1日15分の免疫学(56)液性免疫応答⑦
補体について
本「自然免疫の非常に重要な補体系は、抗体がなくとも活性化する(レクチン経路)」
大林「抗体と合体することで補体が病原体の膜を破壊したりするよね」
◆復習メモ
補体:あることをきっかけに様々な免疫現象を起こす蛋白。主に肝臓で作られる。
IgMについて
本「血漿中では五量体IgMは平面構造をとり、補体と結合しないが、病原体に結合すると構造変化してホッチキス針状(かすがい様)構造となり、補体との結合部位が露出する」
大林「つまり抗体が病原体と結合して構造変化したら補体と結合するってことかな」
本「六量体IgMは、五量体より20倍以上の効率で補体を活性化する」
大林「すごいな…でも六量体IgMはレアアイテムなんでしょ」
本「全IgMの5%以下。感染防御における役割は未だに不明な点が多く、反応性が高すぎるため有害である可能性も示唆されている」
大林「ほぉ……六量体、望まれた存在かそれとも……」
本「Fcレセプターのことは知ってる?」
大林「『Y』の形をした抗体の一本部分『I』の末端にあるレセプター(受容体)でFc部分をつかむ!マクロファージの表面とかにあって、貪食しやすくする!」
※fragment crystallizable:Fc
Wiki「"Y"字の下半分の縦棒部分にあたる場所をFc領域 (Fragment, crystallizable) と呼ぶ。食細胞はこのFc領域と結合できる受容体(Fc受容体)を持っており、このFc受容体を介して抗原と結合した抗体を認識して抗原を貪食する(オプソニン作用)。その他Fc領域は、補体の活性化や抗体依存性細胞傷害作用など、免疫反応の媒介となる。」
本「Fcレセプターの機能として、循環血液中からの抗原抗体複合体(免疫複合体immune complex)の除去がある」
大林「免疫複合体って、病原体と補体がくっついたものだよね」
本「中和抗体を結合した毒素や死滅した宿主細胞と微生物の残骸などがある」
大林「オゥ……思ったより色々くっついてるな」
本「補体のC4b,C3bが免疫複合体に沈着し、これを赤血球表面の補体レセプター1(CR1)が掴んで肝臓や脾臓に輸送する」
大林「そっか、赤血球は酸素や二酸化炭素だけでなく、体内の不要物も運ぶもんな」
本「細菌やウイルス、細胞断片などの粒子状抗原と抗体とでできた大きな凝集塊も、補体が被覆して赤血球が捕捉し脾臓に運んで、脾臓で破壊される」
大林「赤血球はゴミ回収車にもなれるのか~」
本「肝臓や脾臓ではマクロファージが赤血球を破壊することなく赤血球の表面から複合体を受け取って貪食する」
大林「破壊って……食べるんかい!」
本「循環血液中から回収されなかった補体被覆免疫複合体は、小血管の基底膜、とりわけ血液がろ過される腎糸球体の基底膜に沈着する」
大林「ん?尿からでるの?」
WEB「糸球体とは、腎臓に血液を送る動脈が徐々に細くなった先にある毛細血管の球形の塊。 そこでは血液をろ過して尿をつくります。 体内に必要な物質を再吸収し、不要な物質を血液から尿に捨てる役割を果たしています。
本「腎糸球体の基底膜を通過した免疫複合体は、基底膜下にある腎偽足細胞上の補体レセプター1に結合する」
大林「面白い名前の細胞だな……偽足、前に見たことあるような」
偽足:血液中の白血球などにみられる、原形質体から形成される一時的突起。伸縮し、運動や食物摂取の働きをする。虚足。根足。仮足。
大林「で、結合してどうなるの?」
本「不明」
大林「不明なんかい!」
本「なお、全身性エリテマトーデスで、循環血液中に過剰に存在する免疫複合体が腎偽足細胞上に大量に沈着して腎糸球体が損傷する」
※全身性エリテマトーデスsystemic lupus erythematosus:SLE
:原因不明の免疫系異常により、免疫系が自分自身を攻撃してさまざまな症状を呈する。ループスとも呼ぶ。
