1日10分の免疫学(19)T細胞の分化②
本「ダブルポジティブ胸腺細胞(DP)のうち、最大で2%程度がMHCクラスⅠあるいはⅡと相互作用できる」
大林「たったの2%…」
本「相互作用できなかったT細胞はアポトーシスにより死滅させる」
大林「正の選択おそるべし……」
本「正の選択を詳しく言うと、胸腺皮質上皮細胞はクラスⅠとⅡの両方を発現させ、自己ペプチドを載せて提示。3~4日のうちに胸腺細胞たちが相互作用できるかを試す」
大林「つまりその3~4日のうちにMHCにDP胸腺細胞が結合できたら合格?」
本「そう、正のシグナルが送られ、成熟が進行する」
本「このとき結合したMHCでその後が決まる」
大林「クラスⅠとⅡのどちらに結合したかで、えーと、ヘルパーTかCTLかが決まるわけだ」
本「そしてシングルポジティブ胸腺細胞となる」
MHCクラスⅠと結合→CD8が残る→細胞傷害性T細胞へ
MHCクラスⅡと結合→CD4が残る→ヘルパーT細胞へ
※MHCクラスⅠ分子は、ほとんどすべての細胞がもってる
※MHCクラスⅡ分子は、限られた細胞のみがもつ。例:マクロファージ、樹状細胞、B細胞など。これらを「プロフェッショナル抗原提示細胞」と呼ぶ。
本「シングルポジティブとなったT細胞は、それぞれの機能を担うプログラムを指導させる」
大林「CD4ならヘルパー機能を、CD8なら細胞傷害性機能を!」
本「正の選択は胸腺皮質の上皮細胞によってのみ行われるが、負の選択はさまざまな細胞によって行われる」
本「最も重要なのは、骨髄由来の樹状細胞とマクロファージ」
大林「自己抗原をT細胞たちに提示して、それに強く結合したT細胞をアポトーシスさせる負の選択!でもこの試験も完璧ではないんだよね?」
本「胸腺での負の選択をすり抜けた自己反応性T細胞の活性化を抑える機構もある」
大林「おぉ!マジで?!」
本「末梢性免疫寛容と呼ばれる機構で、自己反応性T細胞をアネルギー(不応答)状態にする機能もある」
大林「その辺もっと詳しく知りたいなぁ」
本「CD4T細胞にはヘルパー機能以外のものがあり、自己反応性のCD4T細胞活性化を抑制する」
大林「きた!制御性T細胞!」
本「制御性CD4T細胞regulatory CD4 T cell、または制御性T細胞regulatory T cell,Treg細胞」
大林「免疫界の守護神~!最後の砦!」
本「制御性T細胞は自己抗原に特異的なT細胞受容体をもっている」
大林「あと、CD25が発現していて、FoxP3という転写抑制因子を使ってるんだよね」
本「制御性T細胞は、MHCクラスⅡに提示された自己抗原を認識すると、増殖せず、同じ抗原に反応するナイーブT細胞の増殖を抑制する」
大林「ほおおお!」
本「抑制するためには細胞同士の接触が必要であり、活性化やエフェクターへの分化を阻害するサイトカインの産生も必要」
大林「接触ゥ!詳しく詳しく!!」
本「制御性T細胞が、胸腺でどのような選択を受けて分化するかはまだよくわかんない」
大林「ああああ気になる気になる!焦らしプレイ!」
本「そろそろこの章のまとめを。αβ型T細胞のごく一部が、正と負の選択をクリアして胸腺を出て、成熟ナイーブT細胞となり、体内を循環する」
大林「血液→二次リンパ組織→リンパ→血液……運命の抗原に出会えなければ刺激がなくて死んじゃうんだよね」
本「成熟B細胞よりは長生きする、何年もね」
大林「あっ、そうなんだ。B細胞は約100日で死ぬのと比べたら長生き」
第7章 T細胞の分化 まとめ
◆胸腺細胞は、αβ型受容体とCD4とCD8を発現した後(ダブルポジティブ)、胸腺の皮質上皮細胞による正の選択を受ける。その間、α鎖遺伝子は再編成を続ける。
◆正の選択のMHCクラスで、CD4かCD8のどちらの補助受容体が残るかが決まる(シングルポジティブ)。
◆負の選択は、主に骨髄前駆細胞に由来する樹状細胞とマクロファージにより行われる。
◆正と負の選択を生き抜いた成熟T細胞は胸腺を出て、外来抗原と遭遇する場である二次リンパ組織を循環し、抗原刺激によりエフェクター細胞へ分化する。
◆胸腺での負の選択をすり抜けた自己反応性T細胞は、自己抗原との接触によりアネルギー(不応答)状態へ誘導されるか、制御性T細胞によって抑制される。
大林「結局、γδ型T細胞ってなんだったの?」
本「胸腺細胞は三種類のT細胞に分化する。MHCによって提示されたペプチド抗原を認識しないγδ型と、認識するαβ型のCD4またはCD8という補助受容体を持つT細胞」
大林「あっ、γδ型はMHCで提示されたペプチドを認識しないんだ?!じゃあなにするの?」
本は答えてくれなかった!!!
~2020/10/15追記:1日10分の免疫学(45)自然免疫と適応免疫の共進化③で説明があります 以上~
本「T細胞分化は複数のタイプを作り出すという点でB細胞分化とは異なり、仕組みも複雑」
大林「へへ…流石は我が推し」
本「T細胞は分化過程で大部分が死に、多くの細胞を無駄にしているともいえる。非常に厳しい基準をクリアした数%の細胞だけが胸腺を出て循環に入る。胸腺は若い間だけ機能し、一生使えるようなレパートリーを用意して徐々に機能を失っていく」
大林「全米が泣いた」
今回はここまで!