
1日20分の免疫学(31)リンパ球⑲
NKT細胞について(つづき)
本「ウイルス感染防御での、胚中心の形成と抗体産生につき、初期はIL-4産生NKT細胞が働き,後期はTFH 細胞が働くとされる」
大林「えっ!まじか!全部Tfh細胞だと思ってた!最推しすごすぎない?!」
※濾胞性ヘルパーT(Tfh)細胞:体液性応答に関わるCD4陽性ヘルパーT細胞のサブセット。Tfh細胞は、扁桃腺、脾臓、およびリンパ節などの二次リンパ組織にみられます。Tfh細胞の役割は、胚中心(GC)B細胞を抗体分泌血漿およびメモリーB細胞に誘導すること。したがって、Tfh細胞は病原体に対する免疫応答を開始するために不可欠。
本「CD4陰性NKT 細胞でRORγtが発現してIL-17を産生するものもある。これはIL-23レセプター, IL-15 レセプターを持ち、CCR 6陽性CD 103陽性CD 121陽性で,成熟に PLZFを必要としない特徴があり、リンパ節に多い」
大林「RORγtとは?」
WEB「RORγt(レチノイン酸受容体関連オーファン受容体αおよびγt)で、TH17細胞の分化に不可欠」
Wiki「RAR-related orphan receptor gamma (RORγ) is a protein that in humans is encoded by the RORC (RAR-related orphan receptor C) gene.」
大林「ふむ……つまり、RORγtが発現しているT細胞はIL-17を産生する、ってことかな。それでそのRORγt発現IL-17産生NKT細胞はリンパ節で何してるの?」
本「好中球を動員して細菌の防御や炎症性疾患の発生に関与している可能性がある」
大林「さすがは第一防衛(自然免疫)と第二防衛(適応免疫)を架橋する指揮官……!」
本「Bcl-6, CXCR5,PD-1,CD4を発現した iNKT細胞は、リンパ濾胞でB細胞が提示する糖脂質抗原に反応してB細胞の抗体産生を補助する(NKTfh細胞)」
大林「PD-1とCD4はわかるけど、Bcl-6がわからん。CXCR5はケモカイン関連だったかな……」
※PD-1(Programmed cell Death 1):活性化T細胞の細胞表面に発現する受容体のひとつ。PD-L1(がん細胞などに発現するリガンド)が結合すると、そのT細胞にブレーキがかかる。
※CD4:T細胞の表面に発現する補助受容体。MHCクラスII分子に結合する。CD4が発現する主なT細胞に、ヘルパーT細胞がいる。
※CXCR6:ケモカイン受容体。
※Bcl-6:B細胞の分化マーカー。細胞核内で遺伝子の転写抑制因子として機能する。
本「iNKT細胞は、アポトーシスした細胞に反応してIL-10を産生し、アポトーシス細胞由来の抗原に対する自己抗体を産生するB細胞を抑制する」
大林「わぉ、そんなことまで?!流石は最推し、たのもしい!」
本「肝由来のCD4陰性CD8陰性NKT細胞はIFN-γを産生する。抗腫瘍作用がつよい」
大林「肝臓から来たダブルネガティブはサイトカインで腫瘍を制圧するのか」
本「胸腺由来のCD4陰性CD8陰性NKT細胞は自己免疫を抑制する」
大林「ほぉ。同じダブルネガティブでも出身校によって機能が異なるってことかな」
本「脾由来のCD4陽性NKT細胞は、CD8陽性レギュラトリーT細胞を誘導する」
大林「CD8陽性レギュラトリーT細胞……CD8って細胞傷害T細胞のイメージが強いんだけどレギュラトリーもいるんだね…なんかよくわからなくなってきた」
WEB「自己免疫性の糖尿病はCD8陽性制御性T細胞によって抑制される」
WEB「制御性T細胞は過剰な免疫応答の抑制に働くT細胞サブセットで、CD4陽性(CD4 Treg)とCD8陽性(CD8 Treg)の二群に分けられるが、老化に伴って、特にCD8 Tregの機能が低下する。高齢発症RAは若年発症RAに比べ、CD8 Tregの機能不全のため疾患活動性が高く、関節破壊が進みやすいという仮説を検証する。」
大林「何ですって?!!!TregはそもそもCD4とCD8の両方あるって今まで読んできた教科書に書いてませんでしたけど?!CD4だけって!マジかよ!擬人化紹介を訂正しなきゃ!」
