1日10分の免疫学(34)粘膜①
第10章 粘膜表面の感染防御
本「皮膚を介して生体内に侵入する病原体の種類は少ない」
大林「粘膜から侵入するのが多いよね。貴方の風邪は鼻から?喉から?」
本「ヒトの免疫系は2種類の半自律性要素からなる。皮膚からの侵入に対する全身免疫系と、呼吸器粘膜表面などからの侵入に対する粘膜免疫系」
大林「へぇ~、そんな分類はじめて知った!」
大塚製薬「粘膜免疫を突破して体内に病原体が侵入すると、次の防御の仕組みが働きます。これが全身免疫です。」
大林「……ぉぃ、なんか説明が噛み合ってないぞ、どっちが正しいの?」
本「粘膜表面と粘膜mucosaは手足を除いた生体内の大部分に存在する」
大林「ミュコーザ?グーグルに発音してもらったけど発音微妙にわからんな」
本「粘膜は粘液mucusを分泌し、粘液でできた厚い流動体の層に全体が覆われている」
大林「ミューカス?」
本「粘液は、糖タンパク質、プロテオグリカン、ペプチド、酵素でできていて、上皮細胞の損傷を防ぎ、感染防御を補助する」
大林「しっとりしてる方が傷つきにくいイメージあるなぁ。粘液の材料わかってるなら人工的に作れるの?抗がん剤とかで口がひどいドライマウスになってる人に塗るとかないの?」
WEB「保湿ジェルならあります」
本「生体と外界でやりとりする組織には粘膜上皮層がある」
大林「外界とやりとり……呼吸と食事の、気道や消化管かな?」
本「尿生殖路もね。あと、膵臓、結膜、涙腺、唾液腺、乳腺といった外分泌腺にも粘膜上皮層はある」
大林「あー、外分泌も外界との接触ポイントか」
本「ガス交換、食物の吸収、感覚器官、生殖といった機能を果たすために粘膜表面は動的で薄く浸透性を保ったまま保護する必要がある」
大林「無理難題だな?!」
本「粘膜組織はその役割ゆえに病原体からの損傷を特に受けやすい」
大林「外界との接触ポイントだもんなぁ」
本「上皮細胞層は、共生微生物や病原微生物が組織内に侵入するのを防いでいる」
大林「あー、そうか、共生微生物であっても組織内に侵入するのはまずいのか」
本「粘液はさらに環境物質の侵入も防いでいる」
大林「煤煙とかな」
本「粘液に粘性と防御機能をもたらす分子基盤はムチンmucinと呼ばれる糖タンパク質ファミリー」
大林「ムチン?なんか聞いたことあるな……納豆とか、オクラとかのねばねば成分。あれって糖タンパク質だったのか」
大林「糖タンパク質って、タンパク質を構成するアミノ酸の一部に糖鎖がくっついたやつだよね」
本「ムチンは上皮細胞から分泌され、ポリペプチド鎖が10000個以上のアミノ酸からなる巨大分子」
大林「えぇと……ポリペプチドってアミノ酸が11個以上だっけ?それが1万回繰り返された合体?でっか!」
◆復習
アミノ酸が50個以上結合したものがタンパク質。
50個未満のがペプチド。
ポリとは『たくさん』という意味で、アミノ酸が11個以上だとポリペプチド
アミノ酸1個→アミノ酸
アミノ酸2~10個→ペプチド
アミノ酸11~49個→ポリペプチド
アミノ酸50~→タンパク質
本「粘膜上皮は2日間周期で代謝する動的な組織」
大林「粘膜が傷ついても回復早いって言うよね、2日周期か。早い」
共生微生物の消化管における役割について
大林「消化管は口から肛門までだよね、成人だと約9メートル。食物を取り込み、分解、吸収、不要な部分は排泄する」
本「口腔には750種以上の細菌が生存している」
大林「思ったより種類豊富だな!」
本「胃は微生物にとっては生息しにくい」
大林「強い酸性の世界だもんねぇ」
本「食物は消化管を進みながら、非常に多くの共生細菌に遭遇する」
大林「口腔だけで750種だもんな……胃や腸は一体どれだけの」
本「胃では1mlあたり1000個の細菌が存在し、小腸では1mlあたり100000-100000000個、大腸では1mlあたり1000000000000個の…」
大林「桁が!えぇ、胃は千、小腸は10万~1億、大腸は1兆?千で億で兆か、おぼえやすいな」
本「共生微生物の数の増加は動的であり、適度に維持するために毎日大量の共生微生物が人体から排出されている」
大林「適度に追い出されてるのかw」
本「細菌は人の健康に不可欠です。」
大林「たしか、ヒトの細胞が作り出せない物質とか、分解できない物質とか細菌の力を利用してるんだよね。というか、待って、さっきまで微生物って言ってたのに、今、細菌って言ったよね?お役立ちなのは共生微生物のうち、細菌だけってこと?」
本は答えない!!!
日本微生物生態学会「微生物とは目にみえないくらい小さな生物のことです。細菌、菌類、ウイルス、微細藻類、原生動物(アメーバやゾウリムシなど)などが含まれます。」
本「微生物由来酵素には、食物や病原体由来の毒性物質を無害なものに変えるものもある」
大林「今度は微生物かーい!えぇと、その微生物がいないと食べたら有害な食物があるの?なんだろう……何かどこかで聞いたことあるような?」
本「あと、大量の健常な共生微生物は病原微生物から栄養と生育空間を奪うことで繁殖を抑える」
大林「それは日経サイエンスで読んだことあるぞ、あとNHKスペシャルでも言ってた!要はテリトリーの取り合いで、人体にとって特に害のない微生物が生存していることで、結果として、都合の悪い微生物が増える隙を与えないってやつでしょ。別にヒト細胞とその微生物が仲良しというわけでもなく(擬人化漫画では仲良し表現になりがち)、特に害のない微生物も、人体の均衡が崩れたときに一変して害をなす場合だってある……面白いよなぁ」
今回はここまで!