1日10分の免疫学(5)免疫応答の始まり
第2章 自然免疫:感染に対する即時応答
1.上皮組織と共生微生物
本「病原体の侵入に対する1番最初の防御機構について」
大林「えーと、まず上皮組織が、病原体が体内に侵入するのを防ぐ物理的・化学的な障壁なんですよね!」
本「それだけでなく、皮膚や粘膜表面にいる共生微生物も病原体の侵入を阻止している」
大林「共生微生物はヒトを守ってくれてる?!」
本「というより、常在菌は病原体との栄養や場所の取り合いしてる」
大林「常在菌と人はwin-winってことか」
本「抗菌剤投与により多くの常在菌が失われると、感染症になることもある」
大林「おぉ…」
本「哺乳動物の赤ちゃんには出生前には共生微生物は存在しない」
大林「産道通るときとか、出てから付くんだよね」
本「腸は豊富な栄養が安定供給されるので共生微生物にとって特に良い住処」
大林「経口でどんどん栄養はいって、こなれて腸に届くもんなぁ……腸にはヒトの細胞より多い数の細菌がいるんだよね」
本「多くの常在菌は1億年以上かけて哺乳動物と共に進化し、宿主と相互に改善し合う共存関係を築いている」
大林「1億年……思ったより長~~~~~~いお付き合い」
本「病原体とは、人体を利用する生物体の総称。ヒトの細胞の隙間に生育&増殖する細胞外感染と、細胞内で増殖する細胞内感染に大別される」
大林「そっか。細胞外感染もあるんだ」
本「細胞内外両方の生活環をもつ病原体も多い」
大林「へ~」
本「細菌・ウイルス・真菌・寄生虫のうち、ウイルスと一部の細菌がヒトの細胞内まで進入して自己複製することができる」
大林「細胞内にある複製機能を勝手に使うんだよね!」
2.上皮組織が突破されたら補体
本「病原体が上皮細胞の障壁を突破して直ちに発動する自然免疫の防御機構とは?」
大林「補体!」
本「補体とは、肝臓で常時作られ、血液・リンパ・細胞外液中に存在する可溶性タンパク質(血漿タンパク質)。補体系は30以上のタンパク質で構成されていて、補体第3成分(C3)が重要」
大林「血漿タンパク質なのか……」
本「C3以外を欠損した人は比較的軽度の免疫不全症となるが、C3を欠損した人は重篤な感染症にかかりやすくなる」
大林「補体はC3が重要ということだけ覚えとこ」
本「感染により補体系が活性化されるとC3は切断されC3aとC3bとなり、前者は食細胞を誘導、後者は病原体に接着して食細胞の目印となる」
大林「…………。」
本「……補体のことわかった?」
大林「血管内を流れる対病原体兵器……機雷みたいな感じかな。病原体にしか反応しないんだよね?『自己非自己の認識』…」
本「補体の機能をかいくぐるために一部の細菌種はヒトの細胞になりすます」
大林「敵も無策ではないということか」
3.細胞たちの防御活動
本「さて次の段階!病原体がヒトの組織に侵入した時、最初に出会うのは?」
大林「組織マクロファージ!単球が組織に移動して成熟したのが組織マクロファージなんだよね。どの組織にいるかで呼び名も変わる……」
本「結合組織、消化管、気道の粘膜、肺胞、肝臓に多く存在している」
大林「肝臓にいるのはクッパー細胞と呼ばれる」
本「ちなみに、血管が傷害されると凝固系が活性化され、『血塊』が形成される」
大林「ケッカイ?」
本「主な成分は血小板で、血液や体液の流出を防ぐだけでなく、微生物の中に閉じ込めることで血液やリンパに侵入するの防ぐ」
大林「まさに、結界!」
本「広範囲の病原体を殺す自然免疫系の可溶性エフェクター分子『抗菌ペプチド』の主要なものとしてデフェンシンがある。粘膜表面で恒常的に分泌されている」
Wiki「ディフェンシンは、抗微生物ペプチドで微生物の膜を破壊する」
大林「対微生物兵器みたいな感じか。補体と似てる……ちなみに、名前の由来ってディフェンス(防御)だったりするの?」
本&Wiki「…………」
大林「答えてくれよ!!!!!」
本「好中球もデフェンシンを産生し、貪食した病原体を殺すために使われる」
大林「あ、好中球の中にある顆粒に含まれてるのか」
本「他のものを傷つけないように、デフェンシンが完全に機能を発揮するのは限られた環境下……イオン強度の低い汗や涙、腸管腔、ファゴソーム…」
大林「うまくできてますなぁ……だからこそ異常が発生した時はやばそう」
本「もうひとつ覚えておいて。ペントラキシンは環状の多量体タンパク質のファミリーで、血液やリンパを巡回し、病原体表面に結合して破壊の攻撃目標になる」
大林「抗体と似た役割だ……自然免疫における攻撃目標ってことか。自然免疫も凄いな~どの細胞が作るの?」
本「骨髄系、内皮、上皮を含む多くの細胞で作られる」
大林「いわゆる免疫細胞……戦う細胞たち(総称は「白血球」)以外の細胞もけっこう色々分泌して対策してるってことか」
次回、第3章 自然免疫:感染に対する誘導応答!!!