1日10分の免疫学(16)B細胞の分化①
第6章 B細胞の分化
本「骨髄幹細胞から形質細胞までの分化の説明をします」
大林「B細胞は骨髄幹細胞から始まる……」
本「B細胞は毎日およそ600億個供給され続けている」
大林「桁がすごいな!」
本「B細胞の分化は6つの段階に分けられる。前半3つは骨髄で起こり、後半3つは二次リンパ組織で起こる」
大林「ちょうど半分か~覚えやすい」
本「まず、多能性造血幹細胞から、骨髄系共通前駆細胞とリンパ系共通前駆細胞に分かれます」
大林「多能性造血幹細胞……何にでもなれそうな響き。リンパ系共通前駆細胞ってことは、リンパ……T細胞、B細胞、NK細胞になるコースだな!」
本「B細胞として最初に識別できる段階では、プロB細胞pro-B cellと呼ばれる」
大林「B細胞としては一番ひよこの時代にプロと呼ばれるの?!なんでや!」
本「プロB細胞(早期プロB細胞→後期プロB細胞)→プレB細胞(大型プレB細胞→小型プレB細胞)→未熟B細胞…」
☆メモ
「多能性造血幹細胞」から
↓
「リンパ系共通前駆細胞」に分化する(この段階で将来は、B細胞・T細胞・NK細胞になることが決まる)
↓
プロB細胞(早期プロB細胞→後期プロB細胞)に分化※この段階で初めて「B細胞」として識別できるようになる
↓
プレB細胞(大型プレB細胞→小型プレB細胞)
↓
未熟B細胞
↓
成熟B細胞
↓
形質細胞※B細胞の最終形態
大林「プロからプレ、大型から小型になるのか」
本「……少し脱線するけど、ここまで説明したB細胞とは異なるB細胞集団がある」
大林「なんですと?」
☆B-1細胞とB-2細胞
本「胎生初期のヒトB細胞は、CD5を発現している少数の集団で、他のB細胞よりも先行して分化する。B-1細胞(B-1cell)と呼ばれる」
大林「新キャラぁ~!」
本「今まで説明してきたのはB-2細胞」
大林「世の中の話題にのぼるのは基本的にB-2細胞ということか」
本「B-1細胞はCD5 B細胞とも呼ばれ、出生前期に最も活動的で、分泌する抗体は多種類の抗原に結合する(多特異性)。生後しばらくすると骨髄で作られなくなり、抹消の循環で自身の分裂で数を維持する」
大林「へー、B-1細胞が何故いるのか気になるなぁ…詳しく知りたい」
本「ちなみに慢性リンパ性白血病chronic lymphocytic leukemia:CLLのほとんどはB-1細胞によって引き起こされる」
大林「なんだって?」
本「まとめ。B-1細胞は、胎生期のごく初期だけ骨髄で作られ、あとは自分で増える。分泌する抗体はほとんどがIgMで、多特異性・低親和性。B-1細胞は単純で、進化的に古いB細胞であることが考えられる」
大林「やべぇ…古代種みたいな感じがする、ロマン!」
☆自己抗原に親和性を持つ未熟B細胞の排除
本「話をB細胞の分化に戻す。遺伝子再編成と体細胞変異によって、抗原特異性を持つIgMを発現した未熟B細胞がつくられる」
大林「自己抗原に結合する未熟B細胞は排除されるんだよね」
本「75%の未熟B細胞は自己抗原に対して親和性を持つ」
大林「思ったより多いな!その75%はどうやって排除されるの?」
本「骨髄内で、間質細胞・造血細胞・循環血清中の巨大分子などが発現している様々な自己抗原に曝される」
大林「ヒェッ、罠だ!」
本「これらの自己抗原に反応しない受容体を持つ未熟B細胞だけが骨髄を離れることを許され、成熟する」
大林「なるほど……反応してくっついたら骨髄から離れられないよなぁ…うまくできてる」
本「この成熟の過程でB細胞は、IgMとIgDを作り、最初はIgMが多いが、IgDが多い状態に切り替わる」
大林「骨髄で自己抗原に反応しちゃった未熟B細胞はどうなる?」
本「分化を停止させるシグナルを受け取り、BCRを変化させて自己抗原への反応性をなくす機会が与えられる」
大林「再試験があるのか」
本「遺伝子再編成を繰り返して自己抗原に反応しない受容体を作る過程を受容体編集receptor editingという。なお、この遺伝子再編成は有限…」
大林「再試験の回数制限があるわけか」
本「ダメだったらアポトーシスで骨髄中で死んで、マクロファージが貪食する」
大林「スタッフがおいしくいただきm……」
本「毎日約550億個のB細胞が骨髄内で死んでる。死因は、機能的免疫グロブリンを作るのに失敗したか、自己反応性をもたない受容体を作るのに失敗したかである」
大林「550……億……??毎日???」
今回はここまで!