1日10分の免疫学(43)自然免疫と適応免疫の共進化①

第12章  自然免疫と適応免疫の共進化

大林「ヒャッホー!推しと推しの共進化ですね!共に高め合ってきたんですね!」

◆復習メモ
自然免疫:獲得免疫の前に作動する身体を病原体等から防御する仕組み。汎用性が高い(非特異的)。獲得免疫は、自然免疫による防御が破られてから発動する。

適応免疫(獲得免疫)特定の標的に対し、特化して構築される防御システム(特異的)。標的の情報を記憶し、二度目以降に備える。同じ標的による感染が繰り返されるほど強力になる(標的が変異したら最初からやり直し)。T細胞B細胞が担う。

本「20世紀の免疫学研究は、炎症と呼ばれる自然免疫を研究する少数派と適応免疫を研究する多数派に分かれていた」
大林「適応免疫の方が研究が盛んだったんだよね」
本「ふたつの免疫系のつながりで最も重要なのは、良質の抗体のためには炎症反応の先行が必要ということ」
大林「へぇえ、新コロにもつながりそうな情報だな。肺など限定された場所の感染に留まる場合は十分な免疫を獲得できない可能性が云々ってニュースで見たよ」

本「自然免疫と適応免疫の協調が必要不可欠であると広く認識されたのは1990年代」
大林「免疫といえばその名の由来を考えれば(「二度目の疫を免れる」)適応免疫だけど、始まりは自然免疫だもんね。進化の過程で脊椎動物が適応免疫を手に入れた……」

◆復習メモ
脊椎動物だけが適応免疫をもつらしい。

本「自然免疫が誕生したのはおよそ6億年前獲得免疫4億年前
大林「2億年の差があったか……というか免疫の始まりは6億年前かぁ……ロマンだ」

§ 適応免疫の出現後に自然免疫がどのような進化を遂げたか

本「リンパ球の種類を言ってみて」
大林「NK細胞(ナチュラルキラー細胞)、B細胞、T細胞、……あと、第4のリンパ球として発見されたNKT細胞!少し古い教科書だと、Bリンパ球、Tリンパ球と書かれてるけど、NKリンパ球って書かれてるのはないよね。それはNK細胞の研究が遅れてる間に、○リンパ球って呼び名が廃れたというかB細胞、T細胞に統一しようって話があったから……かな」

本「NK細胞では遺伝子の再編成は生じない」

◆復習メモ
特異性を有する適応免疫を担うT細胞とB細胞は、遺伝子再編成により、それぞれが異なる受容体をもつ。これにより、様々な抗原に特異的に結合することができる。

大林「遺伝子再編成は、T細胞とB細胞にはあって、NK細胞にはない特徴ですよね!」
本「このことから、NK細胞は4億年以上前から存在していた原始的なリンパ球系列の生き残りであると考えられる」
大林「なるほど、NK細胞が元祖か~」

本「NK細胞細胞傷害性T細胞は、サイトカイン分泌や異常細胞の傷害という類似したエフェクター機能をもっており、このことからT細胞はNK細胞様の祖先細胞から進化したと考えられる」
大林「常に活性化してるNKと違ってT細胞省エネで必要時まで休止状態で巡回してるよね、発動に時間がかかるけど」
本「きわめて高い特異性をもつT細胞受容体と異なり、NK細胞受容体多様性と汎用性に富んでいるため、ほとんどのNK細胞は感染防御に参画できる」
大林「いつでも臨戦態勢だもんね!」
本「正確には、NK細胞は部分的に活性化された状態で巡回している」
大林「そっか、ターゲットを認識して初めて全部活性か」

本「NK細胞受容体30種以上活性化受容体と抑制受容体がある」
大林「細胞を殺せる危険な存在だから抑制受容体も必要だもんね」

本「一度目の感染の自然免疫応答で、NK細胞が活性化するには2つ以上活性化受容体からの活性化シグナルが必要」
大林「適応免疫が始動してる場合は?」
本「病原体に対して特異的なIgGが作られるとFcγRⅢAからのシグナルのみで活性化する」

◆復習メモ
抗体(免疫グロブリンimmunoglobulin:Ig):B細胞の最終形態「形質細胞(プラズマ細胞)が作る糖タンパク分子。特定の抗原(病原体など)に結合し、様々な免疫応答を誘導する。
IgG、IgA、IgM、IgD、IgEの五種類に分類される。
基本の形は「Y」で、V部分Fab領域 (Fragment,antigen binding)と呼ばれ、抗原と結合する。I部分Fc領域 (Fragment, crystallizable)と呼ばれ、貪食細胞(マクロファージや好中球)にはFc受容体があり、これと結合することで貪食の効果を高める。


大林「えーと、IgGがNK細胞の表面にあるFcγRⅢA(Fc受容体ⅢA)に結合すると活性化シグナルが細胞内部に送られて、NK細胞が活性化するってことか。本来は2つ以上の活性化受容体からの活性化シグナルがないとNKは活性化しないのに、IgGがあればそれだけで活性化するのか……なんで?」
本「特異的な抗体があるということは感染の発生が確実だから活性化が必要」
大林「納得」

本「このことから、NK細胞は実質的には特異性の高い抗原受容体をもっているといえる。適応免疫に参画したり、二次応答時に自然免疫を増強したりできる」
大林「思ってたよりNK細胞が優秀だなぁ、惚れ直しそう……ん?FcγRⅢA……ってことは、抗体のIの方か?」
本「そう。抗体はFabで標的細胞表面に出た抗原に結合し、Fc部分にNK細胞のFc受容体が結合して活性化シグナルがNK細胞に送られる」
大林「そっか、抗体(形はY)は、V部分で抗原に結合して、I部分で免疫を担う細胞と結合するんだったな」

今回はここまで!

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