※皮膚に出来る発疹が、狼に噛まれた痕のような赤い紅斑であるため。(lupus、ループス:ラテン語で狼の意)
大林「腎不全起こすの!?うわ、ちゃんと除去してもらわないと大変だ」
本「補体レセプターとFcレセプターはどちらも循環血液中から免疫複合体を除去するための働きを持っている」
大林「つまり、除去できない場合まずいことになる……と」
これまでのまとめ
・T細胞依存性抗体産生応答は、IgMから始まり、速やかに他のクラスに移行する。
・IgMは主に血液中に存在し、五量体構造で、抗原結合によって効果的に補体を活性化することに特化して、低親和性を補う。
・IgGは血液中と細胞外液(組織液)に存在し、高い親和性で特定の毒素、ウイルス、細菌を中和し、オプソニン化でファゴサイトーシス促進(貪食作用の促進)と、補体系の活性化もする。
・IgAは、単量体としてつくられて血液や細胞外液(組織液)に入るか、粘膜組織の粘膜固有層に存在する形質細胞によって二量体としてつくられる。
・二量体IgAは上皮細胞を通過して腸管内腔などに運ばれて毒素やウイルスに結合して中和する。補体も活性化し、病原体を排除する。免疫複合体(可用性抗原抗体複合体)も補体と結合して、これを赤血球の補体レセプターが掴み、循環血液中から除去する。
Fcレセプターの機能
本「多くの病原体は抗体で中和されない」
大林「そんなぁ」
本「多くの病原体特異的抗体は、病原体表面の標的部位に結合せず、他のエフェクター機構との連動が必要になる」
大林「その他のエフェクター機構とは?」
本「Fcレセプターと呼ばれるレセプターをもつ様々なアクセサリーエフェクター細胞の活性化」
大林「でたぁあ!アクセサリー細胞!名前がかわいいよね!」
Web「補助細胞:アクセサリー細胞, A細胞:accessory cell:T細胞、B細胞の機能を補助する細胞の総称で、マスト細胞などが含まれる。
本「Fcレセプターは、貪食細胞(マクロファージ、樹状細胞、好中球)のファゴサイトーシスを促進。非貪食細胞(NK細胞、好酸球、好塩基球、マスト細胞)は、Fcレセプターが抗体被覆病原体により架橋されると貯蔵メディエーターの分泌が誘発される」
大林「なるほど」
本「Fcレセプターの最も顕著な機能は、アクセサリー細胞を活性化して病原体を攻撃させること」
大林「へぇえ~かっこいいな。T細胞と相互作用したB細胞が作る抗体で他の免疫細胞の攻撃が誘発されるのか~」
本「他にもFcレセプターは、免疫複合体がB細胞・マスト細胞・マクロファージ好中球を活性化することを抑制的に制御する」
大林「へぇ、抑制的にも働くのか」
本「樹状細胞のFcレセプターは、抗原抗体複合体を効率的に取り込むことを促進する」
大林「そして取り込まれた抗原はプロセシングされてT細胞に提示されるわけだ!」
本「抗体被覆ウイルスが細胞質に侵入すると、TRIM21(tripartite motif-containing 21)と呼ばれるFcレセプターを用いたシステムで排除される。TRIM21はIgGレセプターで、IgGが結合したウイルスが細胞質に侵入すると結合してウイルス蛋白質をユビキチン化する」
大林「ユビキチン化って何だったっけ……」
Wiki「ユビキチン (ubiquitin) は76個のアミノ酸からなるタンパク質で、他のタンパク質の修飾に用いられ、タンパク質分解、DNA修復、翻訳調節、シグナル伝達などさまざまな生命現象に関わる。至る所にある (ubiquitous) ことからこの名前が付いた……不要なタンパク質の除去など多彩な機能をもつ。不要になったタンパク質を細胞から除去するためにも重要な役割を持っており、このシステムをタンパク質の品質管理と呼ぶ」
大林「おぉ、なんとなくおおよその雰囲気は把握した」
本「ユビキチン化により、ウイルス遺伝子が翻訳される前に細胞基質でプロテオソームによる分解を受ける」
今回はここまで!
細胞の世界を4コマやファンタジー漫画で描いています!↓