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1日10分の免疫学(55)IgE介在性免疫②

IgEの役割

本「IgEの生理学的な役割は、マスト細胞、好塩基球、好酸球と協働して多細胞寄生生物(特に蠕虫)の感染を防御すること」

◆復習メモ
Ig(アイジー):免疫グロブリンimmunoglobulinの略記。抗体のこと。IgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5種類のクラスがある。
「Y」の形をしていて、上半分の「v」がFab領域 (Fragment,antigen binding)と呼ばれ、抗原を掴む下半分の「I」はFc領域 (Fragment, crystallizable) と呼ばれ、食細胞などの表面にあるFc受容体結合する。「v」の先端(可変領域)は、アミノ酸配列を変更することができるので、多種多様な抗原対応が可能

大林「対寄生虫の、防衛システムが花粉で誤作動起こしてるのが花粉症だって色んな一般書籍で読んだ!これ実際どうなんですか?」
本「体内に侵入してきた寄生虫に特異的なIgEは一次免疫応答でつくられ、マスト細胞のFc受容体に結合する」
大林「そしてその寄生虫がマスト細胞上のIgEに触れたとき、マスト細胞内部にシグナルが伝達されて顆粒が出るんだよね(脱顆粒)
本「脱顆粒により、炎症反応生理反応が活性化して寄生虫が排除される」

本「寄生虫の少ない先進国では、本来寄生虫に対し働く抗原の認識機構などが、動植物由来の無害のタンパク質抗原に対して働きやすい傾向にある」
大林「それ詳しく知りたいです!なんでそんな誤作動が起こるの?花粉と寄生虫は、人から見たら全然違うんですけど?!」
本「これから寄生虫感染の制御とアレルギー疾患の発症に共通するIgE介在免疫機構について説明する」

本「IgEは、蠕虫(ぜんちゅう)やその他の多細胞寄生生物の感染に対する防御を担うTh2の免疫応答で中心的な役割を果たす」


大林「きたぁ!推し!Th2!」

◆復習メモ
T細胞は、胸腺hymus)で分化・成熟する免疫応答を担う細胞
ヘルパーT細胞は、サイトカインの分泌により様々な免疫応答を誘導・強化する、いわば「免疫の司令塔」の役割を担うT細胞。
ヘルパーT細胞には種類があり、メジャーなタイプはTh1,Th2,Th17,Tfhなど。

細胞にとって寄生虫は病原体より区別が難しい

本「寄生虫は人の体内では増殖しない一時的に寄生する」
大林「へぇ、増えないのか。なんか育って増えるイメージだった」
本「寄生虫は多細胞生物であり、ウイルスなどの病原体と比べると生物学的にも化学的にもヒトに近い
大林「なんと……ということは、細胞にとっては病原体より攻撃対象かどうかの区別が難しい?」
本「その通り。寄生虫由来のタンパク質とそれと相同なヒトのタンパク質とのアミノ酸配列の違いを認識しなければならない
大林「それができる推しが素敵すぎる。……まぁ、それでミスった結果が花粉症、アレルギーなのか……難易度高い判断でミスった推しを責めることは……私にはできない……」

本「寄生虫は大きいため貪食細胞の食作用では排除できず、物理的に排除することとなる」
大林「せき、くしゃみ、鼻水…」
本「嘔吐、下痢、かゆみによるかきむしり、粘液の増加による洗い流し…」

Th2はB細胞のクラススイッチを補助する

大林「それで、我が推しのTh2はどんな感じに活躍するんです?」
本「Th2は、B細胞のクラススイッチ補助helpする。そうして、クラススイッチしたB細胞がつくった特異的なIgEは、好塩基球、好酸球、マスト細胞と結合することで寄生虫特異的受容体として機能を発揮し特定の寄生虫抗原に反応できるようになる」
大林「B細胞って最初は抗原をキャッチするアンテナ(B細胞受容体B cell receptor:BCRとして表面にIgMかIgDを持っているけど、Th2の補助でIgのクラスを変えることができ、Igも表面型から分泌型になる……そして、IgEで自然免疫所属の細胞たちも適応免疫応答に参画できるわけだ」

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寄生虫感染数とアレルギー疾患数は逆相関している

本「15億人以上が重症かつ持続的な蠕虫感染している」
大林「多くは熱帯エリアだよね」

本「アレルギーの流行先進国において認められる。衛生環境の向上や寄生虫感染原因となる生物の排除などによる生体のバランスが変わったことでTh2細胞応答が本来と異なる相手に引き起こされるようになった」
大林「衛生仮説が提唱されているよね」
本「寄生虫感染の数アレルギー疾患の数逆相関する。疫学データも、寄生虫感染症根絶によりアレルギーの流行が起こったという衛生仮説と矛盾しない」
大林「衛生仮説だけでは説明しきれない現象も色々あるんだよね、最新の研究はどうなってるんだろう……」

本「IgEによる一次免疫応答が沈静化して抗原が除去されると、抗原に出会わなかった抗原特異的IgE組織マスト細胞のFcεR1と結合する」
大林「好塩基球や好酸球は?」
本「好塩基球は短命であるためマスト細胞のみがIgE貯蔵庫として維持できる」
大林「(好酸球の説明が無いな……)好塩基球って短命だったのか」

本「B細胞1つの抗原特異性を持つ抗体をつくれないのに対し、マスト細胞はさまざまな抗原特異性の抗体を獲得できる。これによりマスト細胞はマクロファージやNK細胞のように多様な受容体をもつのと同じく多才となる」
大林「あぁ、なるほど。たとえば1つのB細胞は蠕虫甲に対する抗体だけを作る、別のB細胞は蠕虫乙に対する抗体だけを作るとして、マスト細胞はその両方を細胞表面の受容体で持つことができる!装備で多才になる感じかな?」
本「さらに、マスト細胞は抗原が存在しない状況でも常に顆粒を蓄えているため、素早く対応できる」
大林「なるほど~!心強いね!色んな蠕虫に対する抗体や、色んな回虫に対する抗体をもって即時対応可能な戦力!」
本「そうですね。抗花粉抗体や抗ハチ毒抗体、抗ピーナッツ抗体を細胞表面にまとって待機するマスト細胞……」
大林「途端に怖くなった……」

今回はここまで!


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