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三重県のド集落にお世話になってきた話。

 何かしていないと落ち着かないので、何かします。
 転職を境に一人暮らしからシェアハウスでの生活をするようになり、利便性やら交流の楽しさやらでここ5年くらいずーっとそんな生活。今回は三重県の大自然に囲まれながらシェアハウスで生活してきた話です。

 その物件を見つけたのは確か、今年の5月、そろそろ暑くなってくるかなってくらい。会社を辞めて時間が有り余っていたので、関東以外に住むチャンスなんじゃ…と思って色々探していると、その物件を見つけた。格安家賃で、紹介分もしっかりしている(ここが適当な物件はほぼ確実にヤバイ)。場所は三重県某市。三重県と聞いて、普通は何が思いつくだろうか。私はなんというか、「大自然」だ。一度だけ行ったことがあるが、観光ではなく関西方面への通り道として。その時はフェリーを使ったのだが、船から見えるのは島、島、島。なんだかすごいところだな、と思った記憶がある。物件の紹介写真もそれに違わず緑に囲まれた場所にあり、玄関を開けたらすぐ海、というような触れ込み。「ぼくのなつやすみ」というゲームをご存じだろうか。私は三重県に行けばまさにそれができると考えた。

 7月に入り、就活がひとまず落ち着いた頃、昔と同じように愛知県からフェリーで鳥羽市まで。気持ちの良い海風を感じながら、勾配のキツイ山道を車で2時間ほど。大家さんに指定された場所はとあるバス停だった。すぐそこに川が流れていて、水質は極めて良好、ザ・名水みたいな感じ。蟹がたくさんいた。あちこちに、なんてレベルじゃなく、それはもうウジャウジャと。サワガニでないのはわかったが、その時点では種類がわからなかった。その蟹を捕まえてパスタにするのは、また別のお話。しばらく蟹と戯れていると、思っていたより若めのお兄さんが登場。そのまま物件まで案内してもらうと、なんとキレイな一軒家。シェアハウスって結構清潔さに目を瞑らないといけない所があるけど、想定以上のキレイさ。想定外なのは、民家の少なさだった。

 正直、自分も地方の育ちではあるので、そういう不便さとか、人のいなさとかは知っていたつもり。しかし、あの土地はレベルが違った。ちょっと大きめの町から車で1時間、電車は通っておらず、バスは大型のあの形ではなく、なんとハイエース(後で知ったが、地方はこのスタイルが多いらしい)。「コンビニまでは意外と近いですよ!」と言われたが、車で何にもないガチ山道を20分。夜は平気でシカやイノシシ、サルとエンカウントする。

 これだ、これだよ!私の求めていたものは。しかも紹介通り、すぐそこに海。しかもめちゃくちゃキレイ。透明度が高く、魚がたくさん見える。釣りもし放題じゃん!住民の人とも挨拶して、同世代ではないけどもいい人だった。ここでしばらく夏休みを過ごす。精神的に余裕のなかった昔とは違い、ゆっくり、のんびり過ごすことに価値を見出せるようになった。

 そこでの生活はこんな感じ。とりあえず朝起きたらコーヒーを飲む。目が覚めたら麦わら帽子と椅子、それと釣りセットを持ち、海へ。釣りは正直あんまり上手くはなかったのだが、こちらでは入れ食い、入れ食い。生き餌でもルアーでもなんでも釣れる。周りは私一人、セミの大合唱に囲まれて、大自然と1対1。堤防釣りなので大物がかかることはないが、それでも十分楽しんだ。夜になると釣果の報告をしながらみんなで夕飯。黒霧島を頂戴しながら会話を楽しんだ。

 慣れてくると、山を越えて近くの町まで行くようになり、ご当地ご飯、みたいなものを開拓。都内だといくらするんだ?ってくらい上等のマグロ丼。この刺身盛り美味いな!?って聞いたらトビウオとカレイのお刺身だった。中華料理屋でラーメン、みたいなのも場所が違うと不思議に美味い。スーパーの鮮魚コーナーは新鮮そのものばっかりで、カツオとか普通に一本で売ってる。豆アジが30匹くらいで200円って、そんなコトある??ふらっと行った図書館はまさかのオーシャンビュー。読書の休憩に竿を投げることができる。まぁ、そんなことをしていたのは私だけだったが。地元民からしたら当たり前のようなことが、とても魅力的に見えた。

 いろんな意味で想像以上の環境。もともと長居するつもりではなかったので2週間ほどで出ることになったが、まさしく「ぼくのなつやすみ」。山から覗く日の出を待ち、地域の花火大会に参加し、バーベキューで騒ぎ、塩釜で塩づくり体験をした。この思い出は今後の私を形成する一つの要素となり、いつか思い出して懐かしい気分に浸るのだろう。今後もあの優しい場所が続いていってくれることを、切に願う。

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