見出し画像

1日10分の免疫学(44)自然免疫と適応免疫の共進化②

本「多くのNK細胞受容体MHCクラスⅠ分子やMHCクラスⅠ分子を認識する」
大林「MHC分子って自己の証でしょ、細胞がそれをうまく出せていないとNKは攻撃するんだよね。入門書で読んだ」

画像1


本「重要なNK細胞受容体としてCD94:NKG2A(抑制性NK細胞受容体)とNKG2D(活性化NK細胞受容体)がある」
大林「えぇと……細胞表面にある分子CD分類の94番目のNatural Killer  cell receptor Group(略NKG)の2のAと、Dってことかな?つまり、NK細胞の表面にある受容体の種類2のAは抑制性2のDは活性化として重要ってことでOK?」

★★★2021/12/9訂正★★★
CD94:NKG2Aは、NKG2A(NK細胞のレセプターの1つ)とCD94(細胞表面分子の一つ)の複合体という意味でした。(「Janeway’s免疫生物学」参照)


本「多くのNK細胞にあるCD94:NKG2Aは、糖鎖ではなくタンパク質リガンド……HLA-E分子結合する。この分子はHLA-A,B,C分子の全体量の指標であり、HLA-A,B,C分子は細胞の感染や腫瘍化で低下する」
大林「えーと……細胞感染したり、腫瘍化したら、細胞内部でHLA-AとHLA-BとHLA-Cという分子があまり作られなくなる。そして、これら三つの全体量に比例したHLA-Eが細胞表面に出るから、HLA-Eが少ない=この細胞はよくない状態だ!ってNK細胞が認識できるわけだな?」
本「HLA-A,B,Cが全く作られないような極端な状況ではHLA-Eは細胞表面に出ない」
大林「なるほどなぁ」

本「健常細胞上のHLA-Eと、NK細胞上のCD94:NKG2Aが結合すると、NK細胞内部に攻撃を抑制するシグナルが送られる。すると、NK細胞はその細胞から離れ、次の細胞を調べ始める」
大林「攻撃対象はこいつじゃねぇ!次行くぞ!って感じだな」

本「NKG2DのリガンドとしてMⅠC糖タンパク質(MHC class Ⅰ chain-related glycoprotein)がある」
大林「ん?エム・アイ・シーじゃなくてエムワンシーなの?」
本「この分子は健常細胞表面には発現していない。感染や腫瘍化、高温などのストレスにさらされたときに細胞内で作られるストレスタンパク質の一種」
大林「出た!ストレスタンパク質!タンパク質の本を何冊か読んでおいてよかった~」


本「NKG2DとMⅠCが結合すると細胞傷害が促進」
大林「NKG2Dは活性化受容体だもんね。そしてストレスタンパク質であるMⅠCが表面に出ている細胞は、おそらく良くない状態。排除すべし」

本「CD94NKG2AHLA-Eほとんど遺伝的変異がないので戦略として有効だが……」
大林「……だが、ってことは欠点もある?」
本「感染細胞や腫瘍細胞に見られる特定のHLAクラスⅠ遺伝子やアロタイプの喪失を検知する感度が低い」
大林「よくわからんけど、細胞を健常かそうでないかを判断するのに完璧な受容体ではないってことだな。見逃しも起こると」
本「たとえばHLA-C分子が何らの異常により作られなくなっても、HLA-Cの発現量はHLA-AとHLA-Bの和の1/10なので、総発現量としては9%しか減らない」
大林「なるほど、HLA-Cの異変だとNK細胞は検知しにくいのか」
本「それを補完するための抑制性受容体が、キラー細胞免疫グロブリン様受容体killer-cell immunoglobulin-like receptor」
大林「きたあああ!KIR(キア)!」

本「CD94:NKG2Aは、HLA-Eとの結合によりHLA-A,B,Cアロタイプ(6つ)の総発現量を確認し、抑制性KIRは、1~4つのアロタイプを確認して細胞の健全性を評価する」
大林「アロタイプってなんだっけ?そしてなんでABCで6つなの?誤植?」

本「KIR遺伝子ファミリーは、競合的な両方向性プロモーターをもち、順方向性の転写は遺伝子発現をもたらし、逆方向性の転写はDNAメチル化による遺伝子サイレンシングをもたらす」
大林「あ~タンパク質の本を読んでおいてよかった、なんとなくわかるぞ」
本「転写の方向遺伝子ごとにランダムに決まるので、異なる数と種類のKIR遺伝子を発現するNK細胞がうまれる。これにより、安定的なKIR表現型をもつNK細胞と多様なKIR表現型をもつNK細胞の集団が作られる」
大林「表現型とは?」
Wiki「ある生物のもつ遺伝子型が形質として表現されたものである。その生物の形態、構造、行動、生理的性質など…」
大林「うーん、ここでいうKIR表現型の『表現型』に深い意味を求めずにさらって読んでおいたらいいかな…」

本「NK細胞骨髄での分化の過程抑制性受容体を獲得すると、骨髄内の細胞でMHCクラスⅠ分子結合を試す
大林「おほぉ、幼い頃からお盛んですのぅ」
本「結合可能なMHCクラスⅠ分子に出会うと、シグナルが伝達されてNK細胞教育(NK-cell education)が始まり、NK細胞はMHCクラスⅠ分子欠損を
検知する能力を獲得
する」
大林「チュートリアルみたいな感じなの?最初の結合で相手の細胞を、あっ、これがMHCクラスⅠ分子!自己!と知る感じかな」

本「教育を終えたNK細胞は骨髄を出て循環血に入り、MHCクラスⅠ分子が減少した非健常細胞に出会うと破壊する」
大林「なるほどねぇ」

本「ちなみに、抑制性受容体の強度MHCクラスⅠ分子の喪失による活性化の強度直結していて、つまり、強力な抑制性受容体があるほど強力なNK細胞となる」
大林「まるで、弱いやつほどよく吠える…の反対だな」

本「CD94:NKG2Aを発現しているNK細胞には抑制性KIRは発現していない」
大林「どっちかってこと?」
本「CD94:NKG2Aは哺乳類進化の過程で最初に出現した抑制性MHCクラスⅠ受容体の1つ」
大林「へぇ」

本「抑制性受容体の教育を受けずに循環血に入るNK細胞もいる」
大林「エエエ……MHCクラスⅠ分子の欠損をチェックできないNK細胞じゃん」
本「そのようなNK細胞の機能は不明で、今進行中の研究によると、NK細胞の教育は不可逆的なものではなく、骨髄以外での追加教育や修正が起こりうるとか……」
大林「なかなかロマンを感じますな……続報期待!」

今回はここまで!

いいなと思ったら応援しよう!