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「森の縁側」をつくろう:人と森が再生するための拠点

Architecture by Kakuro Odagi
Text by Rina Horisawa 

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家族で団欒したり、腰掛けて月を眺めたり。家族や来客者とのちょっとした休憩スペースとして役立つ縁側。ACTANT FOREST の中にもそんな場所があったらいいな。ないならつくろう、自然とともに。

ということで、人が集い、森の再生を手助けするための拠点、「森の縁側」をつくってみました。縄文時代から受け継がれる前近代的な技法も参照しながら、できるだけ長く使えて土壌の環境改善を促す方法で。その設計図と作成方法を紹介しながら、制作の模様をレポートします。

「森の縁側」ってなに?

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昨年に森での活動をはじめてから、少しずつ土地の整備を進めてきました。月に数度訪れる森。家族や友人を連れて来ることもあるけれど、なにせ木や草や動物以外に人工物がなにもない森です。みんなが集って休憩したり、作業中に荷物を置いておいたりできるような、開拓の拠点が必要でした。まずはじめに少しだけ居心地の良い場所をつくってみて、それが自然と「森の縁側」と呼ばれるようになりました。

実ははじめは、作業の合間に雨宿りしたり、冬場に暖をとるための半屋外の小さな小屋を建てる予定でしたが、土台まで組み立ててみると、平たい天板が広々した縁側のようで、意外に使いやすい。なぜか自然とみんなが集まってくる。これはこれで使いやすいね、ということで、小屋づくりからピボットして完成したのが、この「森の縁側」です。

土も改善する、みんなが再生するしくみ

土と接する縁側の柱は、森の自然環境にできるだけ負荷のかからない方法でつくられています。コンクリートの基礎を使わず、柱を土に埋めて構造物をつくる「掘立柱(ほったてばしら)」という構法です。

杉の柱を炭焼きして、そのまわりに竹炭、落ち葉、木の枝などの有機物を詰めながら埋めることで、土中の水分と空気が動き、菌糸が働きやすい環境をつくることができます。そうすることで、土中環境の改善につながるだけでなく、菌糸が掘立柱と大地をしっかりと結合し、柱も頑丈になるというわけです。

縁側土中環境スケッチ


この掘立柱構法は、「土中環境」の著者、高田宏臣さんに教えてもらった、縄文時代からある原始的な方法なのですが、最も土地と環境に負荷をかけない技法です。人にとって居心地がよく、森の再生にもつながり、そして構造物としても安全性が増すという、まさに三方良しのしくみといっていいのではないでしょうか。


こんな感じで活用しています

つくりながら考えて自然とできあがった「森の縁側」。使い方も都度自然発生しています。使い方の一例を紹介します。

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微生物発電キットを作るための作業台。斜面の傾きで、場所によって盤面の高さが違うため立って作業するにもちょうどよく、ハンダゴテや工作もできちゃいます。

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リモートワークのための拠点。東京にいるクライアントと東京にいるように打ち合わせをしています。「鳥の声がうるさいです」なんてツッコまれることも。

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もちろん作業の合間にコーヒーを入れてしばし休憩したり、その横で読書に使うこともあります。

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ぐるっと囲めば10人ぐらいは座れるので、みんなの団欒のためのダイニングテーブルや準備をするためのキッチンとしても活用できます。

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もともと、壁と屋根をつけて寝れるような設計だったので、大人が横になれるサイズです。たぶんタープをつければファストパッキング的に寝ることもできそう。暖かくなったら試してみましょう。

という感じで、とくに意識して活用方法を工夫しているわけでもないのに、ついついこの縁側の周りに集まってしまう。これが「森の縁側」の良いところです。

森の縁側のつくり方

用途に合わせてさまざまな使い方ができる森の縁側。これはホームセンターで手に入る材料だけで、簡単につくることができます。指定サイズの木材と電動ドリル、少し重たいものを持ち上げられる大人が2、3人いれば誰でもつくれる設計になっています。

ここからは実際の「森の縁側」の作り方をご紹介します。図面もオープンソースにしていますので、つくってみたい方はぜひ挑戦してみてください。

Step.0 建てる場所を決めようー土地のヘソを決める

まず、縁側をどこに建てるのかについて。

この縁側は、掘立柱を埋め込むことで、地表を流れる水が土に染み込むのを助ける土中環境改善の装置としての役割があります。なので、水が土中に染み込みやすい場所、具体的には、「丘」が「平地」に切り変わる地形の変わり目(地形転換ライン)を選んで縁側をつくるのが良いでしょう。

