存権にもつながる問題です。人にとって住宅とは、雨風をしのぐ以上に大事な役目を担っているのではないかと考えます。 



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