1日10分の免疫学(17)B細胞の分化②
本「B細胞は骨髄を離れた後、血液(血管)→二次リンパ組織→リンパ(リンパ管)の間を再循環し始める。この段階ではB細胞は未熟で、表面に大量のIgMと少量のIgDを発現している」
◆メモ
未熟B細胞の表面には、大量のIgM>少量のIgD
成熟B細胞の表面には、少量のIgM<大量のIgD
大林「成熟したら逆になるの何でなの?IgMが感染初期に出る免疫グロブリンというのは覚えたけども」
本は答えなかった!
本「成熟するのは二次リンパ組織に入るとき」
本「リンパ節皮質の間質細胞やリンパ節中の樹状細胞は、ケモカインを分泌していて、B細胞はケモカイン濃度勾配に従って高内皮細胞間を無理やり通り抜けてリンパ節に入る」
大林「ケモカインの濃度で?好中球と同じだ!」
◆無事に骨髄を離れたB細胞へのさらなる試練
本「B細胞は一次リンパ濾胞primary lymphoid follicleに入る」
大林「出たよ、濾胞。濾胞って何なの?」
WEB「濾胞(ロホウ)follicle…小さな袋状の構造体」
大林「濾胞○○細胞っていうのは、濾胞にいる細胞って把握でいいのかな?」
本「一次リンパ濾胞は、濾胞樹状細胞follicular dendritic cell:FDCという特殊化した間質細胞とB細胞で構成されている」
大林「濾胞樹状細胞?樹状細胞が一次リンパ濾胞にもいるの?」
本「濾胞樹状細胞は、君が知ってる樹状細胞(造血細胞由来でT細胞に抗原提示をする)とは別物です。単に、B細胞に接触して相互作用する長い樹状突起があるのでこう呼ばれる……」
大林「別物なんかーーーい!単に樹状の突起があるだけかーい!」
本「特異的な抗原がなかった場合、B細胞は濾胞樹状細胞から離れて輸出リンパ管を通って循環を続ける」
大林「運命の出会いがなかったら旅立つわけだ」
本「この段階でB細胞は成熟B細胞となっているので、特異抗原に出会えば形質細胞になります」
大林「へぇ……濾胞樹状細胞との出会いで成熟するのか……」
本「若年健常者の体内では、毎日約300億個のB細胞が骨髄を離れ、濾胞を目指すが、濾胞部位は限られていること、濾胞に入れるのは成熟B細胞が優先されることから、未熟B細胞の大半が入れない」
大林「狭き門な上に年長者優先?!」
本「濾胞に入れなかった未熟B細胞は数日で死ぬ」
大林「ぐわあああああ」
本「濾胞に入れた未熟B細胞は成熟すると長く生存できる」
大林「濾胞に入れたら一安心…」
本「とはいえ、その後、特異抗原に出会って活性化されないと約100日で死ぬ」
大林「ああああ」
大林「B細胞の循環は、骨髄→血管→二次リンパ組織(→髄索→T細胞領域→B細胞領域→輸出リンパ管)→リンパ管→血管→二次リンパ…」
本「二次リンパ組織で、B細胞が特異抗原に接触するとT細胞領域にとどまり、抗原特異的ヘルパーT細胞によって活性化され、増殖・分化する」
大林「おぉ!出た!ヘルパーT細胞!」
本「活性化したB細胞の『一部』は分泌型IgMを産生する形質細胞へと分化する」
大林「形質細胞……B細胞の最終形態!」
本「形質細胞は膜型免疫グロブリンやMHCクラスⅡ分子を発現しなくなる」
大林「ということは、もはや抗原に反応しないし、CD4T細胞とも相互作用しなくなるのか……」
大林「ん?さっき、『一部』はって言った?残りは?」
本「残りの活性化B細胞は一次リンパ濾胞の近傍へ移動して、一次リンパ濾胞は二次リンパ濾胞へと形態が変化する」
大林「えっ、リンパ組織自体にも動きがあるの?!」
本「二次リンパ濾胞は、胚中心germinal centerを持ち、活性化B細胞はその胚中心で大きくなって中心芽細胞centroblastになり、成熟してゆっくりと分裂する中心細胞centrocyteに分化し、そのほとんどが胚中心から移動する」
大林「えっ、なに?どういうこと?」
本「移動先はリンパ組織の別の部位だったり、骨髄だったり。そしてそこで形質細胞になる」
大林「えぇと……ちょっとまとめたい」
今までのまとめ
①未熟B細胞が骨髄を離れる。
②二次リンパ組織の一次リンパ濾胞に入る。
③濾胞樹状細胞に活性化してもらい、成熟B細胞となる。
④特異抗原に出会ったら、二次リンパ組織のT細胞領域に留まり、ヘルパーT細胞に活性化してもらう。
⑤活性化してもらったB細胞の一部は形質細胞となる。
⑥一次リンパ濾胞が二次リンパ濾胞に形態変化し、残りの活性化B細胞が中心芽細胞となり、ゆっくり分裂する中心細胞になって色々な場所へ移動し、そこで形質細胞となる。
本「一次免疫応答が沈静化する頃、胚中心B細胞は休止状態の記憶B細胞にも分化する。その後、連続して抗原と接触すると記憶B細胞は確立される」
大林「おっと、記憶B細胞が出た!中心細胞は、形質細胞や記憶B細胞になるってことかな?」
本「B細胞は形質細胞への分化が決まると特定の部位に移動する。リンパ節なら髄索、脾臓なら赤脾臓、腸関連リンパ組織では腸管上皮下の固有層へ。そして、形質細胞はリンパ節や脾臓から骨髄へと移動する。B細胞の一生は骨髄に始まり、骨髄に終わる」
大林「ん?たしか前のページでは、感染現場にも近付いて行くのではなかった?骨髄に行くの?骨髄に行く途中に感染現場にも寄るの??」
本のどこかに書いているかもしれないが今ははっきりわからない!
形質細胞への分化が決まったB細胞の移動
まず
・リンパ節にいる場合はその軸索へ移動
・脾臓にいる場合は赤脾臓へ
・腸関連リンパ組織にいる場合は腸管上皮下の固有層へ
次に
骨髄へ……
今回はここまで!