ACTANT FORESTでいうと、緑色の等高線の一番外側が地形転換ラインになります。昔、中沢新一さんのアースダイバーで読んだことがありますが、縄文時代からの岬に神社が置かれたように、もしかすると、こんな小さな森でも地形の変わり目というのは重要な役割を果たしているのかもしれません。

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これで、土地のヘソ、縁側の置き場が決まりました。

Step.1 設計図を描く

建てる場所を決めたら、さっそく設計図を描きます。

ここでは、私たちが作った縁側の図面とアクソメ図を公開しているのでぜひダウンロードしてみてください。必要な材料も、こちらから確認できます。


森のエンガワ図面

Step.2 フレームをつくろう

材料が用意できたら、まず、天板のフレーム部分から作っていきます。

フレームの大きさは2514mm × 1114mm。ホームセンターで手軽に入手できる2×4材でつくります。2×4材は水に弱いという弱点があるものの、柔らかい材質なので、ビス留めだけで簡単に組み立てることができます。水対策としては、一応キシラデコールという浸透系の屋外用塗料を塗って仕上げをしますが、使わない時はブルーシートをかけておけば、かなり長持ちしてくれます。

写真は屋根のある小屋をつくろうとしていた時のもので、強度的に2×6材を使用していますが、縁側としては2×4材で十分だと思います。

では、設計図にそって木材をビス留めしていきましょう。

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こんな形のフレームができたら完成です。(写真は後述の柱もつけた状態)

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step.3 土台となる柱を焼こう

つづいて、焼杉の掘立柱を作っていきます。

材料・用意するもの
・杉材:90mm角 L=1300mm × 6本
・焚き火台
・冷却用の水

まず、焚き火台の上で、杉柱を数本ずつ焼いていきましょう。

焼杉にすることで表面や内部に空隙が生まれ、表面積が増えるため、土中に柱を埋めた時に菌糸が入り込みやすくなります。

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杉の表面が、すべて鱗状になるまで焼くのがポイントです。

柱の根元の部分は床のフレームとビス留めするので、端から15cm程は焼かずに残しておきます。

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全部で6本。焼いた直後に水をかけ、よく冷ましたら完了です。

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Step4. 穴を掘って柱を埋めよう

土台の焼杉柱ができたら、それを地中に埋めていきましょう。

材料・用意するもの
・ダブルスコップ
・竹炭(これも焼杉同様、菌糸のすみかとなります)
・割栗石(拳大の石であればOK)と小石
・周辺から集めた落葉や落枝
・炭焼きした杉柱 6本
・水準器

柱を固定したフレームを地面に仮置きして、6か所の穴の位置を出します。
その後にダブルスコップを使って地面に直径30cm、深さ90cmほどの穴を6か所掘っていきます。穴の深さで縁側の高さと水平が決まるので、できるだけ正確に深さを測りましょう。

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穴を掘ったら、底に竹炭を一掴みほどぱらぱらと撒き、その上に割栗石を敷きます。この石が面となって柱を支えてくれるので、底面の土が見えなくなるぐらい入れます。割栗石はグラグラしないように、硬い棒などで突いて固めます。その上に小石や竹炭を放り込み、さらに平らに固めます。

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いよいよ縁側のフレームを穴に差し込みます。3人程度でフレームを持って、6つの穴に柱部分を差し込みます。水準器で水平を見ながら、それぞれの柱の高さを調節していきます。

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少し高かったり、低かったりする部分は、フレームを少し持ち上げながら、穴を深くしたり、割栗石を足して調整しましょう。
意外とフレームを抜いたり差したりするのが大変ですが、穴掘りの深さをきちんと測っておくことで、水平出しの作業がかなり楽になります。

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水平がとれたら、柱と土の間を埋めていきます。竹炭・落葉や落枝・土を5〜10cmの層状に交互入れて、棒などで突っついて土を締め固めたら設置は完成です。

Step5. 天板を貼って完成!

最後に天板をビス留めし、塗装して完成です。

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材料・用意するもの
・板材:ホワイトウッド 90mm×1820 厚さ15mm程度
・塗料(キシラデコール)
・塗装用の刷毛など

今回はホームセンターで安価に買えるホワイトウッドを使用しましたが、こちらも2×4材と同様に水に弱いという弱点があるので、屋外用のデッキ材などを用いるのも良いでしょう。

人が集まる憩いの場と、森の循環を助ける土中環境改善を同時にこなしてくれる森の縁側。まだまだアップデートの余地はあるので引き続きお知らせしていきます。

みなさんも、ぜひつくってみてくださいね。

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