1日10分の免疫学(27)T細胞と免疫⑨
本「エフェクターT細胞の機能はサイトカインとサイトトキシンでもたらされる」
大林「トキシンは毒素って意味だよね」(toxin:毒素【ドイツ語】)
本「すべてのエフェクターT細胞はサイトカインを分泌し、サイトトキシンを分泌するのはCD8T細胞(細胞傷害性T細胞)のみである」
大林「細胞を殺傷する毒ゥ!」
◆復習メモ
サイトカイン(cytokine)
:細胞が分泌する低分子のタンパク質で生理活性物質の総称。細胞間の相互作用に関与する。
cyto(細胞)+kine(作動因子※)の造語
※kinein:「動く」(ギリシア語)に由来する
細胞傷害性T細胞(cytotoxic T lymphocyte:CTL、Tc細胞、キラーT細胞ともいう)……細胞表面に表面タンパク質の「CD8」があるのが見分けポイント。長い名前は8文字なのでちょうど覚えやすい。獲得免疫におけるキラー細胞。特定の敵(に感染したことを提示する細胞)だけを攻撃する。
本「サイトカインは標的細胞の挙動を変えて、サイトトキシンは標的細胞を殺傷する。サイトカインとは分泌型あるいは膜結合型の小さなタンパク質」
大林「免疫に必須の要素!」
本「T細胞が産生する多くのサイトカインはインターロイキンと呼ばれる」
大林「IL-1とかIL-2とか、発見順にナンバリングされてるんでしょ」
本「リンパ球が産生するサイトカインは、リンホカインと呼ぶこともある」
大林「呼び名がややこしく……」
◆整理メモ
サイトカイン……(主に免疫系の)細胞が分泌するタンパク質
リンホカイン……リンパ球※(T細胞、B細胞)が分泌するタンパク質
インターロイキン……T細胞が分泌するタンパク質
※研究の進み具合等の経緯から、「リンパ球」と記載されていてもNK細胞が含まれていない場合があります。Tリンパ球、Bリンパ球という呼び名が文献やインターネットで散見されるにも関わらず、NKリンパ球という呼び名はほとんと見かけません。Tリンパ球、Bリンパ球という呼び名が少しずつ使われなくなっているようです。
※すごい蛇足だけど、私の推し細胞のひとつ「NKT細胞」は発見されたとき「第4のリンパ球」と呼ばれていました。ひぃぃいいもえたぎるぅぅう!
本「産生する主要なサイトカインによって主たるCD4T細胞が区別される」
大林「メインで産生するサイトカインでTh1,Th2,Tfh,Th17,Tregに区別されるわけだ……エッセンシャル免疫学に表があるけど、これ覚えられるかな」
本「サイトカインはあらかじめ作って貯蔵されたりすることはない」
大林「へぇ、全部作り立てなの?じゃあ、CD8T細胞のサイトトキシンは?たしか、ナチュラルキラー細胞って毒素溜め込んだ状態で巡回してるよね」
本「CD8Tはサイトトキシンを大量に作り、傷害顆粒lytic granuleの中に蓄える」
大林「えぇ……めっちゃかわいい…さすがは推し」
本「サイトトキシンには、グランザイム、パーフォリン、セルグリシン、グラニュリシンが含まれる」
大林「パーフォリンは細胞膜を破壊するんだよね。細胞傷害のやり方はCD8T細胞もナチュラルキラー細胞もほぼ同じなんだっけ?」
本「両者の異なるところは、感染細胞と健康な細胞の見分け方にある」
大林「CD8T細胞は特異的な病原体に感染してる細胞だけを標的にするから、TCRで見分けてるよね」
◆TCR:T-cell receptor T細胞受容体
……遺伝子再編成によりT細胞ごとに異なり、驚異的な種類(理論上10の18乗=100京)で未知の病原体にも対応可能性を有する。
つまり、「ひとつのT細胞は、たった1種類※の敵のみを認識、攻撃する」
※厳密には約1種類。T細胞は、運命の抗原と接触すると活性化し、ものすごく増えて「敵」を排除します。
本「そう。CD8T細胞はTCRのみを使う。一方、NK細胞は様々な受容体を使う」
大林「NK細胞は非特異的な……自然免疫のセンサーを使う。ウイルスとかに共通の特徴を感知するセンサーだよね」
本「CD8T細胞は特異抗原により活性化されると、不活性型のサイトトキシンを合成し、膜結合型傷害顆粒に貯蔵する」
大林「そして感染部位に移動して特異抗原を提示してる感染細胞を探す」
本「まずは非特異的に細胞に接着し、抗原特異的な認識により接着を強固にし、標的細胞表面に顆粒を分泌する」
大林「まぁ、細胞には人間みたいな目はないから、まずは片っ端から細胞に接着して確かめるしかないよね……それでこいつだ!って認識したらがっつりと接着して傷害するわけだ……」
本「標的細胞が死滅し始めると、CD8T細胞は離れ、新しい顆粒を作り始める」
大林「NK細胞と違って長期戦可能なんですね!ヒャッホウ」
※NK細胞には”標的細胞を殺すのは一度限りという制限もある”(「エッセンシャル免疫学第3版」74ページ)
本「このようにしてCD8T細胞は多くの感染細胞を順次殺していく」
大林「ヒエエエエ!頼もしくてそして怖くてかっこいい!」
本「CD8T細胞は細胞を傷害するだけではない」
大林「えっ、まだ何か能力が?!惚れすぎる!」
本「サイトカイン分泌でも免疫応答に貢献している……たとえばIFN-γで、感染細胞の中のウイルス複製を阻害し、ウイルス抗原処理や提示を促進、マクロファージの活性化も行う」
大林「そこはNK細胞とお揃いですな」
本「CD8T細胞によって殺される細胞はアポトーシスによって死ぬ」
大林「アポトーシスはプログラムされた自殺、ネクローシスは物理的化学的傷害による溶解や自壊だよね」
本「そう。アポトーシスは内部から自殺誘導され、内容物を維持しつつ縮小してきれいな死骸を残す」
大林「きれいな……死骸……ウッ」
◆今回のパワーワード
きれいな死骸
今回はここまで!