1日10分の免疫学(29)T細胞と免疫⑪
本「制御性T細胞は、CD25を高発現し、IL-4、IL-10、TGF-βなどの免疫抑制性あるいは抗炎症性サイトカインを産生する。抑制活性は制御性T細胞と標的細胞との物理的な接触に依存している」
大林「えぇと、CD25が表面にたくさん出てるのが制御性T細胞ってことか、覚えておこう。制御性T細胞 Regulatory T cell 略してTreg。T細胞の中で唯一、免疫を抑制する…正確にはエフェクターT細胞を抑制する働きを担う存在!免疫系の守護神!!!」
本「制御性T細胞がエフェクターT細胞応答を抑制する機序の1つとして、
免疫応答を起こす二次リンパ組織に入り、樹状細胞と相互作用することで他のナイーブT細胞が相互作用するのを防ぐのではないかと考えられている」
大林「つまり、ナイーブT細胞が活性化しないように先回りするわけか」
本「制御性T細胞がエフェクターT細胞に直接相互作用することで機能する機序もある」
大林「体当たりで止めて抑制する……えろい!」
本「B型肝炎ウイルスに感染すると、多くの人は慢性肝炎を発症する。患者の肝臓と血中には、B型肝炎ウイルスに特異的な制御性T細胞が異常に多く存在し、免疫抑制性サイトカインであるTGF-βと、エフェクターT細胞との直接的な相互作用が見られる」
大林「マジで……B型肝炎ではTregが悪役に?!」
本「ヒトの制御性T細胞の特徴はFoxP3の発現」
大林「出た!FoxP3!免疫応答に関係するタンパク質のひとつ!漫画で描いてるから名前だけやたらと覚えたFoxP3。FOX3に似てるよね、名前」
WEB「全然違うけどな」
本「機能的なFoxP3をもたない小児では、制御性T細胞が機能せず、小児に致死的な免疫異常をもたらす」
大林「FoxP3が思ったより重要!Tregが機能しないと自己抗原への攻撃始まっても止められないもんな……あらゆる組織が攻撃されてしまう」
本「唯一の治療法は、造血細胞移植」
大林「それは先に免疫細胞を滅ぼしてからやるやつ?」
◆ここまでの復習◆(復習は何度でもやる)
6種類のエフェクターT細胞に共通する原理
:TCR(T細胞受容体:T cell receptor)により認識される病原体由来のペプチドを提示する標的細胞と共役対を形成する
CD8T細胞(細胞傷害性T細胞:CTL:キラーT細胞:Tc細胞)
:サイトトキシンで標的細胞を殺す。サイトカインも分泌して他の免疫細胞の活性化もする。
CD4T細胞
:サイトカインを分泌して標的細胞の免疫応答を増減させる。
増はTh1,Th1,Th17,Tfh。hはHelper(ヘルパー)の略、fはfollicular (濾胞性)の略。
減はTreg。regはRegulatory(制御)の略。
Th1はマクロファージを増強。
Th2は好塩基球、マスト細胞、好酸球を増強。
Th17は好中球を増強。
TfhはB細胞と相互作用することで応答を増強する。
Tregだけが、唯一、他のエフェクターT細胞と相互作用して応答を減弱させる存在。
CD8T細胞による細胞傷害
:CD8T細胞はサイトトキシンを含む傷害顆粒を標的表面に放出することでアポトーシスへと誘導し、1つの標的を殺傷した後、続けて別の標的を殺傷できるように傷害顆粒を新たにかつ速やかに合成し、次々と傷害していく。
アポトーシス
:細胞内部でタンパク質を分解し、細胞の生存に必要な機能や、細胞内に潜む病原体までもその分解が及ぶ。細胞は内部から分解され、破裂することなく委縮して死ぬため、病原体は閉じ込められたまま死ぬ。
他方、ネクローシスの場合は、細胞が壊れて病原体を含む中身が放出されるために、周囲に炎症をもたらすことになる。
CD4T細胞による標的細胞へのサイトカイン分泌
:CD4T細胞は、特異的な抗原を提示した標的細胞を認識すると共役対を形成し、強固に結合してからサイトカインを新たに作り、結合した標的細胞にだけにサイトカインを浴びせ、活性化させる。言い換えると、排除したい病原体を提示しているマクロファージ等だけが選ばれて活性化するという安全弁的なシステムとなっている。
復習はここまで!
本「次回は第9章!B細胞と抗体による免疫!」
大林「ほんと、この本、B細胞とT細胞の説明を交互に進めていくよね」