本「TCRへの刺激が1回だとIFN-γ産生,繰り返しだと IL-10産生が生じる」
大林「何その連打切替」
本「また、NKT細胞は反復してリガンドと反応すると反応性を失い、増殖が低下し、 IL-2、IFN-γ、IL-17の産生が低下してIL-10を産生するようになり、樹状細胞にIL-10を産生させることでIL-10を産生するTr1細胞を誘導し免疫トレランスをもたらす(iNKT細胞アネルギー)」
大林「ふーむ。何度も反応することで、抑制に傾くってことか。攻撃が激化するのを止めようとするのかな。それにしてもiNKTって言ったりNKTって言ったり、どっちだよ」
本「新生児のNKT細胞は、樹状細胞がDC1のときはIFN-γを産生し、DC2のときはIL-4を産生する」
大林「DC1とDC2って、樹状細胞がTh1に誘導するならDC1,Th2に誘導するならDC2ってやつだったよね?」
※DC1:ミエ ロイド系樹状細胞
※DC2:リンパ球系樹状細胞
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika1913/92/10/92_10_2047/_pdf
web「ヘルパー T 細胞には,以前から Th1,Th2,そ. れに伴い,抗原提示細胞である樹状細胞にも DC1,. DC2 と大きく分けられており…」
https://www.chugaiigaku.jp/upfile/browse/browse1652.pdf
本「ちなみに。樹状細胞はTNF-αの影響を受けるとCD1dと共に糖脂質iGb3を表出して、それに反応したNKT細胞はIL-10を産生することで樹状細胞にIL-10を産生させる。この樹状細胞が提示する自己抗原に反応したT細胞はTr1細胞に分化する」
大林「この説明だと、樹状細胞の役割の方が大きい感じだな。最推しはあくまで間接的な活躍じゃない?」
本「でも、このNKT細胞が、IL-4,13,10を産生して自己反応性T細胞を直接Th2細胞やTr1細胞に分化させることも考えられるよ」
大林「直接?!!」
本「iNKT細胞は、IL-2,3,4,5,6,9,10,13,17,21,22,23,IFN-γ,TNF-α,TGB-β,GM-CSF,RANTES,eotaxin,MIP-1α,MIP-1β,osteopontinを産生する能力をもつ」
大林「きゃー!流石は免疫界のスイスアーミーナイフ!素敵!」
本「そして状況によっていずれかを産生する」
※GM-CSF:好中球やマクロファージの進展を刺激し、前赤血球巨核球細胞や好酸性前駆細胞の増殖と進展を促進する造血成長因子。好中球の移行を阻害し、成熟細胞の機能的な活性を強める。
※RANTES(ランテス、regulated on activation, normal T cell expressed and secreted):血小板第4因子(PF4)スーパーファミリーに属するケモカイン。CCL5とも呼ばれ、活性化の3-5日後のT細胞によって生産される。
※Eotaxin(エオタキシン):好酸球に対 して造血からエフェ. クター機能までライフサイクル全体にわたる作用をもつ。好酸球、好塩基球、Th2リンパ球等の免疫細胞を動員することにより、アレルギー性および非アレルギー性炎症反応の両方において中心的な役割を果たす。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/iryo1946/54/2/54_2_73/_pdf
※MIP-1α,MIP-1β(マクロファージ炎症性タンパク質macrophage inflammatory protein: MIP)は、ケモカインと呼ばれる走化性サイトカインのファミリーの1つで。ヒトではMIP-1α、MIP-1βと呼ばれる2つの主要なメンバーが存在する。公式にはそれぞれCCL3(英語版)、CCL4(英語版)と呼ばれている。
※Osteopontin (OPN) :骨芽細胞、腎臓細管細胞、マクロファージ、活性化されたT細胞および血管平滑筋細胞を含む多くの細胞によって分泌される高酸性、カルシウム結合性、糖鎖結合のリン酸化タンパク質。
今回はここまで!